魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

カワムツ問題

2024年04月16日 09時06分05秒 | 環境問題

この間の採集ではカワムツの姿も目立った。いや、中層を泳ぐ魚で獲れたのはほぼこのカワムツであった。

カワムツといえば以前このぶろぐでも触れたことがあるが、自然分布は東海地方以西の本州、四国、九州、一部の島嶼である。つまりもともとは関東には生息していなかった魚である。しかしライバルが少ないからか勢力を伸ばしており、この間の採集ではほかの「ハヤ類」を採集することは叶わなかった。おそらく競合関係にあるアブラハヤやらウグイやらはそうとう数が減っているのかもしれない。杞憂であればいいのだが。

関東に本来いなかったカワムツがなぜ関東にいるのかというと、アユの放流に混ざってやってきたという可能性が高い。琵琶湖のアユの放流に混ざり、多くの種の淡水魚が関東の河川に見られるのが昨今である。茨城県や神奈川県ではハスが定着しているというし、ワタカやスゴモロコさえ見られるようになってしまった。九州ではギギがどこからかやってきてアリアケギバチと競合し、アリアケギバチの個体数が減っているという。これも放流によるものであると思われる。アユの放流の負の側面のひとつである。

茨城県産カワムツ

「国外からの外来魚ならともかくカワムツごときで椎名さん騒ぎすぎ」なんていう方もいるのかもしれない。しかしながらカワムツは餌や生息環境などがアブラハヤと競合する。つまり、アブラハヤに餌が行き渡りにくかったり、すみかをカワムツが奪ってしまったりする可能性がある。したがって、カワムツが大量に増えた河川というのは、ほかのハヤにすみにくい可能性がある。同所に生息している西日本の河川ではカワムツばかりたくさんいるわけでなく、アブラハヤやオイカワなどの似たニッチの魚が、それぞれ多過ぎず少なすぎず共存していたが、北関東の河川ではバランスが大きく崩れている場所が多いよう。今ならまだ、採集者が少しずつ駆除していけば間に合うかもしれない。

ここまで散々カワムツに文句を垂らしてきたが、悪いのは故意でないにしてもカワムツを放った人間。椎名さんも本来はカワムツ大好き人間である。ただ、好きだからこそ近くにいて欲しくないという気持ちもある。今回も何匹かお持ち帰り。一部はアリアケギバチの餌になった。また今度は西日本で在来のカワムツを採集したいものである(欲を言えばヌマムツも)。

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ここ数日間の環境問題

2024年04月03日 21時30分06秒 | 環境問題

新年度に入ったが、今日も大変なニュースが色々。加油臺灣!しかし、地震のほかにも様々な環境の問題があったので、解説していく。

●またもネコの不適切飼育

これだけ旧年度のニュースである。群馬県で飼育されていたコールダックがネコに捕食されたというものであり、飼い主がTwitter(Xと改名)でツィート(ポスト)した。このときコールダックは日光浴をしており、飼い主が少し目を離したときにおこった出来事であった。日光浴をしていた場所は道端や広場でなく、飼い主の庭だったようで、そこにネコが入って来たものである。4月2日にはネコがウサギの幼獣を咥えて持ってきたというツィートもあった。ネコは小型の哺乳類や鳥類のほか、昆虫や爬虫類などさまざまな生物捕食する肉食動物である。

コールダックを襲ったネコは飼い主がいたもので「ノネコ」「地域猫」ではなかった。高齢者だと、「昔ながらの」ネコの放し飼いをしているケースもあるという。しかし現在はネコは野外で放し飼いにすると、野生動物を襲うということがある。いや、野生動物だけでなく、日光浴中の生き物や、飼い主と庭で遊んでいる生物も。それにより絶滅の危機に瀕している生物も多数いる。だからみんな「ネコは屋内で飼育して」と言っているのである。また、屋内で飼育していると、天敵に襲われるリスクや、ほかのネコとの争い、寄生虫や病気を持ってくる心配がなく、健康で長生きする。屋外でネコを飼育していることを「不適切飼育」と声大きくし指摘していかなければならないだろう。トップ写真のネコはノネコで、飼育ネコと比べると不幸なように見える。

 

●ニジサクラの放流

またしても放流のニュース。今度は山形県の「ニジサクラ」。ニジサクラというのは山形県の内水面水産試験場が開発した「ご当地サーモン」のひとつで3倍体。その名前の由来は「ニジマス×サクラマス」からきているようである。どちらもサケ属であり、交雑個体ということになる。このニジサクラの増殖を行う公益財団法人「県水産振興協会」が河川に放流した。放流した理由は「出荷がキャンセルになり、そのままでは大きくなるため河川に放した」そうだ「。水産庁は生殖能力のない「3倍体個体の放流による生態系への影響が確認できなかった」ことから3倍体の放流を解禁しているという。

一応生殖能力はないとされるが、万一のことも考えられるし、寄生虫、病気など様々な問題も考えられる。この手のケースはほかにもあり、日本国内で外来魚を養殖していたものの、需要がなく養殖を放棄、残った個体を放流または逸脱してしまったというものはいくつかある。筆者は日本国内での外来魚の養殖には反対ではないし、実際に大きなものではニジマス、小さなものではコリドラスやベタ、グッピーなどのブリードもある。しかし結局外来魚の養殖というのは需要をしっかりつかむ必要があり、もし需要がないのであれば一切手を出すべきではないだろう。

しかし交雑しないだけでほかの魚を捕食することもあるため、水産庁の放流解禁は問題があっただろう。この間の岐阜県の「ニジマス」については民間業者だったからか大きく騒がれたが、今回は県や公益財団法人もかかわっているからか、騒ぎが少ないのが気になる。

※ただこれを報じた「山形新聞」については残念ながら全文は会員登録しないと閲覧できず、Yahoo!ニュースの山形放送のニュース動画などを参照にしているので、この記述は正確なものでないかもしれない。申し訳ない。

 

●希少淡水魚の生息地の開発

最後は某県。某県には希少種であり、「種の保存法 ()」の指定種で採集や飼育が禁止されている某淡水魚がいるのだが、その生息地で大きな浚渫が行われている。この種は今が産卵期であり、特異な産卵習性を有しているのだが、この浚渫の影響で大きなダメージを受けてしまったのは間違いないであろう。

そもそも「種の保存法()」においては、「飼育や採集は禁止」されているがその一方で、淡水魚生息地の開発・改変については「開発を差し止めることができる」旨述べられており、この法律が生物多様性保全にとってはほとんど何の意味も持っていないのは明らかである。であれば、そろそろこの法律自体見直さなければならないのであるが。

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外来魚食べて駆除、どのような考えで挑むべきかというお話

2024年03月31日 15時13分04秒 | 環境問題

今日は3月31日である。つまりはもう年度末である。今年度は海には4回ほど行った。ただし遠征ばかりであり、お金が厳しい。魚を購入することも昨年度ほど多くはなかった。

外来魚チャネルキャットフィッシュをつかった「なめパックン」。茨城県行方市、道の駅たまつくり

最近は外来魚を「食べて駆除」という話をよく聞くものである。近年は環境教育というものもあり、外来生物の学習などもある程度行われており、各地の高校などで外来魚をはじめとする外来生物の利用などについても語られるようになった。そこには「外来魚の積極的な利用」ということが語られる。ただし、現在日本にいる「外来魚」はその多くが「利用するために」日本に導入されたものであることを念頭に入れるべきだろう。

先月長良川の一件で話題となったニジマスなどはその例であろう。ニジマスは釣り堀などで釣るためのゲームフィッシュとして、あるいは食用として利用するために大量に養殖されている。その歴史は外来魚の代名詞ともなっているオオクチバスよりも長い。しかしながらその養殖場、もしくは釣り掘からの逸脱により野外に逃げ出し、あるいは漁協により放流が行われ、在来種に悪影響をおよぼしている現実がある。オオクチバスが今なおあちこちの河川、池沼に見られるのもゲームフィッシュとして(違法な)移植放流がなされているからにほかならない。これも「外来魚の利用」である。在来のメダカと似た生態系の地位をもち、仔魚を産むことで繁殖力が高いカダヤシも、ボウフラの駆除のために持ち込まれたものであり、これも「外来魚の利用」である。つまり、ひとくちに「外来魚の利用」といっても利用方法を誤るとかえって環境に悪影響を与えてしまう。外来魚の積極的な利用は、「食用にするため」のような致死的なものに限るようにすべきであり、「持続的・恒久的な継続」にならないようにするべきであろう。「SDGs」と絡めるのであれば、「短期間持続的に外来魚を積極的に利用し、かつ早いうちに根絶できるような利用法」ととらえるべきで、「外来魚の恒久的な利用法」にしないよう注意が必要だ。

なお、外来魚はほとんどが淡水魚であるため、食べて駆除というのは積極的にしにくい場合も考えられる汚濁が著しい場所の魚はよほど慣れている人でないと食するのに抵抗があるし、寄生虫の懸念もあるため生食は危険。魚類ではないが魚類同様水生の生物としては最近話題となった「じゃんぼたにし」ことスクミリンゴガイなどは卵に毒をもつという。「食べて駆除」はけっこうなことではあるが、事前に調べておかないと危ない場合がある。

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アユを増やすためにウグイを放流するのはどうかというお話

2024年03月27日 20時07分53秒 | 環境問題

アユ釣りの愛好家カモーン 太田川漁協、魅力向上へルアー解禁 おすすめポイント紹介も (中国新聞デジタル/リンク先はYahoo!ニュース)

またもや釣りのために問題が発覚したニュース。そしてまたもや放流関連のニュースである。広島市の太田川漁協がアユのルアー釣りを解禁するというニュースである。それだけならまだよい話かもしれないのだが、このニュースには「ウラ」というものがある。実はこのアユ解禁に先立ち、漁協がウグイを放流していたのだという。これはアユの捕食する珪藻を水生昆虫が食べてしまうというもので、水生昆虫に食べられる前にウグイを放って昆虫を食べてもらおうというものである。

ウグイは確かに水生昆虫を捕食するのかもしれないが、小魚も食べてしまう。太田川漁協はウェブログを持っており、当然ながらウグイを太田川の支流に放流している様子もしっかり公開されている(https://blog.goo.ne.jp/gyororin/e/95538682c2591645bca815eb66e53f7f)。放流しているウグイはかなり大きいサイズのように見えた。もしかすると昆虫のほかアユの稚魚なども捕食してしまう可能性があるかもしれず、放流は意味ないのかもしれない。(もっともこれについてはウグイがどれくらい魚を捕食するかというエビデンスは勉強不足からか見つけられなかったし、アユの成魚を放流するらしいからまた別の問題となるのだが)。しかもこのウグイのもとは琵琶湖産のものであるという。ウグイの系群については不明であるが、アユと同じく国内で様々な群があるように思われ、むやみな放流は交雑問題やそれによる不稔、系群の特性などが奪われてしまう危険性がある。さらにいえば琵琶湖のハスやらワタカやらイチモンジタナゴといった魚はアユの放流により各地で見られるようになったし、外来の珪藻やプランクトンの増加という懸念も大きい。

条件付き特定外来生物のアメリカザリガニ

現在はもはや生物を野外に放つということは、生物多様性保全の観点から受け入れられない世の中となった。近年も山梨県の荒川でのコイ放流のニュース(2018年)、犬鳴山納涼カーニバルのキンギョ問題(2017、2023年)、三重県のEM菌とコイの放流(2022年)、山形県酒田市でのイベントでアメリカザリガニ・カラドジョウの放流(2022年)、おさかなポストのコイ放流(2016年)、岐阜県の河川を区切った釣り堀からのニジマス逸脱(2024年)など、放流を好意的に報じるマスメディアが拡散し大きなニュースになることが多い。そしてこれらの放流された生物はいずれも環境に悪影響を及ぼしかねない生物であることはよく知られている。そしてこれは昭和の時代でも、一部のものを除いて平成でもなく、令和の時代のものであり、とくに最後のニジマスの件など1か月くらいしか経っていないように思う。

生物の放流は平成の世の中に置き去りにされるべきであった。しかもそれを個人や小さな規模の団体がやるのならまだしも、漁協という、生物多様性というもののなかで生きながらえている団体が放流しているのだから、この問題がいかに深刻であるか考えていかねばならない。そして団体だけでなく釣り人も、いよいよ「本当にこれでよかったのか」と考えるべきだろう。「アユのルアー釣り解禁!」あるいは以前のように「河川を区切ったニジマス釣り堀の運営開始!」に心躍っている場合ではもはやないのだ。

なお、筆者はウグイについては縁が遠い存在である。もともと主な活動地が福岡県と愛媛県の宇和海沿岸であるためだ。福岡県ではウグイは分布しないというわけではないが、局所的であり、宇和海沿岸ではウグイはほとんどいないらしい。トップ写真のウグイは韓国産のようで、韓国の水族館と山口県下関市の海響館との提携による展示のようである。

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釣り堀のはなし5

2024年02月26日 22時57分27秒 | 環境問題

さて、長良川のニジマス釣り堀でついに国が動いたというニュース。まあ、河川を区切って釣り堀を作っていたわけで国交省サマの出番となったわけですが、もう最初の釣り堀の時点でそれを見抜くことができなかったのだろうか。まあTwitter民(Xと改名)のほうが見抜くスピードが早かったわけですな。報告して再度許可が下りれば運営再開ということになる。というか、もう運営再開しなくてもいいよ。

しかしながらこの「ニジマス釣り掘」というのは恒久的なものではなく、鵜飼のオフシーズンに観光客を呼び込むというもので、河川に網を張ってそれでおわらせるというようなもので、逃げるのは時間の問題であったように思える。さらに言えば、この点だけでなく、「河川を仕切ってニジマスを放流し、釣り掘りやつかみ取り」というようなイベントは現在も日本のあちらこちらで行われているのである。であれば、今回のような「ニジマス事件」は、夏になれば全国各地の釣り堀で行われるだろう。つまり、今後もニジマスが逸出するような機会は完全に失われたわけではないということである。賢明な読者の方はぜひ各自治体や地域の行政をチェックするようにしてほしい。みんなで力を合わせて漁協・悪質な生物放流者・行政から生物多様性を守ろう!

そしてそれはニジマスばかりではない。「ニジマスがだめならアユならよかろう」と安易に考える向きもあろうが、結局アユもアユで逸出する可能性もあるし、別系群の個体がもたらされる可能性もあるし、そうなったら「同じ種で外見で判別できない」ためニジマス以上に厄介である。もちろん寄生虫の問題もあり。こういう「河川を区切った釣り堀」というのは、もう前世紀の「負の遺産」というべきであろうか。

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