魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

ソコハリゴチ

2016年03月31日 14時02分17秒 | 魚紹介

今日はいよいよ年度最後の日。

昨日はナツハリゴチをご紹介したので、今日は私が出会ったもう一つのハリゴチ科魚類であるソコハリゴチについてご紹介したい。

ソコハリゴチはナツハリゴチと同じく、スズキ目・ハリゴチ科・ハリゴチ属に含まれる種類。前回紹介したナツハリゴチによく似ている種類であるが、ナツハリゴチに比べて吻がやや短く、体側骨板には後方に向く強い棘が1本(ナツハリゴチでは2本)あることにより見分けられる。胸鰭の下部にある遊離軟条数は2~4本で、それが短いことでよく似ているハリゴチとも区別できる。

ソコハリゴチ背面、および頭部背面。ソコハリゴチでは黄色っぽい模様が入るため、色彩はナツハリゴチと比べてカラフルに見える。頭部にはとても小さな棘があるのもこの仲間の特徴だ。

ハリゴチ科の魚は日本に6種類が知られている。ソコハリゴチに酷似しているものに最近新種記載されたミマセハリゴチというのがいるが、それは尾鰭の形がソコハリゴチとはやや異なるし、第1エビれが白く縁どられているのも特徴的である。ソコハリゴチは福島県小名浜から九州南部までの太平洋岸、京都府から九州北部までの日本海沿岸、東シナ海、海外では台湾、南シナ海、ニュージーランドにかけて分布し、一方ミマセハリゴチは土佐湾、尖閣諸島、海外ではオーストラリアに分布する。名前のミマセハリゴチは、御畳瀬にちなむのだろう。

ソコハリゴチは水深90~436mの海底から漁獲される、と魚類検索図鑑にある。この個体は水深150mほどの海底から沖合底曳網によって漁獲されたものである。全長20cmを超えるようだが、まだそれほどの大きさの個体にはお目にかかれていない。やはり船上で投棄され、市場にあがることはほとんどない。

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ナツハリゴチ

2016年03月30日 17時31分07秒 | 魚紹介

以前コチの頭部を集めた画像を作っていたのですが、コチに近縁な(とされている)ハリゴチの仲間(スズキ目ハリゴチ科)も紹介できていなかった。ハリゴチの仲間は体に小棘のある骨板が多数並ぶのが特徴だ。

この種類はナツハリゴチという種類である。ハリゴチ科の魚は日本に6種が分布しているが、そのうちナツハリゴチち、ソコハリゴチの2種類がよく知られている。ナツハリゴチは吻がやや長く、体側の骨板の後方に向く強い棘が2本あることにより、それが1本しかなく吻もやや短いソコハリゴチと見分けることができる。

ナツハリゴチの背面。吻はやや長めであることがわかる。ソコハリゴチの吻については、以前のコチの頭部写真のほうを参考にしてほしい。色彩的にはナツハリゴチの色彩は灰色っぽく、派手というものではない。

胸鰭の軟条がホウボウの仲間のように下方が遊離するというのも特徴。ナツハリゴチの場合は多くが3本(3~4本)。ソコハリゴチでは2~4本と幅広い。ハリゴチは3本で、胸鰭遊離軟条が上部軟条の先端に達するのが特徴だが、ハリゴチのほうはめったにお目にかかれるものではない。確実な記録は1908年の鹿児島の記録だけだという。

ナツハリゴチとソコハリゴチは生息水深も異なる。ナツハリゴチは65~150mくらいの場所に生息するのに対し、ソコハリゴチはやや深めで90~400mほどの場所で採集されている。ナツハリゴチは100mくらいの場所で多く漁獲され、今回の個体は水深70mほどの場所を曳く小型底曳網漁業によって漁獲された。一方ソコハリゴチは水深150mより深い場所を曳く底曳網漁業で多く漁獲されている。ただし両種ともにほとんど利用されておらず、海上で投棄されてしまっているため、陸に住む私たちがこの種を見る機会は多くない。全長20cmくらいになる。

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ネズミギス

2016年03月28日 19時58分44秒 | 魚紹介

 

この魚はネズミギスという種類。確かに見た目はキスやギスに似ているけれど、これらとは縁が遠い種類。見た目はサケに似ているともいわれるが解剖学的特徴からはそうはいえないようで、実はコイなどに近いともいわれている、謎に満ちた魚だ。ネズミギス目ネズミギス科。

ネズミギスの背鰭・臀鰭・腹鰭

ネズミギスの背鰭・臀鰭・腹鰭。腹鰭は体の後方にあり、臀鰭と近い位置にあるのはたしかにコイの仲間に似ている。背鰭は1基のみで軟条数は11前後と、ギスなどよりも少ない。また鰾を欠くのも特徴である。吻は細長く、英語では「Beaked salmon」(くちばしのあるサケ)と呼ばれるが、脂鰭はない。

ネズミギスの口

口はこんな感じ。サメの仲間にも似た口が特徴だが、肥厚した唇をもつものの、顎歯はない。そして口の前のほうに1本の「ひげ」があるのもネズミギスの特徴といえる。

ネズミギスはいまだに何の仲間なのかわかっていないところもある。コイに近い仲間といわれるのは、このネズミギスの脊椎骨の形がやや変わっており、それはウェーバー器官の原始的なものではないかといわれているのだ。ちなみに日本産のネズミギス科魚類はこの1種のみで、ほか、このネズミギス目の中にはフィリピンや台湾では重要食用種となっているサバヒーや、いずれもアフリカ大陸に生息する淡水魚であるクネリア科とプラクトラエムス科の4科が含まれている。このうちクネリア科を除く3つの科は単一の属で構成されていて、サバヒー科とプラクトラエムス科の種は1属1種である。

鰾はネズミギス科をのぞく3科にはあるようで、プラクトラエムス科はこれを使って空気呼吸もするらしい。なおこのプラクトラエムス科の魚は日本にも観賞魚として入ってくる。あまり大きくはならないが、古代魚的なフォルムはそそられる。飼育してみたい魚の一種だ。

なお、ネズミギスは中国福建において、この種を食べて食中毒になったという話をきく。食べるにあたっては覚悟が必要な種かもしれない。ただし本種は一般的にやや深海性の種とみなされていて、あまり出会うことはできない。底曳網で漁獲されるほか、定置網でもたまに漁獲される。

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クモゴチ

2016年03月25日 20時50分01秒 | 魚紹介

コチの仲間もこのぶろぐではあまり紹介できていないことが分かった。コチ科の魚は日本には少なくとも22種がいるのだが、同定も難しくあまり採集されないので紹介しにくいのである。

クモゴチは結構珍しい種だと思う。Yahoo!の画像検索でもろくに出てこない。学名で検索したらオーストラリアのものがいくつか出てきた。

まあ見た目は何ともない種類。あえて言えば鱗がやや小さめで、側線有孔鱗数が46~55であることなどが特徴。メゴチに似ている種類だけれど、眼下骨の隆起線の棘は一様に強くて大きいのが特徴。またメゴチの場合後頭部の隆起線が鋸歯状になっているけれど、本種では鋸歯状にはなっていない。

こちらはメゴチの頭部。メゴチの場合眼下骨隆起線の棘は大きかったり、鋸歯状の部分があったりとさまざまなよう。また後頭部の隆起線も鋸歯状になっているのも特徴、といっても写真ではわかりにくい。このほかメゴチでは第1背鰭の後半部が暗色なのに対し、本種では第1背鰭の鰭膜上縁に黒色斑がある点も異なる。もっともこれも、この写真からは読み取れないけれど。

クモゴチは日本ではあまり漁獲されないようで、魚類検索によれば、日本での分布は土佐湾しか記されていない。海外では台湾、中国広東省、海南島、フィリピン、ニューギニア、オーストラリア沿岸、インド洋で記録がある。この個体はやはり土佐湾の水深150mの海底で沖合底曳網で漁獲されたもの。底曳網はちょっと意外なものが獲れるから面白い。

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ヒメフエダイ

2016年03月20日 21時51分15秒 | 魚紹介

意外なことに夏になると本州沿岸の海域にも姿を見せ、釣り人にお馴染みのスズキ目・フエダイ科のヒメフエダイをいまだに紹介できていなかった。まああまり写真の質がよくないのだけれど。

ヒメフエダイはインド‐太平洋域(紅海にも分布)に生息するフエダイの仲間。成魚は赤みを帯びた体でサンゴ礁域で群れているが、幼魚は内湾に生息していてよく見かける種だ。幼魚は河川の汽水域でも見ることができる。日本における分布域は千葉県館山湾以南の太平洋岸の各地で、福岡県津屋崎でも幼魚の記録があるよう。一方成魚は伊豆諸島、小笠原諸島、琉球列島に分布している。ちなみに上の個体は高知県の河川汽水域で採集している。

幼魚と成魚では雰囲気がかなり違う。成魚は釣ったことがないので各自ググってほしいところ。尾鰭や尾柄部が黒っぽいのは幼魚の特徴といわれているが、成魚でもこの色彩が出ることがある。また幼魚でも尾鰭全体が黒かったり、あるいは黄色かったりする。あまりあてにはならないだろう。釣ったときには体の色が違った。なんと真っ青なのだ。赤みを帯びた体の成魚とはまた違う美しさをもつ。

もう9年も前のことであるが、高知で釣り採集した個体を飼育していた。その時は体を青くしたり錆色にしたりと、色彩を少し変えていたと思う。フエダイの仲間ではバラフエダイのようにスズメダイの仲間に擬態するような種もいるが、本種もそうなのかもしれない。尾鰭が一様に黄色かったりするから、ソラスズメダイに擬態しているのかも。ただ海中で本種を見たことがあるが、それほどソラスズメダイに似ているようなものではなかった。

ことし5月には喜界島に行く予定だ。その時はこれのもう少し大きいのを狙おうと思っている。

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