魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

おしまい

2018年12月31日 12時04分14秒 | 魚紹介

2018年もおしまいです。年の瀬に環境省がまたトキのことでやらかしたようで。たしかに遺伝的に差はないようですが、絶滅したものを再導入して「絶滅から回復しました」というのは正しいのでしょうか、環境省さん。

さて、年末にまたすごい魚がやって来たのでご紹介。スズキ目・シマガツオ科・マンザイウオ属のツルギエチオピア。

ツルギエチオピアは水深550m以浅に生息するシマガツオ科の一種。分布域は太平洋岸では北海道南部、相模湾~土佐湾、日本海岸では北海道や新潟県などから報告があるが、この個体は京都府の舞鶴で定置網により漁獲されたもの。おなじシマガツオ科のチカメエチオピアも同じところで水揚げされているものと思われる。生息地は主に外洋で、マグロ延縄漁業などにより漁獲されることもあるが、このほか定置網や釣りなどでも漁獲されることもあるようだ。

本種が含まれるマンザイウオ属の魚は本種とマンザイウオの2種が日本をふくむ世界の海域から知られている。この属の特徴は頭部の両眼間隔が平坦またはわずかに突出すること、頭部はやや側扁すること、背鰭や臀鰭を自由に折りたたむことができないことなどでほかのシマガツオ科の種と区別できる。

マンザイウオ属のもう一種であるマンザイウオによく似ているが、マンザイウオは尾柄の中央部の鱗が特に大きいということはなく、隆起するということはないのに対し、ツルギエチオピアではこの尾柄部の鱗が非常に大きくなり隆起することによりマンザイウオと見分けることができる。腹鰭は魚類検索では大きく描かれているがこの個体はさほど大きくない。しかし同じくらいの大きさのヒレジロマンザイウオやチカメエチオピアと比べたら大きいのだと思われる。なおマンザイウオのほうは本種よりも概要を好むのかいまだに入手しておらず、ヒレジロマンザイウオも1匹しか入手出来ていない。もしマンザイウオが漁獲されたという方はご一報いただきたい。

今回のツルギエチオピアは昨年の2月にチカメエチオピアをおくっていただいた京都府舞鶴「水嶋鮮魚店」水嶋直樹さんより。いつもありがとうございます。というかあのあたりの海域、この手のシマガツオ類が多いような。隣県福井県からもチカメエチオピアをいただいている。チカメエチオピアも本種も刺身などは非常に美味しい。ということで本年は皆さまお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。

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ナガユメタチモドキ

2018年12月28日 00時39分33秒 | 魚紹介

我が家に初の2m超え魚類となる魚がやってきた。スズキ目・タチウオ科・ナガユメタチモドキ属のナガユメタチモドキ。

分布域は三大洋におよび、日本においては青森県、岩手県、相模湾、静岡県、紀伊半島、土佐湾の太平洋岸、日本海岸でも福井県や山口県からの記録があった。この個体も福井県越前町の産である。

この種の特徴は何といっても細長いこと。ナガユメタチモドキ属の魚は本種のみの1属1種であり、ユメタチモドキともまた別の属の魚である。ユメタチモドキとは体がえらく細長いことや、背鰭の鰭条数により区別することができる。

ナガユメタチモドキにも、タチウオの仲間であり、口には小さいが鋭い歯がならんでいる。ほかのタチウオ科魚類と同じく、動物食性で魚類をおもに捕食するようだが、今回は胃の中には何もはいっていなかった。タチモドキとは頭部の形状が異なり、両眼間隔に隆起があることによって区別することができる。

今回の個体は全長2114mmもあり、これは我が家にやってきた魚の中では最大のサイズである。長いわりには細身の体であり、重さは1857gであった。11月にやって来たムラサキギンザメ以来となる脚立の出番であったが、それより前に脚立を使ったのは2015年のユメタチモドキ以来である。来ないな、来ないなと思っていても、来るときにはまとめてやってくる。

刺身。これは脂がよく乗っていて美味しい。

塩焼き。これはタチウオと変わらない感じがするが、やはり脂がのっていて美味しい。

これはマスターグリさんよりいただいた個体。このほか都合上紹介できていなかったが(また後日紹介するかも)タナカゲンゲ、イノシシなどもいただきました。ありがとうございました。

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2つの初魚種

2018年12月26日 19時16分40秒 | 魚紹介

もう2018年もあと1週間です。今年はこれまでにもヤエギス、スギ、オオクチイシナギ、ムラサキギンザメなど初めて食する魚が多かったのですが、そんな年の終わりに新たに2種の魚を食することができました。

●サザナミダイ

サザナミダイはスズキ目フエフキダイ科の魚。フエフキダイ科は二つの亜科に分けられるが、ヨコシマクロダイやノコギリダイ、メイチダイなどと同じ亜科の魚である。本種はその中のメイチダイ属に含まれる。

日本にはメイチダイ属が8、ないし9種いる。最近まで6種だったのだが、近年2種増えた。その中でも特に大きくなるのが本種であり、全長60cmオーバーになる。この属は分布が南方に偏っているがこのサザナミダイは紀伊半島以南の日本に分布している。一方シロダイやタマメイチは高知県が北限のようだ。ちなみに今回の個体は鹿児島県産。このサザナミダイを購入する前の日はタマメイチもあったそうだ。残念。

サザナミダイ頭部

サザナミダイの標準和名の由来はこのサザナミ模様。青く輝き美しい。なお、メイチダイも不明瞭ではあるが頭部にサザナミ模様があるのがいる。

サザナミダイは結構お値段も張る。しかしその分美味しい魚だ。白身の大変美味しい魚で、食感はもっちりしている。今回は半身のみ食した。残りは冷蔵庫で保管しており、正月の食卓に並ぶだろう。

 

●イシフエダイ

2匹目はイシフエダイ。スズキ目・フエダイ科の仲間でもすらっとした体形が特徴的なものがそろうEtelinaeの仲間で、この亜科にはヒメダイ属、ハマダイ属、バケアカムツ属、アオチビキ属、そしてイシフエダイ属の5属、計19種が含まれている。

イシフエダイ属は本種とオオグチイシチビキの2種が知られ、2種とも日本近海に産する。イシフエダイは分布が南方よりなのか、オオグチイシチビキがよく水揚げされる愛媛県愛南町でも、高知県西部でも見ることはできなかった。

ただ今回の個体は高知県産だという。イシフエダイの分布は魚類検索によれば相模湾西岸、土佐湾、琉球列島、伊豆諸島、小笠原諸島。海外ではインドー中央太平洋に広く分布しているほか、東太平洋のココ島でも見ることができるようだ。全長40cmほどで、オオグチイシチビキ(60cm)よりもやや小さめ。

熱帯魚のようなブルーな体色であるが、さばいてしまえばそんなものも気にならない。同じフエダイ科のアオダイというのは極めてうまいのだ。だからイシフエダイもうまいだろう。さばいてみると一転、青から赤みを帯びた色彩変貌する。食欲がわいてくる色彩だ。味もなかなかいける。今回の魚はいずれも「シーフーズ大谷」さんで購入したもの。大谷さんとのお付き合いも来年で10周年になる。ありがとうございました。

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ムラサキギンザメ

2018年12月20日 11時17分23秒 | 魚紹介

※この投稿は2018年12月20日に投稿していましたが、株式会社桃鶴堂の代表取締役社長氏により、ぶろぐの内容の一切が削除されてしまいました。そのためオリジナルとは異なります。あらかじめ、ご了承くださいませ。

この間珍しい魚をいただきました。軟骨魚綱・全頭亜綱・ギンザメ目・ギンザメ科・アカギンザメ属の深海性魚類、ムラサキギンザメ。

本種を含むギンザメ目は上記の通り、軟骨魚綱の中の全頭亜綱とよばれているもので、サメやエイなどの含まれる板鰓亜綱とは大きく異なる分類群である。板鰓亜綱は鰓孔が5~7対くらい開いているのに対し、ギンザメ目は1対のみである。これによりサメやエイと見分けることは容易である。ギンザメ科はギンザメ属とアカギンザメ属に分けられ、本種はアカギンザメ属に含まれる。ギンザメ属と異なり、臀鰭がないのが特徴である。

ムラサキギンザメの頭部。ギンザメの仲間は英語名でRatfishというが、ネズミのような歯をしていることからきていると思われる。もう一つの英語名Chimaeraはそのまま怪物「キマイラ」からきている。なお本種の英語名はPurple chimaeraというが、日本でも英語でも考えていることは同じのようだ。なお本種のタイプ産地はハワイのカウアイ島近辺である。日本においては駿河湾~東北地方太平洋沖に生息しているとされるが、サハリンからの記録もあるらしい。

ムラサキギンザメはかつてニジギンザメとも呼ばれていたが、後者は前者の同物異名の可能性が高いようだ。全長1mを超えギンザメ科の中では特に大型になる種であり、この個体も全長90cm近くになる巨大なサイズの個体であった。

ムラサキギンザメの背鰭。ギンザメ類は背鰭に棘をもつが、この棘は有毒とされており、扱いには注意が必要である。

ギンザメの仲間は食用魚として知られている。「フカの湯引き」では日本近海のサメだけでなく、ニュージーランド近海のギンザメも使われるらしい。ムラサキギンザメと同じアカギンザメ属のホシギンザメなどが使われるようで、このホシギンザメは漁業者により「ギンブカ」と呼ばれているという。刺身はうまみは少ないが、臭みもなくおいしい。

ムラサキギンザメの肝。大きな肝はクリーミーであり非常に美味である。軟骨魚類ではほかにアカエイ科のホシエイの肝が食用として人気があるが、こちらも美味しく、人気がでるであろう。

ムラサキギンザメの肝は刺身醤油をちょっとつけるだけでよい。味がかなり強く、強すぎるというなら若干ニンニクなどを使って薄めてもよいだろう。

今回のムラサキギンザメは相模湾の鈴木享平さんより。珍しい魚をありがとうございました。

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アカマツカサ属の同定

2018年12月05日 15時30分35秒 | 魚の見分け方

ご無沙汰です。私は最近アカマツカサ属の同定依頼に遭遇することが多い。大体が紀伊半島から九州、沖縄で採集されたアカマツカサ属の魚の同定である。最近「九州以北に生息するアカマツカサ属=ナミマツカサ」とするような同定が非常に多くある。しかしながら、九州以北のアカマツカサ属は「魚類検索」のものだけでも8種がいるとされる。したがって、九州以北のアカマツカサ属をナミマツカサのみとするのは誤解を招く可能性がある。

アカマツカサ属の同定は胸鰭腋部の鱗の有無を見ることが多い。ここに鱗があるか、ないかで大きく二分される。前者にはナミマツカサ、アカマツカサ、セグロマツカサなどがおり、後者にはウロコマツカサやツマリマツカサなどが含まれる。

鱗、といえば体側の鱗の数もアカマツカサ属の同定においては重要視される。側線有孔鱗数は32~43のものと、27~30のものという二つのグループに大きく分けられる。「魚類検索」では前者にはベニマツカサ、キビレマツカサ、クロオビマツカサ、ミナミマツカサ、コガネマツカサ、アメマツカサに並んでツマリマツカサが含まれているが、ツマリマツカサは側線有孔鱗数28~29なので同定には注意が必要である。

ほかナミマツカサとアカマツカサ、ヨゴレマツカサの同定であれば頭長、吻長、鰓耙数、両眼間隔の計測なども必要である。ナミマツカサの頭長は両眼間隔の3.8~4.5倍、吻長の4.9~5.3倍であるが、ヨゴレマツカサではそれぞれ4.5~5.1倍、4.6~4.9倍である。また、鰓耙数はナミマツカサでは36以下、ヨゴレマツカサでは38~43、アカマツカサでは36~44で、アカマツカサとヨゴレマツカサでは数値がカブるが、ナミマツカサでは明らかに少ない。

ただこれらの魚の同定を行うのはある程度経験と適切な参考資料(例:日本産魚類検索第三版 など)が必要となる。それを考えるとやはり素人同定でアカマツカサ属の同定は困難であり、魚類相を調べるなど、正確に同定する必要があるのならば写真だけでなく個体を残しておく必要があろう。

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