魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

ヒレグロコショウダイ

2022年06月23日 21時41分57秒 | 魚紹介

今回も、前回ご紹介したアイゴと同じハコの中に入っていた魚をご紹介。スズキ目・イサキ科・コショウダイ属のヒレグロコショウダイ。

ヒレグロコショウダイはコショウダイ属の中で、体側に明瞭な縦帯があるグループの一種である。この中にはほかにムスジコショウダイやアヤコショウダイ(成魚では斜帯であるが)などが知られているが、このヒレグロコショウダイはムスジコショウダイやアヤコショウダイほど鮮やかな色彩はしていない。灰色っぽい色彩であり、鮮やかな黄色い鰭が特徴的なほかの2種と比べると地味な色彩の魚である。

特徴の一つは腹部の模様。本種は腹部に縦帯がなく、腹部にも縦帯がはいるムスジコショウダイとの区別はさほど難しくはない。一方、アヤコショウダイも腹部に縦帯が入らないが、背鰭・胸鰭・臀鰭・尾鰭が黄色であるためヒレグロコショウダイと見分けることができる。またアヤコショウダイの幼魚は体に縦帯が入っているが、大きくなるとこの模様は斜帯になるので見分けるのには苦労しない。

ヒレグロコショウダイの特徴の二つ目は腹鰭である。この腹鰭は白っぽくて前方が赤黒っぽい。ムスジコショウダイやアヤコショウダイではこの模様はないか、にじんだ赤色の模様がある。ただし個体差が大きく、個体によってはわかりにくい(とくにアヤコショウダイ)。

小さくクマノミ類に間違えそうなサイズの幼魚。このくらいの大きさでは体側に2本の白色縦線があるのがヒレグロコショウダイ、1本だとアヤコショウダイというように見分けられそうではあるが、慣れないと難しい。写真のヒレグロコショウダイの幼魚はクネクネせわしなく泳いでいたもの。胸鰭に黒い線があるように見えるが、これはヒレグロコショウダイだけでなくアヤコショウダイにもあるので、この特徴での同定はできない。一方ムスジコショウダイは茶褐色の地色で、白というか黄色というかの色彩をした大きな斑点が並ぶのでヒレグロコショウダイやアヤコショウダイと見分けやすい。というか、アヤコショウダイやヒレグロコショウダイよりも、成魚の色彩がまるでちがうアジアコショウダイの幼魚に似ている。

ヒレグロコショウダイの学名はPlectorhinchus lessoniiとされているがP. diagrammusという学名が使用されていたこともあり、ややこしい。アヤコショウダイの学名はPlectorhinchus lineatusである。古い図鑑ではP. goldmanniという学名が使用されていたこともあるがP. lineatusのシノニムとされた。ムスジコショウダイの学名はPlectorhinchus vittatusであるが、従来はP. orientalisという学名が使用されたが、P. vittatusのシノニムとされている。なお、ムスジコショウダイのFishbaseにおけるコモンネームはIndian Ocean oriental sweetlipsという名前になっているが、実際はインド‐太平洋(東アフリカ~ミクロネシア)の広い範囲に生息している。

この仲間は3種とも琉球列島ではよく漁獲され市場に出ていてなかなか美味。私も食したが美味しかった。ヒレグロコショウダイはインドー太平洋域にすむ。東はサモア諸島までで、ハワイ諸島には分布しない。というかイサキ科自体がハワイ諸島には一切分布していないらしい。太平洋の東西で大繁栄しているグループだが、ハワイへの進出はできていないようだ。日本では伊豆半島以南に見られるが、九州以北で見られるのはほとんどが幼魚である。

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