魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

珍しいトラギス

2015年03月26日 16時23分11秒 | 魚紹介

HN「鈴鹿」さんからいただいたフィリピン産のトラギスの仲間。この種はレイテ島近海で採集されたものと思われる。この種はわけがわからず、「トラギス属の一種」とか書いていたと思う。同定が難しい大きな理由はこの個体の色彩が色褪せていること。おそらく2008~2009年ごろから長いこと冷凍庫にあったみたいなのでその間に色や模様の一部が消えてしまったようである。今回はこの写真から同定を試みた。

この種の特徴は尾鰭に明瞭な黒色斑がふたつ(腹側と背側)があり、体側には2列の黒色斑が並ぶということがあげられる。しかしながらこれは色彩が不明で生鮮時は何色をしていたのかはわからない。尾鰭には小斑点があるのも特徴であるが、やはり色彩は不明である。

二つ目の特徴は頭部に斑紋があること。3つの黒色斑がある。黒色斑、としたが実際には何色なのかわからない。なお、日本産トラギス科の中では既知の種でこのような模様を有するものは知られていない。

尾の斑紋の様子は日本に生息しないが標準和名があるアミメトラギスという種にちかいものと思われた。アミメトラギスは南シナ海、インドー西太平洋に生息するトラギス属の魚で、フィリピン近海にも生息している。しかしながら体側の斑紋は一列であり、体側上方の鱗は黒く縁どられ網目状になるなどの点で本種とは大きく異なっている。そして何よりも頭部の模様も異なっている。アミメトラギスの頭部の模様は眼の下から下方に太い帯が伸びる感じ。世界最大手のFishbaseでも本種と思われる魚の画像は存在せず、結果Googleの画像検索でようやく発見することができた。

Parapercis diplospilus Gomon 1981(英名Doublespot grabfish)という種であった。Fishes of Australiaにこれと同じような魚種の写真が掲載されていたのでわかった。尾の模様も頭部の模様も、体側にある2列の斑紋も特徴がかなりあっている。斑紋の色彩は生鮮時は茶褐色、体は薄い茶色で腹部は青みをおびた色彩、日本に分布しているマトウトラギスと似たような雰囲気を持つ種類である。分布域はオーストラリアからフィリピンにかけてで、水深20~50mほどの海底に生息し、おそらく底曳網漁業で採集されたものではないだろうかと思われる。小型底曳網では定番の食用魚から小魚までいろいろな魚が漁獲される。そのなかにはダルマガレイ類やエソ類、テンジクダイ類、ヨウジウオ類、そしてもちろんハゼ科など未記載種も多くいそうである。

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クロガシラガレイ

2015年03月25日 19時50分37秒 | 魚紹介

もう3月の終わりということで、春!のはずですがまだまだ寒いです。

冬美味しい魚といえばやはりカレイの仲間。今回はスーパーマーケットで黒カレイというのを購入。標準和名で「クロガレイ」というのがおり、それと思い購入したもの。

カレイの仲間は北半球の冷たい海に多く生息する魚で、日本では北海道~東北地方までの太平洋岸、日本海の広域に分布しています。北海道には種類が多く、日本に産するほぼすべての種類が見られます。今回購入した種類もやはり北海道産。カレイ科魚類の同定は有眼側の体の特徴や、頭部の特徴、顎歯の特徴などにより区別されるものが多いので、これらの特徴を記録しておくとよいでしょう。また無眼側の様子が同定形質になるようなものもおり、それらも記録しておくと同定しやすいのです。

この種類は有眼側にいぼ状の突起がなく、口は小さく歯の発達もあまりよくない、さらに側線が湾曲する、有眼側に鱗がある、などの特徴からツノガレイ属のものになります。日本で広く受け入れられている考え方では、マコガレイ、マガレイ、スナガレイ、トウガレイなどの種類がこの属に含まれますが、欧米では分類についてはやや異なっています。

この個体は有眼側、無眼側に黒色の帯があり、尾鰭には斑紋がなく、クロガレイかクロガシラガレイに同定されるものであることがわかりました。しかしこの2種はよく似ているものです。まず尾鰭ですがこの個体の尾鰭は白く縁どられないためクロガレイの特徴をもっているといえます。一方で側線の様子は「低い」か、「低くない」ということなのですが、やはり言葉だけではわかりにくいです。どこの部位よりも低いとか、何パーセント、とか書いていただければまだわかりやすかったかもしれませんが。ただ魚類検索での図示ではクロガシラガレイのほうが近いでしょうか。

もう一つクロガシラガレイの特徴としては、鰓蓋下部に皮弁を有することがあげられます。これを探してみると...。ありました。上の写真、灰色の丸で囲んだ部位です。北の魚、特に沿岸の浅い海に生息しているカレイの仲間は、カジカの仲間やアイナメの仲間同様かなり苦手なものです。

ということでFacebookにこの写真を掲載したら、さっそくクロガシラガレイという回答をいただきました。ありがとうございました。ちなみに今回のカレイは写真撮影の後唐揚げでいただきました。クロガシラガレイはマコガレイに近いようで種の異同については要検討ともいわれております。マコガレイはかなり美味なカレイともいわれており、本種もかなり美味なものでした。

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