魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

イソアイナメ(&チゴダラの見分け方)

2020年01月30日 14時15分13秒 | 魚紹介

最近新しい魚を入手した。長いこと探していたイソアイナメという魚である。

イソアイナメは名前に「アイナメ」という名前がついているが、アイナメの仲間ではなく、タラ目チゴダラ科に属する魚である。しかしその見た目はよく似ているかもしれない。ただ、どちらも2基背鰭を持っているのだが、イソアイナメの第1背鰭はアイナメよりもずっと基底が短い。

「日本産魚類検索第三版」などで、イソアイナメは深海性との記述があるがこれは誤りである可能性が高い。私が知る限りでは鹿児島の防波堤でも釣れているし、浅海の刺網でも漁獲されているからだ。ただしチゴダラ(浅海、幼魚はタイドプールにも出現~水深1000m)のように、浅海から深海にいる可能性もある。生息環境だけでなく分布域についてもユニークである。東北~九州南岸の太平洋沿岸、新潟県~九州の日本海岸や東シナ海岸(今回の個体は長崎県産)に分布し、海外では朝鮮半島、済州島に生息するほかオーストラリア沿岸、ロードハウ島、ノーフォーク島に生息している。北半球と南半球の温帯域にすみ、かつ熱帯域にはいない。そんな魚はほかにもいるが非常に興味深いものである。もしかしたらカゴカキダイのように複数種に分かれる可能性がある。

上がチゴダラ、下がイソアイナメ

 

この写真の上にいるのがチゴダラである。別名はエゾイソアイナメ。かつてはそれぞれ別種とされたが、現在はチゴダラとエゾイソアイナメは同種とされている。検索図鑑では色の違いなどがあげられているのだが、生息水深の違いというのもあるのだろう。

チゴダラ

チゴダラの分布域は北海道~九州、九州―パラオ海嶺。海外では朝鮮半島や台湾に見られる。防波堤の釣りで釣れるほか、定置網や底曳網でも漁獲されている。体は茶褐色から濃褐色で、個体による変異があるようだ。イソアイナメとチゴダラを見分けるポイントは背鰭と臀鰭の位置関係である。

イソアイナメの背鰭と臀鰭。臀鰭起部は第2背鰭起部より後方

チゴダラの背鰭と臀鰭、臀鰭起部は第2背鰭起部よりほぼ直下にある

この2種を見分けるポイントは背鰭と臀鰭の位置関係である。チゴダラの臀鰭起部は第2背鰭起部の直下にあるのに対し、イソアイナメの臀鰭起部は第2背鰭起部直下よりも後方にある。イソアイナメ属は世界で4種がいて、うち日本には2種が知られる。日本産のもう1種ホソダラは1936年に新種記載されたものだがまれな種のようで、生息場所や分布域も「深海」「土佐湾」としか記されていない。ほかにはオーストラリアにもう1種、デスベントゥラダス諸島やファンフェルナンデス諸島といった南米西岸沖合島嶼にもう1種いる。南半球に多い種といえそうである。

イソアイナメは今回ほかの魚と一緒に煮て食べたがこれが非常に美味であった。今回のイソアイナメは長崎 印束商店 石田拓治さんより。いつもありがとうございます。

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ナガテングハギモドキ

2020年01月26日 19時31分59秒 | 魚紹介

昨年2019年に最後に食べた魚がナガテングハギモドキ。名前の通り長い体が特徴的である。テングハギ属であるのだが、サバみたいな体をしており、遊泳力も強いのではないかと思われる。

名前に「テングハギ」とあるが、頭部に「テング」のような角はもたず、頭部は丸い。色彩は灰色で、うっすら青みがかる。体には黒色点があり、頭部、体側、尾鰭、背鰭にもある。腹部は一様に灰色で斑紋をもたない。

テングハギの仲間は尾柄部に二つの骨質板がある(ボウズハギやキビレボウズハギなどではひとつ)。クロハギのようなメスみたいなものではないが、強い武器になるだろう。尾鰭は三日月形で遊泳力が強いことがうかがえる。

ナガテングハギモドキのお刺身。ニザダイ科のお刺身はこれで4種目である。もう3種はマサカリテングハギ、ゴマテングハギモドキ、そしてテングハギモドキであり、角が特徴的なテングハギはこれまで食べたことがないのである。

身の色は赤みを帯びている。マサカリテングハギよりも赤みが強い感じ。実際に食してみるとマサカリテングハギよりも美味であった。

今回の個体は神奈川県産で、長谷川大樹さんより送っていただいたもの。ありがとうございました。

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ボロサクラダイ

2020年01月25日 17時20分05秒 | 魚紹介

もう2020年の1月も半分以上が過ぎてしまったが、2019年は貴重な魚に何種類も出会うことができた。これはそのうちの一種、ボロサクラダイである。ハタ科ハナダイ亜科イッテンサクラダイ属。アクアリストにとってお馴染みのキンギョハナダイとは、属の時点で違うのだ。魚好きにはおなじみの書籍である山と渓谷社「日本の海水魚」では真っ白なボロサクラダイしか掲載されていなかったので、これほどカラフルなものとは思わなかった。色も白くなく、ピンク色が美しい。

ボロサクラダイの特徴といえば背鰭の軟条であろうか。軟条がよくのび見事なものである。

背鰭の軟条だけでなく、第三棘条もよくのびる。日本産でこの特徴をもつイッテンサクラダイ属魚類にはボロサクラダイとハタタテハナダイがいる。イッテンサクラダイやマダラハナダイなども伸びるのだが、短い。ボロサクラダイの第三棘はこれらの種よりは長くのびるのだが、まだまだ長くのびる種がいる。ハタタテハナダイの背鰭第三棘は体高よりも長くのびるのである。しかしハタタテハナダイは沖縄島、小笠原諸島から知られるものの、ややまれな種のようである。

ボロサクラダイのもう一つの特徴は尾鰭の基底で、そこには明瞭な黒色横帯がある。この特徴により、日本に生息するほかのイッテンサクラダイ属魚類と見分けることができる。以前投稿したバラハナダイには、尾鰭に黒色横帯はない。

ボロサクラダイは全長20cmになり、ハナダイ亜科としては大型で肉量も多い。実際イッテンサクラダイ属の魚はアカイサキと並び、日本産のハナダイ亜科魚類としては珍しく市場に出る魚なのだ。以前ご紹介したバラハナダイも市場に出るし、このボロサクラダイもまれに市場に出る。味はかなり美味しい。

今回のボロサクラダイは印束商店 石田拓治さんより。ありがとうございました。

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バラハナダイ

2020年01月13日 18時20分53秒 | 魚紹介

すみません。体調不良と忙しかったためぶろぐを更新できませんでした。本年もよろしくお願いいたします。

今回は最近(といっても旧年12月)に入手した魚のご紹介。ハタ科・ハナダイ亜科・イッテンサクラダイ属のバラハナダイという種類である。見てわかるように非常に美しい魚である。見てわかるように大変美しい魚である。バラハナダイはやや珍しい魚ではあるが、深場釣りではたまに釣れる。市場にも出て食用になることがあるが、残念ながらこの個体はグリーンFゴールドで薬漬けになっていて、食べることはできないのだ。

バラハナダイの尾鰭。Odontanthias chrysostictusという種はバラハナダイに似ていて、分布域も西太平洋であるが、尾鰭の色彩が違うように思える。また尾鰭の長さもだいぶ違っている。バラハナダイを含むイッテンサクラダイ属は15種が知られており、日本にはバラハナダイのほか、ボロサクラダイ、イッテンサクラダイ、ハタタテハナダイ、マダラハナダイが知られている。かつてバラハナダイと同じ属とされたイトマンオオキンギョという種類はMeganthias属に含まれ、現在は別属となっている。属の標準和名はイトマンオオキンギョ属となっている。

またこの属はながくHolantias属とされ、長らくバラハナダイ属という標準和名があったが、現在はHolantiasとは別属とされる。属はOdontanthias、標準和名はイッテンサクラダイ属とされた。混乱を避けるためにOdontanthiasにバラハナダイをつかうのはやめたほうが無難であろう。

イッテンサクラダイ属もなかなか入手できない魚であった。しかし2019年には5月に1尾、そして12月にこのバラハナダイを入手できた。5月に入手したものについてはまた別にご紹介したい。しかし長いことまっていても来ないのに来るときはまとまってくるので、魚というのは面白いものだ。

今回のバラハナダイは水谷昌夫さんより。ありがとうございました。

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