魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

タイリクバラタナゴ

2017年03月21日 11時46分25秒 | 魚介類飼育(淡水)

一昨日日曜日は飼育している魚の撮影を行った。写真の魚はコイ目・コイ科・タナゴ亜科・バラタナゴ属のタイリクバラタナゴ。

タイリクバラタナゴは標準和名に「タイリク」とある通り、もともと中国大陸(や東アジア)に生息していたもので、現在は日本のあちこちに広まってしまっている。本州、四国、九州の広い範囲に生息し、在来のタナゴ類が生息しない北海道にもいる。

今回採集した個体は濃尾平野の河川で採集したもの。手網ひとすくいで数10匹ほど入ったが、今回はあまり持ち帰ることはできなかった。残念である。採集した場所ではタモロコ、ゼゼラ、ミナミメダカなどがたくさん見られた。

本種を含むタナゴ類の特徴として、二枚貝に産卵することがあげられる。ドブガイ、イシガイ、マツカサガイ、カタハガイ、などの出水管に産卵管を挿入し、貝のなかに産卵するのだ。うまく飼育すれば水槽内でもタナゴの仲間が貝殻に卵を産み付けることを観察することができる。タナゴの仲間の雄が婚姻色を示すと極めて美しい色彩となる。このタイリクバラタナゴもあまり色がでていないが、青や赤など派手な婚姻色を水槽でも観察できるのだ。

●タナゴ類の放流がもたらす問題

婚姻色のでたタイリクバラタナゴ

タイリクバラタナゴは、先ほども書いたようにもともとは中国大陸や東アジアに生息していた魚である。いったいそんな魚がなぜ日本に入ってきたのか。私は戦後ソウギョなどと一緒に入って広がったものとばかり思っていた。実際に1940年代のはじめにハクレンなどと一緒にはいってきたのだそうだ。そして関東で増えた後に霞ヶ浦から琵琶湖へ、イケチョウガイという二枚貝を移植する際に貝の中に卵、または仔魚がふくまれていてそれが琵琶湖に放たれたそうだ。そこからはもしかしたらアユの移植の際にアユといっしょに分布を広げたのかもしれない。

その分布を広げるということで、問題が起こる。タイリクバラタナゴの放流を行うことでいったいどのような不都合や問題がおこるのか。

亜種関係にあるニッポンバラタナゴとの間では交雑が起こっているし、産卵する対象が限られるこの亜科の魚の場合、産卵場所がほかのタナゴ類と競合してしまう。タナゴの仲間は春産卵のものと、秋産卵のものがいるが、本種は春~秋に産卵する。産卵場所が本種に奪われてしまうことも多いのだ。このほかにニッチの問題や病気の問題もあるのだが、これらについては話すと長くなるので今回はやめたい。先ほど話したイケチョウガイを経由して起こる問題もあり、タナゴ類の産卵に使った貝を河川や池に戻す行為もやめよう。さらによく知られるように貝は現在減少気味で、ネットのオークションなどで大量に販売されている。そういうのを経由して購入すれば、貝にもタナゴにさらなる負荷をかけてしまうのでやめたい。

このタイリクバラタナゴは「外来魚問題」の様々な要素を濃縮した生物といえる。日本には中国タナゴ(種不明)、トンキントゲタナゴ、タイワンタナゴ、ウエキゼニタナゴといった種が観賞魚として輸入されるなどして人気が高いものの、それは同時に野外に放逐されるリスクもあるということである。このような外国産の魅力的なタナゴを今後も飼育を続けていけるように、売る側も、買う側も、上記のことを頭に入れておくべきであろう。

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ノコバホウネンエソ

2017年03月17日 21時28分09秒 | 魚紹介

2日連続でディープな魚を。

ワニトカゲギス目・ムネエソ科・ホウネンエソ属のノコバホウネンエソ。

ムネエソ科の魚は発光器をもち、ユニークな体の形から深海魚の中でもよくしられている種。その中のホウネンエソ属の魚は日本からは8種類がしられているが、大きく二つのグループに分けられる。ひとつめのグループは後側頭骨棘が大きく、いくつかに分岐しているもの。もう一つのグループは後側頭骨棘が小さく、単一の棘をもつもの。前者にはツノホウネンエソ、カタホウネンエソ、マルホウネンエソが含まれ、後者のグループにはホシホウネンエソ、スルガホウネンエソ、ミツユビホウネンエソと、2014年に与論島から日本初記録種として報告されたチュラプシホウネンエソが含まれている。

ノコバホウネンエソも後側頭骨棘が大きく分岐している。ということは、ツノホウネンエソやカタホウネンエソなどと同じグループに含まれる魚である。

ノコバホウネンエソの特徴は、臀鰭後方と尾鰭にある発光器(尾柄下部発光器、SC)の下方に鋸歯があること、これが標準和名の由来であろう。今回送っていただいた個体ではよく確認できなかったが、この魚をおくっていただいた「たつろー」さんがTwitterにアップしてくれていた。本当に助かった。発光器の分布もホウネンエソ属の種ごとに違いがある。生きているものはまだ見たことはないのだが、光る様子はまさしくチュラプシホウネンエソの名前の由来となった「美ら星」のようにきれいであろう。

分布域は相模湾から宮崎県の太平洋岸、海外ではフィリピン近海に分布しているようである。日本の太平洋岸近辺には本種やカタホウネンエソ、ホシホウネンエソ、スルガホウネンエソ、ミツユビホウネンエソが見られる。大陸棚の縁辺に生息し、外洋の中深層に生息するムネエソ属やテンガンムネエソ属の魚に比べてまだ我々が出会うチャンスが高い種、といえそうである。この個体は愛知県を拠点とする底曳網漁船が採集したもので、シャチブリなどと一緒に入っていたのをHN「たつろー」さんに送っていただいたもの。ありがとうございました。

ちなみにノコバホウネンエソと出会うのは実は今回が初めてではない。2010年にとあるところから譲っていただいた魚の中に、この魚が入っていたのだ。今回は7年ぶりの再会となった。前回は宮崎県の延岡沖で漁獲されたもので、その中にノコバホウネンエソが1匹入っていたのだ。それが私にとって初めてとなるホウネンエソ属魚類との出会いとなった。

ムネエソ科魚類はこれまでもキュウリエソ、ムネエソ、テンガンムネエソなど見てきた。しかしホウネンエソ属魚類は延岡のものと、今回の計2回、しかも同じ種しか見ていない。できることならもっといろいろなホウネンエソ属魚類が見てみたいものだ。このぶろぐを見てくださっている漁師の皆様、よろしくお願いいたします。

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アラハダカ

2017年03月16日 10時22分15秒 | 魚紹介

今日ご紹介する魚はハダカイワシ目・ハダカイワシ科・ススキハダカ属のアラハダカ。ハダカイワシ科の魚は日本に87種も生息しているのだが、このぶろぐではハダカイワシ科の魚をほとんど紹介してこなかった。マグロの胃内容物のどろどろになったハダカイワシ属の魚を紹介してきただけである。ということで同定すみのハダカイワシ科魚類としては、このぶろぐ初登場ということになる。

発見してすぐの写真

このアラハダカは昨年、某雑誌の磯遊びイベントで三浦半島へ行った際に、ちょと寄り道したところの磯で拾ったもの。採集、というわけではなく,もうすでにお亡くなりになっており、浅い潮だまりでぷかぷかとうかんでいたものだ。鳥に捕食されていないのは幸運であったが、残念ながら尾部が若干かけてしまっていた。写真は獲れてすぐの個体。大きな寄生虫がついている。なおトップ画像はこの個体を右頭にしたものを反転している。

アラハダカ櫛鱗のアップ

ハダカイワシという名前から鱗がはがれやすいと想像しやすいが、このアラハダカは強い櫛鱗で、はがれにくいという特徴をもっている。鱗は光っていて綺麗だ。ススキハダカ属の魚は日本には7種類がいるが、このアラハダカが一番ふつうにみられるのかもしれない。一応ある方に問い合わせてみたのだが、アラハダカでよいとのことだ。

2枚ともアラハダカのSAO、2枚目はわかりやすく色をつけた

近縁のウスハダカも北海道~九州までの太平洋岸に分布しているが、アラハダカとウスハダカでは肛門上発光器(SAO)の様子が異なる。アラハダカのSAOは折れ曲がるのに対し、ウスハダカではそのようなことがなくまっすぐに近い配置になっている。また見た目もアラハダカのほうが幾分ほっそりとしている感じだ。ハダカイワシの仲間は基本的に発光器の配置や数、胸鰭や臀鰭の軟条数を合わせて同定するため、これらの形質が写っていない写真では同定ができない。最善の方法は自分で触って確かめることである。

アラハダカの鰓蓋上端付近

日本産ススキハダカ属魚類はほかにススキハダカ、ヒカリハダカ、イバラハダカ、ヒサハダカ、ヒシハダカの5種が知られている。鰓蓋上縁に特徴がある種が多く、ススキハダカは鰓蓋上縁がおもしろい形になっているし、ヒシハダカは鰓蓋上端が背方を向く。ヒカリハダカやイバラハダカ、あるいはヒサハダカという種は鰓蓋上端が鋸歯状になる。アラハダカとウスハダカの鰓蓋上端は鋸歯状になっていない。写真で鋸歯状になっているように見えるがこれは鱗である。

アラハダカなどのハダカイワシ類は一般的に深海魚とされているが、実際には浅いところと深いところを回遊している。昼は深海(400m以深)にその身をひそめるのだが、夜間は浅いところにまで上がってくる。この個体も夜間浅いところまで来てしまった個体なのだろうか。アラハダカの日本近海における分布域は千島列島から九州-パラオ海嶺までとかなり広い。海外では朝鮮半島、太平洋、インド洋、大西洋、メキシコ湾とかなり広い範囲に見られる。ハダカイワシと異なりやや小型で鱗もはがれにくく食用とはされていないようである。体長8cmほどになる。

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チカメエチオピア

2017年03月11日 16時23分19秒 | 魚紹介

またぶろぐ更新の間隔があきつつあります。申し訳ない。今日はちょっと前、というかもうひと月も前に購入した魚。

スズキ目・シマガツオ科・チカメエチオピア属のチカメエチオピアという魚。ヒレジロマンザイウオを購入したものと思っていたのですが、ハコを開けてみてびっくりでした。図鑑による分布域であ相模湾、紀伊水道、土佐湾、沖縄島、小笠原諸島に分布するとあるが、この個体は京都府で漁獲されたもの。京都府舞鶴の「水嶋鮮魚店」さんにて購入したものです。送っていただき、ありがとうございました。

海外の分布域は西-中央太平洋。ハワイ諸島、ジョンストン。インド洋にも清掃している模様。チカメエチオピア属の魚はインドー太平洋には本種のみが分布。大西洋にはもう1種トロピカルポムフレットEumegistus brevortiというのがいる。

シマガツオの仲間は種類が多い。死後すぐの個体は真っ黒な色彩が格好いい。しかし時間がたつと灰色っぽくなってしまう。今回の個体は死後あまり時間がたっていない個体で、鱗が青く輝いていて綺麗であった、市場には生きた状態で水揚げされたのだという。残念ながら市場のいけすのなかでもうフラフラとしていたようであるが。

チカメエチオピアの胸鰭と腹鰭の位置関係

 

チカメエチオピアはヒレジロマンザイウオという種に似ている。チカメエチオピアとは腹鰭の形がやや異なる。チカメエチオピアの腹鰭は胸鰭基部上端よりも後方にあるが、ヒレジロマンザイウオの腹鰭はそれよりもやや前のほうにある。また縦列鱗数もチカメエチオピアのほうがヒレジロマンザイウオよりも多い。

尾鰭の形も異なる。チカメエチオピアは尾鰭の中央部もやや突き出た「二重湾入形」。ヒレジロマンザイウオはもっと三日月に近い形をしている。尾鰭は上・下葉の先端が白くなる。

舞鶴ではたまにツルギエチオピアも揚がるそうだ。チカメエチオピアの尾柄にはとくに大きな鱗はない。ツルギエチオピアは尾柄のところに大きく隆起した鱗があるので本種と区別することができる。比較的深場に生息する種で「南日本太平洋沿岸の魚類」では水深230~620mの漸深層に生息するとある。この本に掲載されている個体はアカムツ延縄で獲れたという。日本海側でもアカムツは重要な漁獲対象種となっている。もしかしてこの個体もアカムツ漁で獲れたのかもしれないが、この科の小型のものは定置網や底曳網などでもたまに入ることがある。

この仲間は貪欲な肉食性の魚。はたして何が胃の中に入っているか、とさばいてみたら、釣り用のライトと思われるものが入っていた。光に反応して食いついたのかもしれない。今回は刺身で食したが非常に美味。

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キホシスズメダイ

2017年03月08日 10時42分54秒 | 魚紹介

久しぶりのぶろぐ更新。

スズキ目・スズメダイ科・スズメダイ属のキホシスズメダイ。

本州から九州までの日本海・太平洋・瀬戸内海に生息するスズメダイによく似ている。しかし背鰭の縁が丸いことが多く、背鰭下方の白色斑は目立たない。また尾鰭が黄色っぽいことが多い。全長15cmほどである。

従来はキホシスズメダイの学名はChromis flavomaculataとされていたが、これはタイプ標本の調査の結果、Chromis notatus(スズメダイ)の異名とされたようで、2013年に新種記載された。学名はChromis yamakawaiである。Fishbaseにも掲載されている。コモンネームはNothern yellow-spotted chromisである。さらにこのほかに背鰭の色彩などがキホシスズメダイとやや違うものがいる。これは通称キビレスズメダイと呼ばれるもので、千葉県以南の太平洋岸に分布している。

検索図鑑による分布域は千葉県以南の太平洋岸、島根県、琉球列島、伊豆・小笠原諸島。海外では台湾、フィリピンなどに生息し、南半球でもオーストラリアやニューカレドニア、ロードハウなどにも分布しているものの、その間の赤道域にはいないようだ。南日本太平洋岸でその姿をみることができる。私も八丈島や高知県柏島などでこの魚と出会っている。生息水深は深くなく、水深20mほどある防波堤を見下ろすと浅い場所で本種が群れで見られたりする。サビキ釣りか、サヨリ針を使って殻をむいたオキアミを餌に釣る方法がある。

スズメダイの仲間は食卓に上ることは少ない。ただし九州地方ではスズメダイはよく食用とされている。奄美大島でもスズメダイ属の大型種はしばしば販売されている。奄美大島のスーパーマーケットではアマミスズメダイが販売されていたし、昨年5月は喜界島でキホシスズメダイを売っているのを見た。残念ながら私はスズメダイ属の魚は今のところスズメダイしか食べていない。喜界島では様々な種の魚が販売されておりどれを食しようか悩むのである。

こちらは喜界島の「がほー部長」さんに送っていただいた個体。ありがとうございました。

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