魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

トラヒゲ

2021年08月22日 18時53分30秒 | 魚紹介

※この記事はぶろぐを消されてしまったため、2021年6月3日以降に再度書き、8月22日に完成して再度アップした記事です(ぶろぐをWPに移転しましたが、会社側に譲渡はしておりません)。また誤同定もあり大幅な加筆修正などもあります。そのため2021年3月28日に投稿されたオリジナル版とは大きく異なります。ご了承ください。

この間、長崎県からとんでもない大物が届いた。深海性のソコダラ科の魚である。届く前はトウジンかと思っていたのだが、鱗の形状などが違う。また体側後部の模様からキシュウヒゲの可能性も高いと思われたが、日本近海のソコダラの仲間を包括的に研究した論文(※)によると、沖縄トラフで獲れた53cmほどの個体が最大とされるが、この個体は全長が782mmもある超大型個体である。ムスジソコダラという種かとも思ったが、この個体は頭部腹面に鱗があるので、頭部腹面に鱗がないムスジソコダラと見分けられる。

頭部の棘の様子もトウジンとは何か違う。オープンアクセスになってる東海大学の中山直英助教の論文(※)を調べてみたが、よくわからない感じであった。※Nakayama N., 2020. Grenadiers (Teleostei: Gadiformes: Macrouridae) of Japan and adjacent waters, a taxonomic monograph. Megataxa 3(1):1-383.

この論文ではトラヒゲという種の写真がこの個体によく似ていたが、まだ疑問があったので、中山先生に写真を送付して、見て頂いた。そして「写真だけですと何とも申し上げられませんが、トラヒゲの可能性が高いと存じます」という回答をいただいた。トラヒゲも体側の帯が入るのだが、この個体は大型のため模様が薄くなってしまっているようだ。ほかにも同定ポイントがあるのだが、同定しにくい種のようである。なおFishbaseによれば91cmくらいになるという。でかい。

トラヒゲはもともと台湾近海から記録され、台湾産の個体をもとに新種記載されたものが、近年沖縄でも漁獲されて標準和名がつけられた。トウジンの仲間はみな美味しい。今回はいろいろな料理で美味しくいただいた。

ソコダラ科の魚は美味しい。大きければ大きいほどうまい。トラヒゲも美味しい。上にある小鉢は肝臓をゆでたもの。ぽん酢で食うと美味しい。

トラヒゲの卵も煮物に。これは美味しい。

こちらは胃袋。これは塩ゆでで、やはりぽん酢で食べるのが美味しい。こうやってタラの仲間はいろいろな部位を食することができ、かつ美味しい魚なのである。

今回のトラヒゲは長崎の印束商店 石田拓治さんから。いつもありがとうございます。同定についてアドバイスをいただいた中山直英先生、ありがとうございました。

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テンジクダイ

2021年08月16日 20時48分41秒 | 魚紹介

いつの間にかお盆も仕事の研修で終わってしまいました。魚ネタはほとんどなし。

以前に宮崎のWadaさんから頂いた魚。テンジクダイ科のテンジクダイという魚である。昔はテンジクダイ属というのがあったが、分類体系の大幅な変更により、現在はこの属の名前は使用されず、本種はツマグロイシモチ属という属の中に入れられている。テンジクダイ科の魚、といえばネンブツダイやクロホシイシモチなどがよく知られているが、本種は釣り人にはあまり知られていない魚である。

しかし決して珍しい魚というものではなく、底曳網で水深30~70mくらいの場所を曳くと大量に網に入ってくる。釣りではもっと浅い場所でも釣れることがあるし、今回の個体のように定置網で漁獲されることもある。食用魚としてしられ、この仲間では珍しく市場で値がつき、かなりうまい。本種については以前も紹介したことがあったはずである。

なお、ツマグロイシモチ属は本種のほかにもマトイシモチやツマグロイシモチなどがいる。マトイシモチは見たことがあり、このぶろぐでも紹介したことがあったと思うが、もう1種九州以北に生息するツマグロイシモチのほうはまだ見たことがない。ネンブツダイなどは雄が卵を口腔内で保育するが、本種もそのような習性がある。

今回のテンジクダイは宮崎県のWadaさんより。ありがとうございます。

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オニノウチワ

2021年08月08日 08時13分43秒 | 魚紹介

こんばんは。いつの間にかトンキンオリンピックも閉会式。さすがに苦しい思いをしている方も多いのでどんな結果も喜べないのですが、みなさん、おつかれさん。

最近はネタがあまりなく、投稿ができていなかったのだが、宮崎県からひさしぶりに「いい魚」が届いたのでご紹介。エイの一種(サカタザメ目・ウチワザメ科)のオニノウチワという種類だ。

本種が含まれるサカタザメ目・ウチワザメ科はいずれも上位分類群の標準和名に「ザメ」とあるが、サメの仲間ではなく、エイの仲間である。もっとも、サメもエイも同じ板鰓亜綱なので、広義では「同じグループ」といえるのであるが。ウチワザメ科の魚をこの魚のぶろぐで紹介するのははじめてである。以前にウチワザメも見ているのであるが、ウチワザメは写真を撮影していなかったようで、手元にデータがない。

ウチワザメなどのタイプのエイは、アカエイなどとはまたかなり異なった系統のようである。アカエイなどのような大きな尾棘はないが、背中に鋭い棘が多数生えている。毒性はないようだが、それでも取り扱いには注意したほうがよいだろう。またアカエイと異なり、オニノウチワには尾鰭と、顕著な二つの背鰭がある。

ウチワザメとの違いは、肩帯部前方に1対の棘(矢印)があること(ウチワザメではない)、眼窩や肩帯部、項部に1対の棘が黄色く縁どられていない(これらの棘が黄色く縁どられる)ということで見分けられる。見分け方については、またいつかウチワザメを入手した時にご紹介したい。

ウチワザメ属は4種が知られており、このうち3種は2010年以降に新種記載されたものである。かつてウチワザメは学名がPlatyrhina sinensisとされていたが、この種は日本におらず(台湾海峡の中国側、南シナ海、ベトナムに分布)、日本のものは新種記載された。ウチワザメの今の学名はPlatyrhina tangiである。学名種小名は人名由来で中国?の魚類学者に由来する。オニノウチワのほうの学名はPlatyrhina hyugaensisで、種小名は「日向の」を意味し、タイプ標本が宮崎県で採集されたことによるが、ウチワザメのタイプ標本も日向灘で漁獲されたものである。ウチワザメ属にはこのほかPlatyrhina psomadakisiという種もインド洋から知られている。なおウチワザメ科としては2属が知られ、もう1属はPlatyrhinoidis triseriata、英語でソーンバックと呼ばれる種のみが知られている。その名の通り棘の列が背中に並んでいる。ほかの種がアジア沿岸にすむのに対し、この種類だけは北米西海岸(カリフォルニアからバハーカリフォルニア)に生息している。

本種は三重県~鹿児島県の浅海に生息し、たまに底曳網で漁獲されるようである。今回の個体は宮崎県のおふたがた。Wadaさんと、あららさんより。いつもありがとうございます。

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トラカマス

2021年08月01日 17時01分12秒 | 魚紹介

こんにちは。今日から8月です。今日は以前Wadaさんから頂いた魚のご紹介。

このカマスはトラカマスという種類。

最近日本産カマスは新しい種が3種類記録されているがそのうちの1種である。学名はSphyraena jello Cuvier, 1829である。比較的昔から知られていた種で分布域も南アフリカからバヌアツまでと広域に及ぶが、日本ではつい数年前に新しく見つかったものである。場所は門川の定置網で、どうやらWadaさんもこの種の日本からの初記録の文献を書かれているようだ。

本種の特徴は黄色の尾鰭である。これによりほかの大型のカマスと見分けることができるだろう。成魚では全長1mを超えるが、日本ではあまり大きいのは漁獲されないかもしれない。今回の個体も標準体長224mmと小型の個体である。やはりまだ再生産、定着はしていないのかもしれない。

最近日本から見つかった大型カマスはこのトラカマスのほか、ヤシャカマスとタツカマスがいる。これほど大きいのに日本ではなぜ出ていなかったのかは不明であるが、おそらくこれまでも、「大きなカマスで横帯があるのは大体オニカマスにしておけ問題」があるからだ。オニカマスは1949年に東京で多数の中毒者を出したあと、市場には出してはいけないことになった。それに似たカマスは水揚げされないだろう。鹿児島の内之浦ではオニカマスも市場に上がるが、セリにかけられてはいないようである。よく似たヤシャカマスもそうなのだろう。なおこの個体が採集された宮崎県の近海では縞模様のある大型カマスは食べないらしい。オニカマスの大型のものはルアーで釣れ人気だが、歯が非常に鋭く、熱帯域ではまれにヒトを襲うこともあるという。

今回のトラカマスは宮崎県門川のWadaさんより。いつもありがとうございます。

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