魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

トゲスミクイウオ

2022年10月31日 16時32分52秒 | 魚紹介

今日も昨日に続いてクシスミクイウオ科の魚をご紹介。スズキ目・クシスミクイウオ科・トゲスミクイウオ属のトゲスミクイウオ。昨日のは「トゲクシスミクイウオ」であるが、今日のは名前に「クシ」がないのが異なるところである。

トゲスミクイウオは全長10cmもない小型種のようである。耳石もバケスミクイウオやスミクイウオなどのスミクイウオ類(ホタルジャコ科のスミクイウオ亜科、またはスミクイウオ科)よりもかなり小さく取りにくかったため、個体を残すことはできなかった。腹鰭は1棘5軟条なのであるが、うまく広がっていない。

このトゲスミクイウオ属と、クシスミクイウオ属との違いは下鰓蓋骨に棘が2本あること、前鰓蓋骨に明瞭な小棘があること。ただし写真では下鰓蓋骨の2本ある棘が見えにくい(左下のほうにわずかに見える)。また鱗がクシスミクイウオ属のものよりも幾分はがれやすいのも特徴といえるだろう。確かに昨日このぶろぐでも紹介したトゲクシスミクイウオのようなしっかりした鱗ではないような気もする。

ちなみにトゲスミクイウオ属は2種いるようだが、日本産は本種のみ。分布域は広く、日本では房総沖~土佐湾、沖ノ鳥島、東シナ海。三大洋の熱帯・亜熱帯域にいるようであるが、分布していない海域もあるよう。また、広域分布種といえ複数種が含まれているかもしれない。ちなみに本種のタイプ標本はバハマ諸島産で、インドー太平洋産のものと大西洋産のものが別種とされれば、おそらく日本産のものは別の学名がつくのではなかろうかと思う。またもう1種、南西太平洋にすむとされるもう1種との関係も再検討の余地があるだろう。

このトゲスミクイウオも深海性で底曳網で水深100m以深の場所から漁獲されるが、もっと深い場所に多いと思われる。あまり数は多くないらしく「ヘンテコ深海魚便」でもやや珍しいものとされているようである。スミクイウオは戸田でも「クロムツ」(標準和名クロムツとは異なる)と称されているようで、食用になっているが、本種については食用にする話はほとんど聞かない。今回の個体は先述のように沼津市戸田「ヘンテコ深海魚便」青山沙織さんより。いつもありがとうございます。

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トゲクシスミクイウオ

2022年10月30日 23時12分40秒 | 魚紹介

今日は10年くらい前にいただいた魚をご紹介。スズキ目・クシスミクイウオ科・クシスミクイウオ属のトゲクシスミクイウオ。

トゲクシスミクイウオを含むクシスミクイウオ科の魚がこの「魚のぶろぐ」に登場するのは今回が初めてである。この個体については以前記事にしたものとおもっていたのだが、実際にはしていなかったようである。ちなみに名前に「スミクイウオ」とあるのだが、スミクイウオ(ホタルジャコ科スミクイウオ亜科、またはスミクイウオ科)とは関係がないようである。

トゲクシスミクイウオは青森県から土佐湾までの太平洋岸、東シナ海、九州-パラオ海嶺、ハワイ諸島などに分布し、この個体は東北地方太平洋岸沖産の個体。水深500mくらいの深さの場所に生息している。そのくらいの深さに対応できるようにか、体の色はスミを塗ったように真っ黒である。発光する生物を食しても、光が漏れて自らがより大きな生き物に狙われるリスクは減るだろう。鱗ははがれにくく、より浅い場所で漁獲されても鱗がはがれていることが多いスミクイウオとことなり、底曳網によって漁獲され、船上にあげられても鱗がびっしり。鱗には小棘があり、ざらっとしている。

クシスミクイウオ科は2属、9種あまりが知られている。そのうちクシスミクイウオ属の魚は7種。日本にはトゲクシスミクイウオ、ナミトゲスミクイウオ、クシスミクイウオの3種類が知られているが、いずれも深海性のようである。ナミトゲスミクイウオは昼間は1500~2700mくらいの深さで群れているというが、夜間にはそれよりも浅い場所で獲れるらしい。ほかの種も同様に浅いところから深いところまで、餌を追いかけ移動しているのかもしれない。

トゲクシスミクイウオはほかの日本産クシスミクイウオ属の2種と比べると、側線有孔鱗数が33~39であること、下鰓蓋に1本ある棘はほかの2種と比べて強いことなどにより見分けることができる。一方日本に生息するクシスミクイウオ科のもうひとつのグループであるトゲスミクイウオ属のトゲスミクイウオでは、側線有孔鱗数が27~32とやや少なく、下鰓蓋骨には2本の棘がある、鱗がはがれやすいなどの特徴が異なっている。クシスミクイウオ科の魚は、「ヘンテコ深海魚便」のおかげでまだ出会う機会があるといえるが、漁獲される数は少なく珍しい部類に入る。そのため食用にされるという話もほとんど聞かない。

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ハラビロカマキリ

2022年10月29日 15時34分48秒 | 昆虫・クモ

もう10月もおしまいに近くなりつつあり。昨日は夜の外出の際ついにコートを出してしまった。今朝久しぶりに庭で見たハラビロカマキリ。カマキリの大きめの個体の出現は秋の終わりを感じさせるものである。

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マメハダカ

2022年10月28日 11時18分44秒 | 魚紹介

今日は久しぶりの魚。ハダカイワシ目・ハダカイワシ科・トミハダカ属のマメハダカ。2017年の早春以来の登場である。

以前本種を紹介した時に「トミハダカ属の魚は日本近海に11種ほどが知られているが、なぜか私はこのマメハダカしか出会ったことがない」と書いた。残念ながら今でも、まだこの属の魚はマメハダカしか見たことがない。ただし、トンガリハダカ属をトミハダカ属のなかに含める考えがある。私はトンガリハダカ属のミカドハダカにも今年出会っている。

マメハダカはトミハダカに似ているが、前部臀鰭発光器(AOa)の2番目のものと3番目のものがほかのAOaよりも高い位置にあることで見分けられる。トミハダカではAOaの2番目と3番目はほかのAOaと同じくらいの高さにある。似た特徴を有するものに、ホソマメハダカという種がいるが、ホソマメハダカは体が細長いので本種と見分けられる。また背鰭および胸鰭の軟条数にも違いはあるがこれらの数値はどちらもかぶることがあるので注意しなければならない。しかしこの個体は冷凍されていないので、発光器が青く光り輝き美しい。

マメハダカの分布域は案外広く、北海道から土佐湾までの太平洋岸、北太平洋に見られ、北太平洋の東側でもアラスカ州からカリフォルニアまで姿が見られるという。マメハダカには2010年も出会っているのだが、そのときは東北地方太平洋岸沖の個体であった。今回は駿河湾戸田を基地とする底曳網船団の「ヘンテコ深海魚便」の中に入っていたものである。北方性というわけでなく、温帯から亜寒帯まで広く生息する種といえるだろう。なおハダカイワシのほかの仲間がそうであるように、本種も昼間は深い海にいるが夜間は浅瀬に上がってくる。湾内であっても駿河湾は水深数1000mほどの場所もあるので生息できるようだ。おそらくプランクトンやサクラエビなど小型の甲殻類、稚魚などを捕食しているのだと思われる。

ハダカイワシ科の魚は高知県などではそこそこ重要な食用魚とされている。干して焼くのが一般的とされるが、今回はほかにも何種か魚がいたので、唐揚げにして食べた。ほかにもソコダラ類などを一緒に揚げて食したが、このマメハダカが最も美味だったようにおもう。

今回のマメハダカは「ヘンテコ深海魚便」青山沙織さんより。いつもありがとうございます。

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タマギンポ飼育1年

2022年10月27日 15時12分55秒 | 魚介類飼育(海水)

最近は今年採集してきた魚の紹介が続いたので、今日は昨年採集してきた魚のご紹介。写真の魚は昨年の10月に高知県の磯で採集してきたタマギンポなのだが、このタマギンポも無事に我が家の水槽にやってきて1年たった。高知県の磯ではごくふつうに見られるタネギンポに似ているが、頭部に青白い斑点があるのが特徴。高知の海ではタネギンポは大量に見てきたが、タマギンポと同定できる個体の採集は後にも先にもこの1匹のみ。

採集してきた時よりも大きくなり、頭部や体に青白い斑点が目立ち美しい。胸鰭の同様の斑点も採集したときよりも目立っている。頭部正中線に皮弁があるが、雄としてよいだろうか。眼上の皮弁の形もカエルウオより複雑な形をしている。

性格はきつすぎず弱すぎず。水槽掃除の際一時的にこの水槽にいれた、自分よりも大きなタネギンポともうまくやっていた。一方センカエルウオはこれに耐えられず、弱って餌を食べなくなり、死んでしまった。ほかシマギンポや、今年採集したカエルウオなどと飼育しているが、これらの種とは特に問題ない。センカエルウオが臆病すぎるのかもしれない。多くの魚と飼育できると思われるが、肉食性の強い魚や、形が似ているメギス、あるいは気が強いスズメダイやゴンベの仲間との混泳は避けたほうがよいかもしれない。また何かに驚くとすぐジャンプして逃げようとするので、飼育にはフタ、それも隙間をしっかりうめたものが必須となる。

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