魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

ホソウケグチヒイラギ

2017年02月04日 22時07分45秒 | 魚紹介

昨日は節分でした。節分で魚といえば、ヒイラギの枝に「イワシ」の頭を刺した「ヒイラギイワシ」が知られている。もちろんこの「ヒイラギ」というのは植物のヒイラギであり、魚のヒイラギではない。

そういえばスズキ目ヒイラギ科の魚はこのぶろぐではあまり取り上げてこなかった。ヒイラギ、ヒメヒイラギ、オキヒイラギの3種は取り上げてきた。日本には13種もいるが、ヒイラギ属のヒイラギ、イトヒキヒイラギ属の2種をのぞき、多くの種が熱帯・亜熱帯海域に生息し、沖縄や鹿児島方面まで行かないとみることができない種も多いのだ。ちなみに私は自慢ではないが、この科の魚の多くの種を見ている。いまだに見たことがないのはヒシコバンヒイラギ、オオメコバンヒイラギ、ヤンバルウケグチヒイラギ、キビレヒイラギの4種だ。

もう6年近く前のことだが、2月にヒイラギを購入した時、パックの中に衝撃的な魚が入っていた。ヒイラギ科ウケグチヒイラギ属のホソウケグチヒイラギである。

ウケグチヒイラギ属の魚は口が特徴的。日本に生息する14種のヒイラギ科魚類のうち多くの種が口を前下方、もしくは前方に伸出させられるが、このウケグチヒイラギ属の2種のみ、口を前上方に突出させることができる。この特徴的な口がヒイラギの中でちょっと出ていたので、これはもしや...と思い持ち帰ってみたところ、まさしくホソウケグチヒイラギであった。

ちなみにこのヒイラギが山ほど入っていたパックには「メッキアジ(カイワリ)」と書かれている。メッキアジは普通ギンガメアジやカスミアジなど、ギンガメアジ属魚類の子を指すのだが、底曳網魚類でメッキアジといったら、カイワリのことである。もっともそれでもカイワリとヒイラギでは属どころか科さえ異なるのだが。写真ではわかりにくいが、一番右上の子がホソウケグチヒイラギである。

ウケグチヒイラギ属は南アフリカから中央太平洋までの海域に分布し7種が知られている。日本産は2種。もう1種、沖縄島や西太平洋域に生息するヤンバルウケグチヒイラギは頬の部分に鱗があることにより本種と区別することができる。体高も同定の形質に使えるかと思ったが、実際は成長段階で体高と体長の比率はかわるようだ。またヤンバルウケグチヒイラギの体側背部の横帯は10本ほどなのに対し、ホソウケグチヒイラギのそれはもっと多いようだ。

ホソウケグチヒイラギは2008年に鹿児島県産の標本をもとに日本初記録種として報告された。このほかに高知県からも記録があり、長崎県でも獲れた。鹿児島県では本種がそれなりに獲れるようで、大隅半島のほうではよく見られるらしい。今回の個体はフォルマリンで展鰭をしたので残念ながら食べることはできなかったが、鹿児島方面では食用にされることもあるようだ。

 

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フィリピンスズメダイ

2017年02月02日 23時31分56秒 | 魚紹介

昨日から2月です。

写真の魚はフィリピンスズメダイ。スズキ目・スズメダイ科・ソラスズメダイ属の魚。ソラスズメダイの仲間はサンゴ礁に生息する魚で、インド—中央太平洋に広く生息し、アメリカ西海岸や大西洋には生息しない。「フィリピン」と名前についていてフィリピン固有種のようにも思えるが、本種はインド洋のモルディブからフィジーまでの海域に生息し、日本でも琉球列島に生息している。

体は黒っぽいが尾鰭の黄色が鮮やかで、背鰭や臀鰭にも黄色があるが、これらは老成魚では消失するよう。老成個体でも薄ら黄色か、白くのこることもある。幼魚の鰭の黄色は極めて目立つ。スズメダイの仲間は成魚よりも幼魚のほうが美しいことが多く、本種もその例の一つといえよう。Fishbaseではインド洋のモルディブの個体の写真が掲載されているが、インド洋のものは太平洋のものよりも何となくだが、黄色が鮮やかなように見える。インド洋のニシキヤッコだって黄色が強い。

標本でフィリピンスズメダイをほかのソラスズメダイ属と見分けるのはあまり難しくない。本種がほかの日本産のソラスズメダイ属のほか多くの種とちがうところは、眼下骨に鱗が並ぶこと。この特徴をもつソラスズメダイ属は日本で2種しかいないとされる。もう1種のアサドスズメダイは薄い灰色の体で、背鰭と尾鰭の付け根が少し黄色くなる。

フィリピンスズメダイの胸鰭基部にある大きな黒色斑は明瞭で他種と間違えることは少ないといえよう。アサドスズメダイはフィリピンスズメダイの胸鰭基部にある大きな黒色斑がなく、胸鰭基部上方に小さい黒色斑がある程度である。アサドスズメダイも琉球列島のサンゴ礁で見られる種であるが、あまり釣れた話は聞かない。ただ一度だけ奄美大島で釣れたのをいただいてきたことがある。それくらいだ。

肛門から内臓が少し出てしまっている。水深数mほどのサンゴ礁域に生息し、あまり深場に生息する種ではない。Fishbaseに掲載されている本種の生息水深は1~12mほどである。今回の個体は以前ご紹介ししましたルリスズメダイ同様、鹿児島県の喜界島で釣れたもの。喜界島の「がほー部長」さんに送っていただきました。いつもありがとうございます。

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