久しぶりに我が家で飼育している淡水魚の紹介。コイ科のイトモロコ。2018年の5月に九州で採集したものなので、我が家にやってきてもう4年以上になる。細くてすぐやせるようなイメージがあるが、あまりきれいな水でなく、デトリタスなどがたまったような水槽では長生きしてくれるようだ。キラキラと輝く鱗がとても美しい魚である。中部地方から山陽地方、四国、九州北部の河川に生息する。
この魚はゴンズイという。ゴンズイはナマズ目・ゴンズイ科・ゴンズイ属の魚で、日本のナマズ目魚類としては、珍しい海にも生息するグループである(ほかにミナミゴンズイとハマギギ科があてはまる。大雨の後ナマズが海に見られることがあるが、基本的に海では生きられないので除外)。背鰭と胸鰭の棘に毒があり刺されると激しく痛むので取り扱い注意。この写真の個体は2013年、静岡県の漁港の上に捨てられていたもの。持ち帰らない魚は優しく逃がしてあげたい。ゴンズイは毒棘があるが美味しい魚なので持ち帰って食べるとよいだろう。
ゴンズイの幼魚。小型個体があつまって「ゴンズイ玉」をつくる。成魚は夜行性なのか、夜釣りで多く釣れるが幼魚は昼間も活発に泳いでいる。写真のような内湾の漁港、あるいは河川の流れ込みがある場所ではよく見られる。
高知県のゴロタ場で見られたゴンズイ。きれいな海水の場所であるがこのような場所にも見られる。この場所には何度も通ったがこの場所では最近はゴンズイを見ていない。今年こそは見たいものである。
高知県の防波堤で2020年に釣った魚。スズキ目・イスズミ科・イスズミ属のノトイスズミ。
ノトイスズミは分布域が広く、北は青森県から南は琉球列島に見られる。海外ではインドー西太平洋に広く分布し、標準和名の「ノト」とは能登半島のことだという。分布域が広い理由は本種もキヘリモンガラやソウシハギ、アミモンガラなどと同様に流れ藻などの浮遊物によくついているからである。実際に海の表層に浮かぶごみを掬うと本種がついていることもある。
イスズミ科は悩ませる存在といえる。私は磯釣りをあまりしないのであるが、この仲間の同定はかなり難しいことがある。とくに同じ灰色の体をしたテンジクイサキと間違いやすいので注意したほうがよいかもしれない。ただしテンジクイサキは背鰭も臀鰭も高いのに対し、ノトイスズミはこれらが低いので見分けることができるだろう。
イスズミの仲間は釣りあげると頻繁に体色を変える。ノトイスズミは体色が灰色から茶褐色で、お世辞にも美しいとはいえない。体側の縦縁も茶褐色である。一方イスズミは銀色の体で、体側の縦線はオレンジ色が目立つ。そのためこの2種は比較的見分けやすいのではないかと思う。釣りでは引き味は強烈であるものの、メジナのほうが人気がある。味もメジナのほうがよいのであるが、このノトイスズミも決して「まずい」ということはなく、塩焼きで美味しくいただいた。防波堤から釣れる小さなイスズミもな引き味はなかなかのもので、釣る楽しみがある。
3日ぶりに魚の話題を。スズキ目・トクビレ科・ツノシャチウオ属のアツモリウオ。これは最近入手したものではなく、2020年の夏にいただいたものである。
アツモリウオの頭部、吻の先端には肉質のひげがある。これはこの属の日本産種であればどの種も持っている。ただしこのひげは個体によって変異があるとされる。とてもユニークな顔つきである。
眼の上にも大きな棘があり、その棘のすぐ後方にも小さな棘が見られる。この小さな棘の有無は近縁種のひとつであるクマガイウオと見分けるための特徴のひとつであるといえる。
近縁種クマガイウオ
アツモリウオと同じツノシャチウオ属の魚は日本近海からは4種が知られている。ツノシャチウオ、トンガリシャチウオ、クマガイウオ、そしてこのアツモリウオである。前二者は胸鰭下部の軟条が遊離する(鰭膜がない)のに対し、クマガイウオとアツモリウオは胸鰭下部の軟条にも鰭膜があり、軟条が遊離しないという特徴がある。クマガイウオは上記の眼の上の棘の特徴のほか、体側の側線に黒くて明瞭な縦線があることにより、体側に明瞭な黒い線のないアツモリウオと見分けることができる。この仲間の魚は北日本の浅い海~水深100mを超える海底に生息しており、刺網や底曳網などで漁獲される。この属のうちツノシャチウオは北海道太平洋岸西部や東北地方、新潟県で、トンガリシャチウオは北海道猿払、日本海沿岸に見られるが、アツモリウオとクマガイウオは北海道全沿岸、東北地方においても幅広く見られるほか、南は島根県隠岐諸島付近にまで見られるという。
アツモリウオは刺網や底曳網漁業などで漁獲されているものの、食用になることはほとんどない。しかし同科のトクビレは北海道では重要な食用魚で、イヌゴチやシチロウウオも食したが美味であった。今回はアツモリウオも食べてみた。食べ方は塩焼き。キホウボウなどよりも体を覆う鎧のような骨板はやわらかく、噛めなくもない。骨板ごと焼いて骨板ごと食べたがなかなか美味であった。水族館では北海道の海を再現した水槽にいるのをよく見る。家庭の水槽で飼育できないこともないが、水温は12℃くらいと低めに保つ必要があるだろう。そのためクマノミ類など熱帯性海水魚との飼育は不可。
今回のアツモリウオは北海道の「ぽむ」さんからいただいたもの。ありがとうございました。