魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

リュウキュウヨロイアジ

2017年11月29日 13時22分43秒 | 魚紹介

久しぶりにぶろぐを更新。今回の魚はスズキ目・アジ科・ヨロイアジ属のリュウキュウヨロイアジ。リュウキュウヨロイアジは、「琉球」という名前がついているが、日本では沖縄だけで見られる魚というわけでなく、相模湾以南の太平洋岸や日本海岸にも分布している。

この魚の特徴は眼の前が若干膨らんでいること。この特徴により近縁のヨロイアジと見分けることができる。ヨロイアジの頭部はもっとストレートな形状をしているので区別は容易である。なお、魚類学を少しかじっている方にはご存知かもしれないが、このリュウキュウヨロイアジをふくむ「ヨロイアジ属」の中には複数の属が含まれるとされており、再検討がすすめられている。確かにナンヨウカイワリやクロヒラアジなどの種類と本種はかなり違った見た目をしている。

リュウキュウヨロイアジにそっくりなものにヒシカイワリという魚がいる。ヒシカイワリは西太平洋に生息しており、日本では鹿児島県の笠沙からのみ見つかっていたようだが、最近長崎のたくじーさんに写真を見せて頂き、この熱帯性のアジ科魚類が長崎県周辺の海域にもいる可能性が高くなった(無効分散であろうが)。ただ日本で採集されているヒシカイワリは皆幼魚であり、口が大きく幼魚よりも体高低めの異様な姿の成魚はまだ採集されていないようだ。

リュウキュウヨロイアジとヒシカイワリの違いは顎の形状と、鰓耙の数である。リュウキュウヨロイアジとは下顎の形状が若干違っている。また鰓耙の数も異なり、「日本産魚類検索」によればリュウキュウヨロイアジの鰓耙数は上が6~11、下が14~17であるのに対し、ヒシカイワリの鰓耙数は上が23~29、下が51~61と極めて多い。なおヒシカイワリは幼魚や若魚では鰭が長くのびているが成魚では短くなってしまうようである。これはイトヒキアジなどと共通の特徴である。

左がリュウキュウヨロイアジ

アジ科の魚は刺身で美味しいことはよく知られている。しかし10年前にリュウキュウヨロイアジを食したときは「イマイチ」と感じられた。今回はどうか?

今回食したリュウキュウヨロイアジは刺身で美味であった。前回食べてイマイチだった個体は今回の個体よりもやや大きめであった。確証は一切ないのだが大きい魚ほど大味になってしまうのかもしれない。

今回の個体は前回のクロアジモドキ同様に出川公平さんに送っていただきました。ありがとうございました。

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クロアジモドキを食する

2017年11月13日 20時04分32秒 | 魚紹介

「アジ」といえば基本的に細い体つきで稜鱗をもつもの、と思っておられる方も多いでしょう。しかし世の中、そうでないアジの仲間もいるものです。このクロアジモドキは、アジ科の魚なのですが、体高が高く(もっとも、一般的なアジの仲間にも体高がたかいものもいますが)、稜鱗もないという魚です。この魚をおくっていただいたのは以前キタノホッケをおくっていただいた「丸集」出川公平さん。ありがとうございました!

クロアジモドキは南方系の味の仲間です。これまでに1回出会っているのですが、この個体を含め2回とも鹿児島県産。比Fishbaseによると南アフリカ~オーストラリアにまで分布しているようです。

幼魚には腹鰭もあるようなのですが、成魚では消失してしまっています。それだけでなく、アジ科の特徴の一つでもある臀鰭棘も皮下に埋没してしまっています。大きな背鰭と臀鰭が特徴で、まるでマナガツオの仲間のようです。実際クロアジモドキ属の学名Parastromateusというのは「側」という意味のParaと、マナガツオ科の一属の学名Stromateusを合わせた意味になるようです。そしてマナガツオの仲間のStromateusは幼魚はクラゲにつくのですが、このクロアジモドキも幼魚のうちはクラゲにつくのだそうです。Stromateus属は「ゴマシズ」と呼ばれる魚の仲間で、脂がよくのっており美味しいようですが、食べると下痢をするおそれがあるとのこと、当面販売自粛とされてしまっていたりします。マナガツオの仲間はサバ科やクロタチカマス科、シマガツオ科などと近縁という意見もありますが、アジ科との共通点もありそうです。

尾柄を背面から見たところです。尾柄の部分には稜鱗(ぜんご)らしいものはなく、尾柄が少し膨らんでいるくらいです。もっとも日本人がよく食するアジの中にも稜鱗がない種もいます。ブリやカンパチ、ヒラマサといったブリの仲間やコバンアジ、イケカツオなどがそれです。そういえば昨日、Facebookのお友達にすごいアジの仲間を見せて頂きましたが、まさに衝撃的でした。まさか、あの魚が九州の北部にいるとは。

今回のクロアジモドキはお刺身で食べました。身には臭みなどはなく、よく脂がのっておりそのままでも美味しくいただけました。半分はこのまま食べましたが、寒くなったので他一部はしゃぶしゃぶにしましたが、これもまた美味しいものでした。

出川公平さん、今回もありがとうございました!

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ミズテング

2017年11月04日 19時57分34秒 | 魚紹介

多忙につきぶろぐをなかなか更新できずにいました。すみません。

最近もまたすごい魚が我が家にやってきました。ミズテングという魚です。歯がびっしり並んだ怖い顔と、体の前半部には鱗がないなど、不気味でいかにも「深海魚」という雰囲気ではありますが、系統分類では釣り人や市場関係者におなじみの、ヒメ目・エソ科になります。

エソ科のHarpadon亜科(和名なし。直訳すれば「ミズテング亜科」か)・ミズテング属に含まれる魚で、大きいものでは体長70cmにもなる魚です。ミズテング属の魚は5種が知られ、日本で見られるのはほぼミズテングのみです。ミズテングは東京湾から鹿児島県までの太平洋岸、台湾、西太平洋に分布しています。

日本産のもう1種であるテナガミズテングという種は、黄海、中国沿岸、インド―西太平洋に広く分布していますが、日本では有明海で漁獲されたことがあるだけで、それも長江の氾濫に由来する迷魚としてです。なおHarpadon亜科は2属からなります。ミズテング科ともうひとつ、我々の食卓でもおなじみの練り製品の原料となるマエソ属の魚もこの亜科に含まれます。なお,もうひとつの亜科にはアカエソ属およびオキエソ属が含まれます。

ミズテングとテナガミズテングの見分けは難しいものではありません。ミズテングは胸鰭が非常に短く、腹鰭基部付近にまで達しません。一方のテナガミズテングは胸鰭が長く、腹鰭基部付近にまで達するのが特徴です。なお、残念ながらテナガミズテングの画像は持っておりません。各自ググられたし。

ミズテング属魚類の最大の特徴は鱗です。同じ亜科のマエソ属は体全体に鱗があるのですが、ミズテング属の魚は体の後半部に鱗が少しあるだけです。全体的にぶよぶよとした感じが特徴的です。ミズテングは冒頭に述べたように深海魚で、水深500~600mくらいの深さに生息しています。今回の個体は静岡県産で底曳網で漁獲されたもののようです。胃のところが大きく膨らんでおり、どんな魚が入っているのか期待しましたが、入っていたのはなんとも大きなマイワシでした。網をあげるときに入ってしまったのでしょうか。

ミズテングはその名前の通り,身が大変に水っぽい魚です。ということで、まずは水分を抜くために「一夜干し」。だいぶ水分が抜けたもの(写真)を、薄く塩をして焼いてみました。

ミズテングの塩焼きが完成しました。早速箸をすすめるのですが、非常にやわらかい骨、小骨が細長いのですが、身には意外と甘さもあり美味しくいただけました。なお、今回はTwitterのフォロワーであるISSCYさんに購入していただきました。ありがとうございました。

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