魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

アリアケギバチ

2023年09月27日 10時06分03秒 | 魚介類飼育(淡水)

先月末~今月頭の九州遠征で出会えた淡水魚。何種かお持ち帰りしたのだが、その中でも久々に採集した子。ナマズ目・ギギ科・ギバチ属のアリアケギバチ。アリアケギバチは九州にのみ生息する希少種で、なかなかお目に罹れない。採集・飼育するのは今回がはじめてではないが、今回採集した個体は昔採集して飼育していたのとは別水系の個体になる。いずれにせよ、格好いい体つきとかわいい顔が特徴的である。

飼育の際のポイントはいくつかあるが、(繁殖を狙うとき以外)同種同士の混泳は避けるべきということ。また小型水槽での飼育ではほかの魚との混泳も避けるべきである。ヤマトシマドジョウやアブラボテを一緒に入れたら捕食されてしまった。ムギツクは捕食されずに済んだが、鰭をかじられたりしていたため、別水槽に移しての飼育となった。今度ムギツクも紹介したいと思うのだが、鰭を完治させるまで登場はなし。また流木など魚が落ち着けるような隠れ家を入れておくようにしたい。

なお、日本にはギギ科の魚は5種類知られているが、私はアリアケギバチ以外ギギ科魚類を一切採集したことはない。コウライギギは特定外来生物、ネコギギも国の天然記念物であるので飼育するには困難な道を渡る必要がある。しかしあとの2種、関東地方と東北など東日本にしかいないギバチは見たことがないのは当然であるが、西日本に多く生息するギギもまだ一切網の中にはおさめていない。シャープな顔つきで格好いいギギは大型になるが、巨大な水槽で飼育してみたい憧れの魚の一種である。

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「ダツ」と呼ばれる魚

2023年09月20日 08時01分11秒 | 魚類とインターネット

昨日、某Facebookでのコミュニティに掲載されていた魚。沖縄県の浜辺で、光に飛び込んできた魚だという。暗い画像であったが、ダツ科の魚であった。よく見てみると、確実ではないがテンジクダツ属のなんかのように見える。その魚について「ダツですね」と返答してきた方がいたが、ダツとは顔の形状など大きく異なり、テンジクダツ属のものであると返答したら、その人からブチ切れされ、レスバなんていうことがあった。しかし、昨今「図鑑」サイトを見てみたら、そういうことは起こって当然ではないかと考えた。なお、そのコミュニティは「釣り」のコミュではなく、生き物の同定をお願いするためのコミュであるということも記述しておかなければならない。

「図鑑」サイトにおいて「ダツ」で検索して出てくる魚は、どうもダツではないダツ科の魚の写真が多数出てきているのである。それらの写真のうち多くはオキザヨリであるように思える。こんな「図鑑」サイトを信用したら、オキザヨリを見て「ダツ」と同定してしまう人が多く出てくるのも不思議ではあるまい。なお「図鑑」サイト、とわざわざ鍵括弧付きで表記しているのは、「図鑑」サイトを標ぼうしている割にはお粗末なサイトが近年多いからである。Wordpressで誰でもサイトをつくることができるようになったのに、そのせいで逆に利用者には不便になってしまったといえるかもしれない。

オキザヨリ頭部

オキザヨリといえばこんなこともあった。かつてダツ科のオキザヨリの写真をアップした人がいて、その写真に「オキザヨリですね」と返答した人がいたが、別の人が「どう見てもサヨリじゃないと思いますが」なんてコメントしていたこともあった。もちろん、誤同定なんて誰でもあることだが、しかしその目の前の四角い物体を操作し、調べることができたはずだろう。もっとも、最近は先述したように「図鑑」サイトで紹介されている魚なんて、画像サイトから引っ張ってくるものだから同定が怪しいものなんてゴマンとあるのだ。

ダツ

ダツは北海道南部~九州に分布し、琉球列島にはほとんど分布しない。そんなダツの類は釣りでは「外道」として、まず釣りで狙われることもないし、食用にしてうまいことはうまいのであるが、ダツ科の魚はほぼ食卓に上ることはない(サンマをのぞけば)。したがって釣り人にとっては「関心が薄い生物」になってしまう。だからテンジクダツもタイワンダツもオキザヨリもヒメダツもほかなんちゃらダツもすべて「ダツ」とひとくくりにされてしまうのだ。同様のもので「ギンポ」もいる。この名前で呼ばれる魚は本来ニシキギンポ科の魚なのであるが、釣り人にとってはタウエガジ科のダイナンギンポ属も「ギンポ」と呼んでいる。

逆に注目が高くマスコミなどにも取り上げられるが、その近縁種についても同じような名前で呼んでしまい混同を招くものに、ヒメジ科のウミヒゴイ属の魚がいる。この属の魚としては「オジサン」がそのユニークな標準和名もあり知名度が高いが、それによりほかのウミヒゴイ属のほとんどが「オジサン」と呼ばれるようになり、果てはより小型でオジサンとは大して似ないヒメジ属の魚なども「オジサン」と呼称することが起こり、混同を招いている。

なお残念ではあるが、某コミュニティにおいて、私にこのダツのことであーだこーだ言ってきた方は、残念ながらブロックしてしまったようである。うーむ。

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マアナゴ

2023年09月19日 23時42分31秒 | 魚紹介

体調はだいぶ良くなり、ようやく社会復帰となりました。しかしながらまだ嗅覚の方はほとんど戻ってきません。ああ恐るべし太陽の冠。今回は私のぶろぐでは意外に初めてご紹介となる魚。アナゴ科・クロアナゴ属のマアナゴ。

マアナゴといえば通常魚屋さんや鮮魚店で見るほっそいアナゴである。しかし底曳網のアナゴはでっかいのだ。水族館などではよく塩ビパイプの中に何匹かが入っているのを目にすることがあるが、今回のマアナゴは1匹1匹がその塩ビパイプを超える太さであるから、底曳網で漁獲されたアナゴを展示した水槽をつくるのであれば、ものすごくパイプもでかいのが必要になるだろう。全長も大きいものでは1m近くになる。

日本産のアナゴ科魚類で大きいのはクロアナゴや、ダイナンアナゴなども知られている。いずれもクロアナゴ属の魚である。クロアナゴとダイナンアナゴは胸鰭と背鰭の位置関係で見分けられるが、幼魚は見たことがない。もっともこの種の幼魚は深場に見られるらしい。ただこの種は混乱があり、「日本産魚類大図鑑」や「日本産魚類検索」では標本からの図写ではなく、Jordan and Snyderからの略写であった。しかしついに日本産魚類検索第三版においてついに最新のものに代えられた。

クロアナゴの学名とマアナゴの学名も混乱がある。従来Conger japonicusという学名はクロアナゴの学名とされたが、この学名はマアナゴConger myriasterのシノニムとされ無効となった。もちろんクロアナゴはマアナゴと別種であり、クロアナゴの学名はConger jordaniとされた。C. jordaniのタイプ標本は神奈川県三崎で採集されている。

マアナゴの白い点。側線孔と背鰭直下に並ぶ

胸鰭と背鰭の関係

マアナゴとクロアナゴの違いとしてよく知られているのがこの白色斑である。マアナゴには体側、ちょうど背鰭の下に等間隔にこの白い点があるのだが、クロアナゴにはこの白い点がない。側線孔の白色点も目立つが、これはクロアナゴなどにもあり、確実な違いといえない点にも注意が必要。またマアナゴの胸鰭と背鰭の関係では、背鰭起部は胸鰭後端の直上あたりにあることで、この点でもクロアナゴと見分けられるかもしれない。

マアナゴの分布域は広く、北は北海道、南は奄美諸島喜界島にまで及ぶ。このほか沖縄舟状海盆にまで見られるという。生息水深も浅いものでは防波堤や投げ釣りで釣れるような水深から、水深830mにまで及ぶ。今回の個体は以西底曳網によるもので、おそらく水深100~200mほどの水深で漁獲されたものと思われる。

アナゴ科の魚は食用魚としてよく知られているものであるが、本種はその中でももっとも重要な食用魚とされていて、かば焼きや煮アナゴ,白焼きなどにして食べられる。今回は白焼きにして食べたが、これが極めて美味であった。今回のマアナゴは長崎県の石田拓治さんと、関係の深い仲買の方に競り落としてもらったものである。この度はお二人ともありがとうございました&お世話になりました!

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ベニテグリ

2023年09月13日 02時14分41秒 | 魚紹介

現在療養中の椎名さんです。報告したいことも多いのですが、嗅覚がなくなってしまうのはかなりつらいものです。ということで病気になる前に長崎にて購入した魚のご紹介でも。ネズッポ科・ベニテグリ属のベニテグリ。

ベニテグリは安価な魚ではあるが大変にうまい魚である。本種が含まれるネズッポ科の魚は多くが天ぷらなどで食される。特に東京では「めごちの天ぷら」として賞味されるが、この場合「めごち」というのは、コチ科のメゴチではなく、浅海のネズッポ類、たとえばネズミゴチやらトビヌメリといった種である。一方ベニテグリはこれらの種よりも身の量が多い。そのためほかにも色々な料理に使うことができるだろう。

ということでベニテグリの刺身。これは1匹分ではなく、3匹分を集めている。身は白くて薄造りにすると透明感があり美しい。柑橘類を添えているがこれはあくまでも彩、ぽん酢などで美味しく食べられる。以前にも1回、ベニテグリのお刺身は作ったことがあったのだがあの時は1匹分だけだったので身は少なかったが、今回はベニテグリをじっくり堪能した。ベニテグリ自体は安価な魚ではあるのだが、そのうち価格が高くなるかもしれない。また、底曳網が禁漁となる夏には手に入らなくなってしまう。手に入れる機会があればぜひ食べてほしい魚である。

今回は長崎の石田拓治さんより。いつも、ありがとうございます!

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日本魚類学会年会2023 長崎大会

2023年09月09日 18時50分09秒 | 魚類関係の集まり

さて、いよいよメインイベント。9月2日土曜日の日本魚類学会年会の研究発表。残念ながら私は裏口から入ったので、看板の写真を撮り忘れてしまった。残念。ホテルから近いと思ったのだが、さすがは長崎、坂道だらけなので特に裏道を歩くときは気を付けるべき。天気は悪くない。長崎は今日は晴れだった。

学会の口頭発表では分類や系統などへの興味が強いので、大体第1会場で発表を聴いていた。初日のチョウザメ、バラタナゴの話については途中入室であったのでノーコメ。初日はシマドジョウ属の発表が続いたが、シマドジョウ属の話を聞くとこの辺は本当にややこしいと感じた。雑種によって生じた集団であるというのだ。さらに鹿児島県ではオオガタスジシマドジョウの記録があり、これらとの交雑が生ずる危険もあると思った(近くでハスやら湖産魚が見られるらしい)。やはり他水系からの放流によって新たなグループが生まれる危険は大きいといえそうである。

その後はエソやハダカイワシは聴きそびれたものの、マツバラカサゴやハチなどの話を聴き初日午前終了。コアタイム発表ではマルヒラアジのポスター発表を見たり、オークションに参加するなどした。午後もアナハゼ類やアカシタビラメ・デンベエシタビラメ、イスズミなどの発表を聴き、初日はおしまい。夜は学会で「ギョッツ」さんと初めてお会いし、夕食という流れ。一緒に焼き鳥を。ありがとうございます。

翌3日(日)はシノビドジョウの話を聴く予定であったのだがレンタカーのトラブルで間に合わず、なんとかヤクシマイワシの発表には間に合わせた。もっとも、だいぶ遅くなり、途中入室ということになったのだが。ポスター発表では私の聴きたい発表は大体が奇数(偶数が土曜日の発表、奇数が日曜日の発表)。高校生のポスター発表もあり、カワヨシノボリなど興味深いものもあった。

その日の夜は懇親会。長崎大学のおくんち部(?)みたいなところに竜の踊りを披露していただいた。

会食ではイスズミ類(通称そうすけ)のフライや、アイゴのカツ、地魚すりみ、マカジキの刺身、生からすみなどがならび美味であった。翌日はシンポジウムもあったものの、疲れもあって学会には顔を出さず、主に市場散策やらいくつかの水系を訪問することになった。その後いろいろ問題もあったが、23時過ぎに無事東京に帰って来ることができた。

オークションにおいては気になる書籍はだいぶ落とすことができた。国立科学博物館や鹿児島大博の本はネットでもPDF版を見ることができるのだが、やはり「書籍」というのは重く尊い。もちろん物理的にも重く大きいのであるが。ほかにもインドーオーストラリアン アーキペラゴーの魚類図鑑や、沖縄舟状海盆および周辺海域の魚類(2冊組)などを入手した。特に後者は2012年の水産大学校での大会では落とすことができなかったので喜びも大きい。

しかし、帰宅後大変なものをお土産に持ち帰ってしまうことになった。現在療養中で非常に苦しい。学会でお会いした皆様、申し訳ありません。

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