魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

サラシヒメスミクイウオ

2022年04月30日 11時35分10秒 | 魚紹介

恒例になっているのかわからないけれど今回も登場するのはスミクイウオの仲間。今回の魚はサラシヒメスミクイウオ。ホタルジャコ科・スミクイウオ亜科、もしくはスミクイウオ科、ヒメスミクイウオ属の魚である。サラシヒメスミクイウオも近年(2017年)に新種記載されているものである。近年この仲間で再検討が行われたようだ。

サラシヒメスミクイウオの特徴はいくつかあるが、その大きな特徴は体側の背方と腹方で色が大きく異なっていることである。また第1背鰭第2棘や、第2背鰭棘、臀鰭棘がなめらかであるのも特徴らしい。臀鰭棘は2本で、3本あるバケスミクイウオと区別することができるが、そのバケスミクイウオも、幼魚のうちは臀鰭棘が2本あるとされるので、間違えられることもあるかもしれない。なお標準和名のサラシというのは腹部にまく「さらし」のことだという。分布域は土佐湾と日向灘のやや深海であるが、静岡県からもサラシヒメスミクイウオと思われる耳石化石が発見されている。

サラシヒメスミクイウオを食してみた。以前のオリーブヒメスミクイウオと同様に非常に小さい。そのためうまみなどはあまり感じられなかったが、やはり美味しくいただくことができた。今回の個体もオリーブヒメスミクイウオと同様、「深海魚ハンター」さんに送っていただいたもの。いつもありがとうございます。

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ヒメキチジ

2022年04月29日 23時09分12秒 | 魚紹介

以前このぶろぐではヨロイヒメキチジを紹介していたが、近縁種であり「元祖」であるはずのヒメキチジも紹介しておかなければならない。

ヒメキチジはヨロイヒメキチジに似ているが、二つの特徴でヨロイヒメキチジと見分けることができるとされる。まずは頭頂棘の長さである。これはヨロイヒメキチジでは長いが、ヒメキチジでは短く、ほとんど目立たない。サイズにより若干の違いはあるようだが、頭頂棘については小型個体でも有効な形質だという。

もうひとつは尾鰭の色彩である。ヨロイヒメキチジは尾鰭に赤い線が入り、縁辺部は白いが、ヒメキチジは尾鰭は幅広く、赤く縁どられる(鮮度が悪くなると薄れてしまうので注意が必要)。

ヒメキチジの学名は従来Plectrogenium nanumとされてきたが、分類学的再検討が行われた結果、この学名を持つ種はハワイ諸島にのみ生息することが明らかになっている。その後日本産の本種はP.nanumとされてきつづけたため、2021年に新種記載され、ヒメキチジにはPlectrogenium rubricaudaという学名がついた。尾鰭が赤いところから名付けられたようだ。日本にはほかにパラオヒメキチジという種がいるが、これは九州-パラオ海嶺にのみ生息しているらしく、なかなかお目にかかる機会はないであろう。

分布域は駿河湾~日向灘、海外では台湾に生息する。ヒメキチジをGoogleの画像検索で調べると、ヒットする画像はほとんどがヨロイヒメキチジである。そのためヨロイヒメキチジと比べるとまれな種であるのだと思われる。いずれにせよ深海性で、水深300mくらいの海底から底曳網などにより漁獲される。美しい色彩なので、観賞魚としての需要もありそうだが、飼育できるコンディションの個体を入手するのはほとんど無理なのだろう。水族館でも生きている様子は見たことがない。

今回はヒメキチジは唐揚げにして食した。小さいけどこの仲間はフサカサゴ科に近いらしく、実際に以前はフサカサゴ科とされていたようだ。だから頭部には鋭い棘がある。そのため(いや、それだけのためではないけれど)、頭はあらかじめ落としてある。小さいが味はよい。実際古い本でも「食用にはしない」と書かれておらず「練製品原料」と書かれているのだ。しかしそれにしても小さい。3cmあるかないかというところか。

この個体もヨロイヒメキチジ同様「深海魚ハンター」さんからいただいたもの。ありがとうございます。

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ムグラヒゲ

2022年04月28日 00時46分29秒 | 魚紹介

ひさしぶりに「ヘンテコ深海魚便」でやってきた魚のご紹介。タラ目・ソコダラ科・トウジン属のムグラヒゲ。

ムグラヒゲはトウジン属の魚であるが、吻はトウジンなどのように長くのびていない。しかししっかり隆起しており、トウジン属の特徴をもっている。

胸鰭の上方には明瞭な黒色斑があるのも本種の特徴。このほか日本近海でこのような特徴を有するものにはキュウシュウヒゲが知られているが、キュウシュウヒゲの黒色斑はもっと不明瞭なようである。また体側には薄い横帯が入るが、この横帯は不明瞭であり、種の同定には使うことができないだろう。ムグラヒゲはトウジン属としては比較的小型種で、大きくなっても全長25cmほどであると思われる。なおキュウシュウヒゲとは腹面の発光器と腹鰭起部の位置関係によっても見分けることができる。発光器と鰭の位置関係、発光器の形状などはソコダラ科の重要な同定形質になるため、ソコダラ科を同定するのであれば、ちゃんと腹面も撮影しなければならない。腹部の写真はまた今度。

体側鱗には小さな棘があるが、トウジンなどのように鋭くて引っかかるような感じではない。この体側鱗の棘の様子もソコダラ科、とくにトウジン属の魚では重要な同定形質になりうるので「魚類検索」片手にしっかりと見ておく必要があるだろう。

本州~四国の太平洋岸では普通種とされる。国外では台湾から知られている。しかし私は今回のヘンテコ深海魚便で初めて見たソコダラである。ムグラヒゲは深海魚としてはやや浅い、水深200~300mほどの場所からおもに底曳網などで漁獲される。小型種であまり食用にはなっていないが、小型のソコダラの仲間は1尾丸ごと唐揚げにすると美味だし、ある程度大きくなったら塩焼きでも美味しい。より大きくなるトウジンなどの種類ではより用途が広くなる。焼き物や唐揚げももちろんうまいのだが、刺身や鍋は絶品である。もちろん肝も入れておくのも忘れないようにしなければならない。

今回のムグラヒゲは「ヘンテコ深海魚便」青山沙織さんより。いつもありがとうございます。ヘンテコ深海魚便、シーズンももう終盤となっております(5/15くらいまで)。みなさんもぜひ購入してみてください!

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水槽掃除

2022年04月27日 19時04分56秒 | 魚介類飼育(海水)

我が家の90cm水槽。その大規模な掃除を久々に行った。魚は皆元気そうでよかった(水が一瞬白濁していたが、その後徐々に元に戻っていった)。この水槽でもっとも古株なのはクマノミとタネギンポ。いずれも2018年に採集したもので、今年の10月で4年目になる。ほかのメンバーはカクレクマノミが2019年4月から、イエローリップダムゼルが2018年12月から、セグロマツカサが2019年6月から、クロヤハズハゼが2019年8月から、コガシラベラも同じく2019年8月から、タルボッツダムゼルが2020年3月から。一番新しいカスリイシモチが2021年10月から。結構歯が鋭く、小型のスズメダイや、夜間岩陰で休息するタイプのベラなどは入れることができなくなった。

最近のライブシーソルトは溶かしてすぐは白濁が続くような気がする。成分が変更されているためだろうか。カルシウムが強化されたとも聞く。やがて水は澄むのだが、知らないと慌ててしまうかも。

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トウヨウカマス

2022年04月26日 12時38分50秒 | 魚紹介

ながらく探していた魚が届いた。スズキ目クロタチカマス科のトウヨウカマスという種類である。

トウヨウカマスは入手を切望していた種類である。2010年に宮崎県土々呂沖の底曳網漁業により採集された個体を入手することができたのだが、そのときはうまく耳石をとることができなかったのだ。本種を含めクロタチカマス科の魚は耳石が特徴的な形状をしているものが多いのだが、欠けやすいので扱いには十分に注意しなければならない。これは本種だけでなく、サバの仲間などにも共通の特徴といえそうである。その後今年2022年3月にようやく入手することができたのだ。「たつろー」さん、ありがとうございます。

トウヨウカマス属は世界で3種ほどが知られているらしい。日本からインド‐太平洋に生息するトウヨウカマス、南西諸島などにすむエラブスミヤキ、そして西大西洋に生息するタチカマスである。ただしトウヨウカマスも形態などを精査すればより種が増えるのではないかと思っている。

トウヨウカマスの腹鰭。クロタチカマス科の魚には腹鰭がない、もしくは退化的なものが多いのだが、トウヨウカマスの腹鰭はそれらの種と比べしっかりしている。クロシビカマスやカゴカマスでは腹鰭は見られない。

トウヨウカマスの側線は鰓蓋上端部分で2本に分岐している。側線のうちの1本は背中を通り、背鰭軟条部の後方にまで達する。

側線のもう1本の分岐は腹の腹縁付近を通っている。この分岐も長くのび、臀鰭の後縁の後方にまで達している。しかしながら、体側の中央には側線がない。カゴカマス属とは腹鰭のほかにこの特徴も異なっているので間違えにくいだろう。この写真では腹鰭と胸鰭の両方が写っているが、腹鰭と胸鰭は同じくらいの大きさである。アオスミヤキとも腹鰭が胸鰭よりも明らかに長いので見分けることができる。今回の個体は日向灘だそうだが、銚子沖や戸田などでも見られるはず。しかし前の個体も宮崎産だったが、この地域では多いのだろうか。いずれにせよようやく耳石標本とすることができてうれしい。たつろーさんありがとうございます。

しかし、その数日後、ふたたびトウヨウカマスを入手する機会に恵まれた。

このトウヨウカマスも宮崎県産。見た目はたつろーさんからいただいた個体とあまり変わらない。背鰭棘の鰭膜は残念ながらぼろぼろであるが、底曳網で漁獲されるものであるので仕方がない。尾鰭の形状はこちらの個体のほうがしっかりとしている。鮮度はこちらのほうがよい。

なかなかよさそうなのが入手できたので、頭を落としたあと、塩焼きにして食べてみた。この仲間の小型個体はかなり骨がすさまじい入り方をしており食するのが難しいのであるが、このトウヨウカマスはそれほどではなくあまり気にならなかった。どうやらカゴカマスとは骨の付き方がだいぶ違うらしい。味もかなり脂がのっていて美味であった。この個体は「深海魚ハンター」さんから頂いた個体。ありがとうございました。

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