魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

ヤエギス

2018年03月31日 22時17分58秒 | 魚紹介

今日で3月も終わりです。

ちょっと前になるが、久々に珍しい魚をいただいた。スズキ目・ヤエギス科・ヤエギス属のヤエギスという魚。ヤエギスは「日本の海水魚」などに掲載されており、写真も掲載されているが、なかなか出会えない魚で、私も出会うのは初めてである。

ヤエギス科の魚はいくつかの属が知られ、そのうちサンリクヤエギス属の魚はヤエギス属の魚と大変によく似ている。しかしヤエギス属の魚の側線は目立たず、肥大した有孔鱗がないこと、尾鰭軟条の最下方に小鋸歯があるなどの違いがあるようだ。たしかに側線は目立っていないものの、サンリクヤエギス属の魚は一切見たことがないのでわからない。

世界ではヤエギス属の魚は4種が知られている。そのうち2種はStevenson and kenaley (2013)※により新種記載されたものである。そのうち日本に分布しているのはヤエギスのみで、この種は横浜産を基に記載されたようだ。日本近海に生息している、というわけではなく日本からベーリング海を経てアメリカの西岸にまで分布するようである。日本国内では北海道~土佐湾の水深200m以深の深海に生息しているようで、なかなか出会うことができない種である。この個体は北海道産。従来は南半球やグリーンランドにも分布するとされたがこれらは別種であり、ヤエギスの分布域は北太平洋に限定されるよう。

ヤエギスの口と眼は近い位置にある。これはサンリクヤエギス属とは別属のコクチヤエギス属と見分けるポイントになる。コクチヤエギス属は口と眼がやや離れている。またヤエギスはあまり明瞭ではないが側線を有するのに対し、コクチヤエギスでは側線を有していないようである。ヤエギスが何を食しているかは不明であるが、今回さばいたときには胃の中にはなにも入っていなかった。

二枚おろしにしてみると、外見とは全く異なる白い身がきれいである。鱗はまったくないわけではないのだが、この個体は底曳網漁業によって漁獲されたものらしく、網ですれてしまっていたためかほとんどなくなっていた。

お刺身は脂がよく乗っていて美味しかった。

塩焼きもまた美味であった。まだまだ未知ながらおいしい魚はいるものである。今回の個体は魚利水産からいただいたもの。いつもありがとうございます。

※Stevenson, D. E. and C. P. Kenaley. 2013. Revision of the manefish genera Caristius and Platyberyx (Teleostei: Percomorpha: Caristiidae), with descriptions of five new species. Copeia, 2013: 415–434.

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ソコヌメリ

2018年03月16日 13時59分45秒 | 魚紹介

久しぶりに沖合底曳網で漁獲される魚の紹介でも。スズキ目・ネズッポ科・トンガリヌメリ属のソコヌメリ。一見浅い砂底の海にすむ普通種「ネズミゴチ」によく似ている種であるが顔つきはだいぶ異なり、体も太めのようである。トンガリヌメリ属の魚は、ネズミゴチなどを含むネズッポ属の魚によく似ているが、尾鰭の軟条のうち、中央部にある二つの軟条が不分岐であるという特徴を持っている。

このソコヌメリは雌である。雄は臀鰭の下半分が黄色で、雌は外縁が明瞭に黒っぽくなる。第1背鰭の第3膜には大きな黒い斑紋がある。この斑紋は円形に近いこと、第1背鰭の第1棘は第2棘とほぼ同じ長さであることから、斑紋がやや細長く、第1背鰭の第1棘が長いクジャクソコヌメリと区別することができる。

トンガリヌメリ属は本種、クジャクソコヌメリ、トンガリヌメリの3種が日本に分布している。分類については日本と海外では大きく異なっており、例えば比Fishbaseにおいては本種はCallionymus属の中に含めているが、日本産魚類検索ではBathycallionymusとされている。後者に従うのが妥当であるように思われる。

ネズッポ科のうちネズミゴチやヨメゴチなどは底曳網で多く漁獲され食用となっている。本種はやや深い水深150mくらいの場所に生息しているようで、沖合底曳網漁業でたまに漁獲される程度であり、食用になることはほとんどないように思われる。愛知県以南の太平洋岸に分布し、台湾にも生息しているようだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サビウツボ

2018年03月12日 23時30分50秒 | 魚紹介

昨日は忙しくて更新できませんでした。今日ご紹介する魚は、これも定置網の漁師の方から頂いた魚。ウナギ目・ウツボ科のサビウツボという魚である。

サビウツボの特徴は紫色の頭部と白い眼。眼が黒いと悪そうな雰囲気が漂ってくるのだが、白っぽいと可愛く見えるから不思議なものである。かわいい外見であるが、ほかのウツボ同様に鋭い歯を持っているので、咬まれないように注意したい。

生息地は暖かい海のサンゴ礁、それもごく浅いタイドプールでも見ることができる。琉球列島や伊豆・小笠原諸島に多い魚であるが、三重県以南の太平洋岸でも採集されることがある。

ウツボの仲間は四国南部でも色々見ることができる。種標準和名ウツボはよく知られた重要な食用種。クモウツボ、ミナミウツボ、アミメウツボ、トラウツボ、ワカウツボは採集したことがある。しかしコケウツボやシマアラシウツボにはいまだにお目に罹れていない。全長40cm、大きくても60cmくらいで、あまり大きくならない。食用にもされていないようだが、かわいい顔なので観賞魚として飼育されることはある。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イラ

2018年03月08日 23時21分01秒 | 魚紹介

今日はちょっと色々あって心が疲れているので簡単にいきます。今回の魚はイラ。スズキ目・ベラ科・イラ属の魚である。イラ属はベラ科の中の「タキベラ亜科」に含まれる。

イラの特徴は体側前半部にある黒色の斜めの帯。この帯の後ろに白い薄い帯があることが多い。また幼魚期には体側に3本の横帯があり、1本目と2本目の間に白い斜め帯がある。また背鰭には眼状斑もあるが、成魚では横帯も眼状斑も残らない。

分布域は千葉県・新潟県以南の本州~九州、朝鮮半島、台湾、中国、南シナ海。琉球列島からはほとんど知られていない。宇和海では珍しいものではなく、きさいや広場でも何度か大きいものを見ている(全長40cmにもなる)。しかし結構見られるため油断したか、いまだに食したことがない。沖縄では同属のシロクラベラを「まくぶ」とよび、高級魚扱いしているのだが、イラは高級魚扱いされていない。

 

シロクラベラ

日本のイラ属魚類は従来はクサビベラ、ミヤコベラ、シロクラベラ、クラカケベラ、そしてイラの5種類が知られていたが、近年はイラモドキ属やシチセンベラ属をイラ属に統合する考えが受け入れられており、「日本産魚類検索」第三版では7種が掲載されているが、このほかにも数種が日本から知られている。近年日本初記録種としてユウモドロベラという種が報告されたり、「南日本太平洋沿岸の魚類」という本でミナベイラという種があらたに掲載されたり(学名はまだない)、さらに分類学的な問題を抱えていて厄介な種Choerodon zamboangaeなんていう種も知られている。このうちミナベイラはミヤコベラに似ているが、体側の色彩や斑紋が異なるようだ。

世界からは少なくとも25種が知られている。東アフリカから中央太平洋に広く分布しているが、ハワイ諸島や南北アメリカの西岸、大西洋には一切生息していない。大きさは50cm以下の種類が多いが、オーストラリア近海のChoerodon rubescensや、日本にも生息するシロクラベラなどのように1mほどになる種も知られている。

テンス

イラとよく間違えられる魚にテンスがいる。しかしテンスの仲間はイラよりもだいぶ薄っぺらい印象を受ける。また背鰭の形状や、側線が二つに分かれているというところもイラと異なるところである。もちろんよく見るとイラとだいぶ斑紋が異なっている。生態も大きく異なり、イラは夜間岩陰で眠るのに対し、テンスは砂の中に潜って眠るところも異なっている。テンスはベラ科のなかでもモチノウオ亜科に含められていることが多いが、テンス属とテンスモドキ属からなる別亜科とすることが望ましいように思われる。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ツバメウオ

2018年03月07日 21時04分19秒 | 魚紹介

今日も定置網で漁獲された魚をご紹介します。マンジュウダイ科・ツバメウオ属のツバメウオという魚。ツバメウオは従来は独自のツバメウオ科とされたり、スダレダイ科の中に含められてきたが、近年はマンジュウダイ科に含められていることが多い。この科は分類学的にはニザダイ亜目に含められており、ニザダイやアイゴなどに近いようである。なおスダレダイ科の魚は現在はスズキ亜目に含められており、分類学的な位置はかなり離れている魚である。だいぶ昔はチョウチョウウオなどと同様にチョウチョウウオ亜目のメンバーとされてきたこともあった。

ツバメウオは日本においては北海道以南の各地沿岸に生息している。この個体もそうで、定置網などで多く漁獲されている魚である。しかしながら漁獲されるのはある程度成長した個体ばかりで、小型個体はなかなかお目に罹れない。

本州で幼魚がよく採集されるのはナンヨウツバメウオという魚である。この種は枯れ葉に擬態していることで有名な魚である。しかしながらこちらはツバメウオとは真逆で、幼魚は頻繁にみられるものの、成長した個体は四国でもめったにお目に罹れない種である。この違いはなぜなのかわからない。

ツバメウオ属はこのほかにもミカヅキツバメウオ、アカククリ、そしてバタビアツバメウオの計5種が知られているが、すべて日本に分布している。アカククリの幼魚は黒い体で縁辺が鮮やかなオレンジ色になるのが特徴で、観賞魚として人気があるが成魚では銀色の体に変貌する。バタビアツバメウオは日本産の個体ではなく、南シナ海産の個体をもとに和名がつけられているもので、成魚は日本では確認されていないが、幼魚は石垣島で確認されている。

マンジュウダイ科魚類は世界で8属15種が知られているが、日本産のものは上記の種のほかマンジュウダイ属のマンジュウダイが知られているのみ。英語名はバットフィッシュとか、スペードフィッシュと呼ばれている。日本ではあまり食用にされていないが、海外、特に東南アジアではよく食されている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする