魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

ヤギミシマ

2023年05月31日 15時45分47秒 | 魚紹介

この間ナガタチカマスと一緒に我が家にやってきた魚の一種。ミシマオコゼ科・ミシマオコゼ属のヤギミシマ。先月もミシマオコゼとアオミシマが錦江湾から我が家にやってきたのだが、今回は愛知県の港から我が家へ。ヤギミシマ自体は2020年に長崎県で漁獲されたものを食しているのだが、そのときはあまりいい写真が撮れておらず、2009年5月以来、14年ぶりに私のぶろぐにヤギミシマが登場することになった。

ヤギミシマはミシマオコゼ属の魚であるが、ミシマオコゼと異なり背中の明瞭な白い点がなく、細かいの斑点が無数に散らばっているのが特徴。ほかに細かい斑点が散らばる種としてはアオミシマもいるが、アオミシマは背鰭が1基しかないことにより見分けられる。またメガネウオも白い点がないが黒い鞍状斑があるため、これがないヤギミシマとの見分けは容易といえる。

分布域は主に紀伊半島以南の太平洋岸、長崎近海。海外では朝鮮半島、台湾、中国沿岸、南シナ海である。生息水深はミシマオコゼよりは深いがそれでも150~400mほどであり、土佐湾では底曳網で多量に漁獲されることがある。

ヤギミシマの体側鱗

カスリミシマの体側鱗は明瞭な列をなさない

前にこの「魚のぶろぐ」ではカスリミシマをご紹介していた。ヤギミシマとカスリミシマは似ているが、ヤギミシマは体側に細い鱗の列があるのに対し、カスリミシマにはそれがなく明瞭な列をなさない。カスリミシマは以前はカスリミシマ属という独自属にされていたが、近年はミシマオコゼ属とされるなどしている。

ヤギミシマもほかのミシマオコゼ科魚類同様に食用となる。前回2009年も刺身で食したのだが、当時は技術がなく厚く切っていた。しかし今では薄く切ったものを美味しく食することができるようになった。身はもちっとしているが味は薄いのでぽん酢などと合わせると美味しくなる。また肝も捨ててはいけない。ゆでてぶつ切りにした肝は絶品である。ほかミシマオコゼの仲間は唐揚げなどにしても美味しい。ミシマオコゼ科の魚は用途が広く味もいいため近年は以前よりは高価になったように思う(産地ではそれほどでもないのかもしれないが)。なお1匹でこれだけの身がとれる、ということはなく3匹分である。

今回のヤギミシマもナガタチカマスと同様に愛知県の項明水産 鈴木項太さんより。いつも、ありがとうございます!

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ナガタチカマス

2023年05月30日 19時22分02秒 | 魚紹介

先日、愛知県の鈴木さんからすごい魚を入手。クロタチカマス科のナガタチカマスである。

以前八幡浜「昭和水産」宮本さんの「海幸丸」に乗せて頂いたときには全長1mクラスのものが漁獲されていて格好良かった。今回の個体は残念ながらメーターにはわずかに届かなかったのだがそれでも全長90cmを超える大物であり格好いい。

口は大きく強い歯を備える。このことからもわかるように肉食性が強く、獰猛な深海のハンターなのである。今回の個体は底曳網で漁獲されたものだと思うのだが、胃の中には何も入っていなかった。一緒に漁獲された生物を考えると、本種が漁獲されたのは水深100mくらいであまり深い水深ではないように思う。

ナガタチカマスの腹鰭

クロシビカマスの腹鰭(痕跡的)

ナガタチカマスの特徴は大きな腹鰭である。この大きさの腹鰭で大きいというのはおかしい、と思う人がいるかもしれないのだが、よく似た種では腹鰭がないのもいる。たとえばクロシビカマスの腹鰭は非常に小さかったり、ほぼなかったりする。一方ナガタチカマスとか、近縁のバラクータなどは小さいが明瞭な腹鰭を持っているようだ。バラクータは英語でSnoekというが、このナガタチカマスはBlack snoekと呼ばれている。バラクータの分布域は南半球に限られるが、ナガタチカマスは日本近海からインドー西太平洋に広く生息している。バラクータは日本においては見られないが、かつては食用として輸入されていたことがある。「おきさわら」という名前で売っていたようだが、現在もこの名称での販売が可能かどうかは不明である。バラクータとよく似た種小名をもつオニカマスSphyraena barracudaは販売が禁止されているので注意。

ナガタチカマスなどクロタチカマス科魚類はどうしても小骨が多い。しかし身は脂がよく乗っていて食べると極めて美味。今回は刺身で食したが中骨は煮つけ。これも美味しかった。クロタチカマス科の魚を食べたのは昨年トウヨウカマスを食べたのが久しぶりでそれ以前はカゴカマスを食べたものの、大型種を食したのは2016年にクロシビカマスを食べて以来である。

今回のナガタチカマスは愛知県の項明水産 鈴木項太さんより。今年になってから魚類を購入させていただいているのだが、もう3回目になる。いつもありがとうございます、今後ともよろしくお願いいたします。

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ぶろぐ17周年

2023年05月28日 20時24分18秒 | 魚介類飼育(海水)

今日は5月28日、2006年にぶろぐを開設してからもう17年になります。早い!

さて、最近の水槽。4月に採集してきたナンヨウミドリハゼもグリーンメタリックのいい色がでてきている。もっとも底に茶色や赤のコケが出てきてしまってこの色になっているのかもしれないけれど。ほかにこの水槽にはナメラハゼや我が家にやってきて1年になる古参のカタボシオオモンハゼ、ナンヨウミドリハゼと同じ属のミナミイソハゼなんかもいたりしてちょっと過密気味、少し別水槽に移したい。餌はおもにメガバイトレッド、海藻70、コペポーダ。ただし海藻70とコペポーダは同居魚のために入れているという側面がある。単食はよくないが生餌は水を汚しやすいので注意しなければならない。

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ツマグロアナゴ

2023年05月24日 02時17分48秒 | 魚紹介

このアナゴはツマグロアナゴという。前回ご紹介したアイアナゴと近縁な種ではあるのだが、アイアナゴよりはどこか優しい顔をしている(ような気がする)。

ツマグロアナゴもやはり中深海~深海に生息するアナゴの一種で、この個体も水深200mほどの海底をひく、とんとこ漁で漁獲された「うんまか深海魚」のひとつ。分類学的にはアナゴ科・クロアナゴ亜科・ツマグロアナゴ属で、アイアナゴ属のアイアナゴとは別属であるが、アイアナゴとよく似ている。ツマグロアナゴ属の魚は三大洋から20種ほどが知られ、日本にはそのうちの2種が知られているがBathycongrus melanostomusなど、台湾近辺やベトナムなどに生息する種が近年新種されていたりして、それらが日本近海にまで分布を広げている可能性も高い。そのため日本産のこの属の魚も今後再検討が必要といえるだろう。

ツマグロアナゴの上顎

アイアナゴの上顎

ツマグロアナゴとアイアナゴの見分けは外見からはなかなか難しいが、主に口腔内の鋤骨歯を見るとよい。ツマグロアナゴは鋤骨歯の歯列が短いが、アイアナゴでは細長く1列であることにより見分けられる。ミナミアナゴやキツネアナゴなどにも似ているが、本種では歯が大きいことによって見分けることができる。またツマグロアナゴでは背鰭・臀鰭の後方縁辺が黒っぽくなるというのが特徴で名前の由来にもなっているが、アイアナゴでも薄く黒っぽくなっていたりするのであまり有効な見分け方とはならないようである。日本産のツマグロアナゴ属のもう1種、ニセツマグロアナゴとは肛門前の側線孔の数で見分けられる。本種はやや少なくその数は30~38であり、40~44のニセツマグロアナゴと見分けることが可能だが、見慣れていないと難しい。

「魚類検索」では本種の生息水深は296~304mで漁獲されている、という。しかし本種はより浅い水深200mほどの海底で漁獲された。おそらくアイアナゴと同様にあまり漁獲されることがなくほかのアナゴ科魚類と混同されやすく情報があまりそろっていなかったのかもしれない。分布域は茨城県の鹿島灘~鹿児島県南部に至り、海外でも朝鮮半島から西太平洋、オーストラリアにまでその分布域が及ぶとされる。ただ一部は再検討の余地があるだろう。この種もアイアナゴと同じく唐揚げや煮アナゴで美味であった。アイアナゴと一緒に調理したもので、写真もアイアナゴのときの使いまわし。鹿児島市場 田中水産 田中積さん、いつもありがとうございます。

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アイアナゴ

2023年05月17日 02時23分51秒 | 魚紹介

先月鹿児島からやってきた「うんまか深海魚」の一種のご紹介。ウナギ目・アナゴ科・アイアナゴ属のアイアナゴ。アイアナゴ属の種類は何種かいるようだが、日本では1属1種である。アナゴの仲間で食用種といえばマアナゴやクロアナゴ、ゴテンアナゴといった浅海種が多いが、深海の種類も食用にされるものが多数いる。アイアナゴもその一員といえる。

深海性のアナゴの仲間は浅海のものと若干キャラクタが異なる。ニセギンアナゴやキツネアナゴ、ツマグロアナゴ、以前このぶろぐでもご紹介したミナミアナゴといった種が含まれている。いずれも見た目がよく似ていて難しいという人もいるかもしれない。

アイアナゴの上顎

そのようなときは口腔内を見ればよいだろう。ミナミアナゴなどは口腔内の歯は歯帯をなすがアイアナゴやツマグロアナゴといった種は歯帯を形成する。そしてアイアナゴの鋤骨歯は一列で大きいことでツマグロアナゴ属の種と見分けることができる。オキアナゴもこれらのアナゴ同様深海性の種であるが、オキアナゴの場合尾部に大きな黒色斑がありよく目立っている。

どちらもアイアナゴ

アイアナゴの体色は金色っぽく美しい色ではあるが、もしかしたら生きているときと色彩は異なるのかもしれない。オキアナゴは釣りあげられてすぐのときは体が茶褐色であるが、釣りあげてしばらくすると色が薄くなった(腹面が白っぽい)。同じく深海性のアイアナゴも漁獲されてすぐのときはこの写真とは色彩が若干違っている可能性はある。アイアナゴは「魚類検索」第三版では水深750~760mの深さに生息するように書かれているが実際にはもっと浅い海にもいると思う。この個体は鹿児島県錦江湾の小型底曳網漁業、いわゆる「とんとこ漁」で、水深200mほどの場所で採集されている。一方でFishbaseでは18~760mとされている。生息水深が相当に広い種といえるのかもしれない。分布域は駿河湾以南の太平洋岸、東シナ海、インドー西太平洋の深海である。

今回は唐揚げと煮アナゴで食してみた。唐揚げは田中積さんに教えていただいたもの。揚げたては美味しい、一方ひと晩するとイマイチな感じ。今度は鹿児島で食べたい。残りは煮アナゴで食したがこれはかなり美味しかった。なお、このアナゴの唐揚げだが実はアイアナゴのほかにもう1種また別のアナゴ科魚類が混ざっている。鹿児島市 田中水産 田中積さんいつもありがとうございます。

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