魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

ニシシマドジョウ色々

2017年08月27日 20時12分37秒 | 魚紹介

2013年静岡県で採集したニシシマドジョウ

さて、今回も相変わらずのドジョウの話題。

日本産のドジョウ科のうち、最大の種・亜種を含むのがシマドジョウ属である。20の種・亜種がいるのだ。そのうち私がこれまで出会ったのは意外と少ない。例の本を手にした今年3月の時点で採集したことがあったのはニシシマドジョウ、オオシマドジョウ、トウカイコガタスジシマドジョウ、アリアケスジシマドジョウ、ヤマトシマドジョウの5種である、と思われた。

シマドジョウ属魚類の中でも一般的なものと言えば従来「シマドジョウ」という名前で呼ばれてきた4つのグループ、「オオシマドジョウ」「ニシシマドジョウ」「ヒガシシマドジョウ」そして「トサシマドジョウ」という名前で呼ばれているもの。

私がこれまで採集してきたシマドジョウの仲間はオオシマドジョウとニシシマドジョウの2タイプだと思われた。

2013年に滋賀県で採集したシマドジョウ属

 

特に2013年に琵琶湖にそそぐ河川で採集してきた個体は、尾鰭の付け根の黒色点が上下ともに顕著であり、オオシマドジョウと思われた。

2017年7月に琵琶湖で採集した個体

 

しかし前回ご紹介した大阪でのシンポジウムの後、Twitterのフォロワーの方と琵琶湖へ遊びに行った。私が採集したシマドジョウはオオシマドジョウだと思っていたのだが、フォロワーさんによればニシシマドジョウだというのだ。実際にドジョウ図鑑を見てみると、ニシシマドジョウのうち琵琶湖や淀川水系のものは尾柄部の斑紋が上下ともに明瞭でつながるのが特徴だそうだ。特にこの地域ではニシシマドジョウやオオシマドジョウの分布域が複雑に入り組んだ地域だという。

静岡県産ニシシマドジョウ(トップ画像と同一個体)

滋賀県産の個体(2013年のものと同一個体)

ニシシマドジョウは地域によって斑紋が大きく違っていることが分かった。静岡県で採集したニシシマドジョウは尾鰭の付け根の斑紋は上が明瞭で下が不明瞭なのだ。現在飼育しているものは4年前に採集したもので、飼育を開始したころよりも大きくなっているのだが、残念ながら体側の斑紋は薄くなっている。それでも尾鰭の付け根の斑紋は明瞭であった。ニシシマドジョウは大きいものでは100mmになるとされているが、オオシマドジョウは130mmに達する個体がいるという。ニシシマドジョウは山陰や中部地方に生息し、オオシマドジョウは近畿以西の本州と四国の瀬戸内海側、九州(大分県)に生息している。

いずれにせよこのような斑紋の微妙な違いは地域集団の違いによるものだと思われる。このような斑紋の違いはそれぞれの地域の宝といえる。採集したドジョウを河川に、とくによその河川に放すのは絶対にやめよう。

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ドジョウ(また)放流

2017年08月25日 20時57分51秒 | 環境問題

 

ドジョウ 茨城県産 体高は高く体は短い


ドジョウ 岐阜県産 体高は低く体が長め。上の個体とは明らかに違う雰囲気だ


最近、妙に気になる魚の養殖がある。淡水魚の養殖だ。淡水魚はヒト、とくに内陸のヒトにとっては身近な存在であり、昔から様々な魚が養殖されていた。コイ、アユ、サケマスの類、フナ、ドジョウ、ナマズなど。食するもののほかにニシキゴイやキンギョ、ヒメダカ、最近はカラフルなメダカなどの観賞魚、ニジマスやヘラブナといった釣りの対象魚など。

これらの魚の養殖にはいくつかの方法がある。河川から水をひき、その河川にすんでいた魚を養殖池に隔離して養殖するという方法。しかしそれ以外の多くの方法では、よそから魚を持ってくることになる。

それでも逃げないようきちんと管理していれば問題ではないが、もしそれが逃げたら「外来魚」となってしまう。もっとも前者であっても、病原菌や寄生虫などの問題もあり、逃げたら問題になってしまうのであるが。

この手の問題についてはこのぶろぐでも延々と、人によってはうんざりするくらい取り上げてきた。特に先月大阪府で行われた日本魚類学会主催のシンポジウムのあと、放流問題を何とかしようとする機運が、淡水魚愛好クラスタの間ではさらに高まってきたように思われる。

その大阪といえば、昨年に泉佐野市でキンギョの大規模な放流があった。あれほどいろいろな人から非難・批判されていたのだが、結局今年も開催された。今年は逃げないように網をはるなど工夫はしていたが、実際にはそのような網を張っていても病気であるとか、細かい寄生虫などはすりぬけてしまう。結局今回のシンポジウムではキンギョの放流を行った団体の参加は確認することができなかったが、それがすべてといえるだろう。

そんな大阪府にある河内長野市でまたもこのようなことがあった。

稲作よりももうかる?府が遊休農地でドジョウ養殖へ」(朝日新聞デジタル、リンク先はインターネットアーカイブ)

ようは遊休農地となっている水田に水をはり、ドジョウを養殖しているというのである。それならば「ああ、土地の有効利用か」と思う人もいるかもしれない。しかし、とても重要なことがある。それは「そのドジョウはどこから来たのか」である。

今回養殖に使ったのは河内長野産のドジョウではなく、島根県の安来のドジョウを放流したという。写真を見たものの、あのような田んぼでは雨が降るとドジョウが逃げ出してしまう可能性がある。ようは外来魚の放流につながってしまうようなことをしたということである。

タイトルに「稲作よりもうかる?」という文字がある。これにも疑問がある。簡単に言えば稲作よりも金儲けに適している、ということだ。人間は金儲けのために自然環境を、生物多様性を損ねてきた。ダムを作ったり、無駄な公共工事をしたり、近年はメガソーラーによって発電されるごくわずかな電気のために多くの生物の生息地が奪われてしまっている。最近は生物学者や省庁の人が「採集ガー」などと言っているが、実際に良心的な愛好家により採集され、いなくなる生物はわずかな量であり(たまにとんでもない量の生物を採集していくような人はいるが)、採り子などによる乱獲さえ防ぐことができれば採集することでいなくなるなんてことは防ぐことができるはずなのである。

一方でイタセンパラやアユモドキのような魚は採集を禁止したところで増えただろうか?従来身近であった生物が姿を消したと嘆く人も多いが、それはたくさん採集してしまったからいなくなってしまったのか?採集を禁止して守ろうといっている人たちははたしていつその問題に気が付くだろうか。環境開発、メガソーラー、乱獲、不法投棄。これらは日本人が得意とする分野である。

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ミヤコヒゲ

2017年08月14日 18時41分42秒 | 魚紹介

ちょっと間があいてしまいました。今回は、前回ご紹介しましたクロダラと一緒にやってきた別のタラの仲間。タラ目・ソコダラ科・トウジン属のミヤコヒゲ。

トウジン属の魚は種類が多く、種の同定も簡単ではありません。この個体は体の鱗に強い棘があること、頭部腹面は鱗がなくつるつるしていること、肛門付近の発光器が前方に伸びること、鰓膜は淡色であることなどが特徴です。ほかにもいくつか近縁のトウジンの仲間がいますが、これについては後日まとめます。

この間のクロダラも、本種も、美味な魚です。今回は両方ともお刺身。上(奥)がミヤコヒゲ、下(手前)がクロダラ。

印束商店 石田拓治さん、いつもありがとうございます。

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クロダラ

2017年08月06日 21時12分13秒 | 魚紹介

本日も変わった魚との出会いがありました。タラ目・チゴダラ科・イトヒキダラ属のクロダラ。

最初画像を見たときは「イソアイナメ」と思い、これでも大喜びであったのだが、届いた魚をよく見ると2本の細長い腹鰭があったのでした。

このような腹鰭は、イトヒキダラではありえない。腹鰭がこのように糸状に伸び2軟条という特徴をもつのは日本産としてはイトヒキダラ属のみの特徴です(イトヒキダラ属とされることが多いヒメダラを含む。ヒメダラ属を認める場合、ヒメダラ属もこれにあてはまる)。ほかの多くの属の種は胸鰭が短いか、長い場合でも5軟条はあります。イソアイナメでは腹鰭が9軟条あります。

イトヒキダラやヒメダラと違うところは、第1背鰭が高くなりその第1軟条は糸状に長くのびているところです。ヒメダラやイトヒキダラの第1背鰭は小さく背鰭軟条も糸状には伸びていません。ほかに軟条が糸状に伸びる種としてはバラチゴダラなどがいますが、この種は腹鰭の軟条の様子により、イトヒキダラ属と見分けることができます。

ほかの日本産イトヒキダラ属の魚ではパラオイトヒキダラに近いといわれるクロダラ。パラオイトヒキダラとは、吻部の有鱗域の形状が若干ことなっています。パラオイトヒキダラは有鱗域の先端が二つに分かれるような形になり、そうならない本種との見分けは容易です。

クロダラは水深1200m以浅の深海に生息する深海魚です。九州-パラオ海嶺に分布するとされましたが、和歌山や神奈川県横浜で採集されています。この個体は釣りで採集されたもので胃が反転し飛び出しそうです。また腹鰭の長さもパラオイトヒキダラとは大きく異なっています。

イトヒキダラの仲間は10数種が三大洋の深海に生息しています。日本産はヒメダラを含めると4種です。昔の図鑑ではこのほかホテイイトヒキダラLaemonema filodorsaleというのが掲載されていましたが、最近はこれをLaemonema robustrumやL. modestumと同種とみなしていることがおおく、和名をクロダラとしています。ただしこれについては個人的には納得していません。FishbaseのL. robustumとされている写真(マデイラ産)は腹鰭が長く臀鰭にまで達しているのですが、魚類検索によればクロダラは腹鰭が臀鰭どころか肛門にも届かないので別種と思われます。この個体は臀鰭の形状なども含め、昔の図鑑に従えばホテイイトヒキダラということになります。

最後に、チゴダラとクロダラの見分け方を。今回のクロダラは長崎県の石田拓治さんより。いつもありがとうございます。

 

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ミナミメダイ

2017年08月02日 17時35分02秒 | 魚紹介

最近ぶろぐ放置気味で申し訳ありません。最近も新しい魚との出会いがありました。スズキ目・オオメメダイ科・オオメメダイ属のミナミメダイです。

ミナミメダイは「メダイ」とありますが、イボダイ科ではなく同じイボダイ亜目のいちグループであるオオメメダイ科の魚です。オオメメダイ科はオオメメダイ属のただ1属のみからなり、現在のところ世界で7種が有効とされています。そのうち日本には3種が知られています。

 

ほっそりした体で、サバやアジの仲間にも似た印象がありますが、口の形が大きく違っています。残念ながら今回の個体は口が割れていますが、小さい特徴的な形の口。イボダイ同様クラゲの仲間や甲殻類などを食べているのだと思いますが、生態については不明な点も多いようです。

分布域は紅海からハワイまでのインド—太平洋域から知られるようですが局所的。日本においては神奈川県から沖縄島にかけての海で確認されています。今回の個体は高知県産。

ミナミメダイは体が細長くて、強く側扁するわけでないことからオオメメダイという種によく似ています。ミナミメダイは頭部背面の有鱗域の先端が眼の後縁付近にまでしか達しないのに対し、オオメメダイは有鱗域の先端は眼前縁付近に達するのが特徴です。またその名前の通り、オオメメダイはミナミメダイよりも眼がでかいのが特徴です。

今回はお刺身で美味しくいただきました。刺身は結構やわらかくて脂っこいもの。この日はこの刺身を食したあと、大阪へ向けて出発することになったのでした。

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