魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

マツバスズメダイ

2017年06月22日 00時22分02秒 | 魚紹介

スズメダイの仲間はサンゴ礁でごくふつうに見られる小魚ですが、本州から九州にかけての海域に多く生息し、琉球列島ではあまり見ることができない種もいます。このマツバスズメダイもそんな魚のひとつ。基本的には本州~九州の沿岸で、太平洋岸・日本海岸いずれにも見られますが、沖縄では決して多くはありません。

この仲間は磯や防波堤でごく普通に、様々な種類が釣れるもので、私もよくこの科の魚を釣っていたものですが、マツバスズメダイと初めてであったのは2009年の秋のことでした。釣り仲間がマツバスズメダイを釣ったのをいただいたのです。最初は慣れ親しんでいたスズメダイのちょっと色が薄いものかと思いましたが、すぐにマツバスズメダイと同定できました。それほど、いつも見ているスズメダイと違う、とわかったのでした。

特に尾鰭にある黒い線がスズメダイのものよりも明らかに強烈でした。しかし、あまり同定にこの特徴は使われないようです。

書籍や水中写真を見る限り、マツバスズメダイとスズメダイはともによく似ていて間違えられやすいといえます。ただ全体的に見れば、マツバスズメダイは体色がスズメダイよりも明るく、尾鰭の黒い線がスズメダイのそれよりもはっきりしているように見えますが、それは同定のポイントにはならないのでしょうか。

マツバスズメダイは水深70m以浅の岩礁域、スズメダイは水深15m以浅に多いようですが、スズメダイもやや深い場所で釣れていてイサキ釣りの際に釣れることがあるなど、生息場所もこの2種は重なっていることがあるようです。

食についてはなんともいいにくいものです。なぜならマツバスズメダイを食したことがないから。近縁種であるスズメダイは塩焼きなどで美味しいもので、九州北部では人気の食用魚です。もしかしたら気が付かないうちに食べているのかもしれません。漁法としては釣り、定置網のほか底曳網の漁獲物としても見られます。やっぱり、やや深い場所に生息する魚のようです。

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ハリダシエビス

2017年06月18日 11時07分24秒 | 魚紹介

以前画像でご紹介したことがありましたが、詳しくご紹介するのはこれが初めてになります。キンメダイ目・ヒウチダイ科・ハリダシエビス属のハリダシエビスです。

ハリダシエビスは魚類検索図鑑によれば水深90~302mの深い海に生息するとされていますが、浅い海の定置網でも漁獲されることがあります。写真の個体もそうで、これは高知県の古満目沖の定置網で漁獲された個体。

日本にはヒウチダイ科の魚は3属6種、または7種が生息していますが、ハリダシエビス属の魚は肛門が腹鰭の間にあること(ほかの属の肛門は臀鰭の前にある)、稜鱗が肛門の後方にある(ほかの属では肛門の前方にある)などの特徴で区別されます。

日本近海産のハリダシエビス属魚類は3種が知られていますが、基本的に日本の沿岸で見られるハリダシエビス属のほとんどは本種です。もう1種のミナミハリダシエビスは腹部にある発光器の長さや、ハリダシエビスにある鰓蓋上部の棘がないことなどで区別されます。体は黒っぽく細かい粗雑な鱗に覆われています。

ハリダシエビスは日本においては房総半島から九州までの地域に広く分布しています。海外では台湾とハワイ諸島に分布しています。一方ミナミハリダシエビスの分布域は日本近辺では九州-パラオ海嶺、海外ではこの種の種小名にもなっているサヤデマルハバンク、その近辺にあるナザレスバンクに生息するとされています。しかしハリダシエビスの分布(南日本太平洋岸、台湾、ハワイ諸島)はキンチャクダイ科のレンテンヤッコに似ているのが不思議なところです。なお、世界ではハリダシエビス属は6種が知られている模様。インドー西太平洋、ハワイ諸島と西大西洋に生息していますが、東大西洋と東太平洋には生息していないようです。

沖合底曳網で漁獲されたハリダシエビス

三重県尾鷲の定置網で漁獲されたハリダシエビスの稚魚

 

これまでハリダシエビスとは5回ほど遭遇してきました。1回目は冬の高知県古満目。トップ画像の個体で、大敷網の副産物として入手したもの。2回目は沖合底曳網漁業、海幸丸の漁獲物。3回目は宮崎県延岡、こちらも底曳網漁業によって漁獲されたもの。4回目が尾鷲の定置網。5回目は尾鷲の南、熊野の定置網にかかったもの。5回も遭遇しているのに、今回が実質初紹介となりました。しかしやっとではあるが、今回紹介できてうれしい。今年は久しぶりに尾鷲方面、あるいは沼津や遠州、土佐湾などへ深海魚探しの旅に出かけてみたいと思います。

以前アカタチ類の見分け方をこのぶろぐで書いたことがありました。ぶろぐを書いたあとすぐに観賞魚店でインドアカタチが販売されたり、浜名湖でもインドアカタチが採集されるなどしているようです。今年は近海産アカタチの当たり年になるでしょうか。だれか私にスミツキアカタチを触らせてほしいものですが。

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クロエソ

2017年06月15日 23時07分29秒 | 魚紹介

前回は深海性のエソ科魚類「ハナトゴエソ」をこのぶろぐでご紹介したところ反響がものすごかたので(え~?そう??、なんていう発言は禁止)、今回も深海性のエソ科魚類をご紹介したいと思う。今回の深海性のエソ科魚類は、マエソ属のクロエソ。

前回のハナトゴエソはアカエソ属なのに対し、今回のクロエソはマエソ属になる。日本のエソ科魚類は4属からなり、ほかにミズテング属とオキエソ属がいる。前者はマエソ属に似た雰囲気のものであるが、深海性のまれな種と東シナ海の中国よりの地域に多く生息しているもので、日本で見られる機会は多くない。後者は投げ釣りでよく釣れる種で、アカエソ属に近いものとされている。

クロエソの特徴は書籍「東シナ海・黄海の魚類誌」で以下の点が挙げられている。1. 胸鰭後端が腹鰭基部に達する 2. 体の背部は暗褐色で側線部に暗色斑が並ぶ 3. 尾鰭背縁に4~7個の黒色点列がある、4. 背鰭前縁にも黒色点列が見られる 5. 腹部が黒い。

さて、クロエソの最大の特徴は尾鰭に明瞭な黒色点列が並んでいることである。この黒色斑が本種に非常によく似ている種であるマエソにもあることが多いのだが(成魚では見られないことも多い)、マエソのものとは異なりよりはっきりと大きく出ている感じである。もちろんクロエソもエソ科の魚であるため脂鰭を有しているが、この個体では脂鰭が折れ曲がっているようになっている。本当は脂鰭をしっかり立てて撮影したかったのだが残念である。

背鰭前縁にも黒い点が並んでいるが、これもクロエソの特徴とされている。ただし写真からはわかりにくい。

腹部が黒っぽいことも特徴に当てはまる。「東シナ海・黄海の魚類誌」に掲載されている本種の腹部も確かに黒っぽい。ただしもうひとつの特徴である「側線の下方に暗色斑がある」というのは確認することができなかった。もっともこれはこの個体がいったん冷凍した個体であり特徴がでていないということも考えられる。よく見たら薄い斑紋があるようにも見えるがどうだろうか??

マエソ属の魚は日本からは8種が知られている。マダラエソなどの種はサンゴ礁域の浅瀬に生息しているが、残りの種は内湾ややや深い海底の砂泥底に生息していることが多い。このクロエソはやや深い海から底曳網で漁獲されているが、マエソとはとくに区別されておらず、マエソと同様に練り製品の原料となる。

この個体は昔載せて頂いた沖合底曳網漁船「海幸丸」で漁獲されたものであった。その時はマエソと暫定的に同定していたのであるが、それから8年ほどたって写真の個体をよく見てみると背鰭の色彩や尾鰭の色彩、腹部の色彩がマエソと明らかに違った。

以前は本種とマエソは他種と混同されてきたものであるが2006年にはこの仲間が整理され、クロエソはSaurida umeyoshiiとして新種記載され、マエソの学名はSaurida undosquamis ではなく、Saurida macrolepisとされた。本種に限らず10年以上前の本を参照すると学名が名無しさんであったり、違う学名だったりするので注意が必要である。クロエソの分布域は三重県~九州までの太平洋沿岸、日本海西部、東シナ海沿岸で、国外では台湾でも見られるという。生息水深も150mほどと、マエソよりはやや深い場所に生息しているようである。エソ類の同定についてはまた今度、ワニエソとマエソのいい写真が撮影できたら紹介したいと思う。

有限会社昭和水産 海幸丸のみなさまと、同定していただいた神奈川県立生命の星 地球博物館の瀬能 宏博士にはお世話になりました。ありがとうございました。

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ドジョウ放流

2017年06月09日 21時45分30秒 | 環境問題

本日二度目の更新。

ドジョウ大量死と思いきや、実はスーパーの売れ残り(読売オンライン、リンク先はアーカイブ)

どこが問題なのかは、このぶろぐの読者の皆様には説明する必要もなかろう。

「かわいそう→放流」というパターンは放生会やら、なんとかポストとか、未来の荒川をなっちゃら会などとは異なり大体が個人でおこなうものであるが、これの危険も大きいのである。特に今回は明らかに外来生物とわかるキンギョやニシキゴイではなく、日本在来のものと思われがちなドジョウが放流されたことにより、美談として受け取られかねないのでさらに危険度が増しているといえる。

「生きているのなら人として正解だと思います」

売れ残って、まだ弱っていても生きている個体を放流したらしい。しかし基本的に食用として販売されているドジョウは中国や台湾のものが多いと聞いており、実際にスーパーで売っているドジョウもほとんどが中国ないし台湾産であった。

以前にこのぶろぐでも紹介した書籍「日本のドジョウ 形態・生態・文化と図鑑」の中では中国大陸のドジョウも紹介されており、「在来のドジョウとは交雑する可能性もあり、販売されているドジョウを野外に放流することは決してしてはならない」とある。このような一見「善意」とされるような行為により外国産のドジョウは勢力を強め、その一方で日本在来のドジョウは追い詰められているといえるかもしれない。

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エイみたいなサメ カスザメ

2017年06月09日 10時55分18秒 | 魚紹介

今回は以前入手した魚を。カスザメ目・カスザメ科・カスザメ属のカスザメ。

カスザメは見た目がエイの仲間に似ている。サメとエイはともに軟骨魚類で、「板鰓亜綱」というグループを形成している。現生の軟骨魚類は2亜綱に分けられ、もうひとつはギンザメ目が含まれる全頭亜綱である。サメとエイは板鰓亜綱という同じグループに含まれ「サメ」と名の付くエイの仲間もいる。この二つのグループを分ける大きな違いは鰓の位置。サメの仲間は体の側面にあり、エイの仲間は腹面にある。

カスザメの鰓孔はどこにあるのか。カスザメをひっくり返してみると...

鰓孔はない。カスザメもサメの仲間で、体側にある。先ほどの写真からは見えないのですが・・・。

一方で「サメ」と名前についていても、鰓孔が腹面に開いているのはエイの仲間になる。サカタザメ目・サカタザメ科のサカタザメ(写真)は名前に「サメ」とついている。体の後方にある2基の背鰭などはサメのように見えるが腹面に鰓孔があるのでエイの仲間になる。ほか、トンガリサカタザメや水族館の人気者のシノノメサカタザメ、ほかウチワザメといった種もサメの仲間ではなく、エイの仲間になる。

英語でカスザメの仲間はAngel shark、「天使のサメ」という意味である。天使と言えば清らかなものというイメージがつよいのだがサメの仲間は大食いである。海底でじっと動かず獲物の小魚などが来るとひとのみにしてしまう。このぶろぐの読者であれば、アメリカの西岸に生息するパシフィックエンジェルシャークが、同じ海岸に生息しているネコザメの仲間のホーンシャークを丸のみにする動画を見たことがあるかもしれない。

意外なことに歯が鋭く、ヒトが咬まれると怪我をするおそれもある。ちょっかいを出したり、つかんだりしないようにしたい。カスザメもほかのサメと同様に食用として利用されている。底曳網や延縄などの漁法により漁獲され、湯引きなどで食用とされる。新鮮なものは刺身などでも食べられると思うが、残念ながらまだ食したことはない。また、ほかの種類のサメと同様に練製品などの原料として重要である。

カスザメ目はカスザメ科のみからなり、カスザメ科はカスザメ属のみからなる。日本産のカスザメ科魚類はこのカスザメと、近縁種のコロザメの2種とされていたが、近年になってタイワンコロザメという種も土佐湾で見つかっており、合計3種となった。世界でカスザメの仲間は20種ほどが知られており、いずれも似たような生活をしているようである。繁殖の様式はほか多くのサメと同様に仔魚を産む。

カスザメ科魚類の分布域は太平洋・大西洋・インド洋などのほとんど世界中の暖かい海域に及ぶ。カスザメの分布域は南は台湾、北はピーター大帝湾にまでおよび、日本においてもほとんどの沿岸から沖合に見られる。写真の個体は愛媛県宇和海で獲れたもの。

カスザメには臀鰭がない。これはツノザメの仲間やノコギリザメの仲間と同様の特徴である。以前はこれらの仲間とカグラザメ目、エイ目を合わせ「ツノザメ・エイ上目」とされていたが、近年この考え方はあまり支持されていない。今では板鰓類をサメ区とエイ区にわけ、前者にはネズミザメ上目およびツノザメ上目、後者はエイ上目のみからなり、その中にはノコギリエイ目と従来のエイ目(サカタザメ目、トンガリサカタザメ目、シビレエイ目、ガンギエイ目、トビエイ目)が含まれている。ただしエイの仲間の分類は流動的なものであり、トンガリサカタザメ目を認めなかったり、サカタザメ目をガンギエイ目の中に入れるなどしている。

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