魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中で見苦しいところもありますが、ご容赦願います。

トンガリヌメリ

2024年04月15日 04時05分32秒 | 魚紹介

今回も以前紹介していたと思っていたが、実は紹介していなかった深海魚。ネズッポ科・トンガリヌメリ属のトンガリヌメリ。

例によってネズッポ科の属については大きな問題がある。Fishbaseで使用されるFrickeの分類は系統を意識しておらず、混乱を招いてしまっているようだ。そしてFishbaseでは本種のみトンガリヌメリ属とされているのだが、トンガリヌメリ属のほかの種、ソコヌメリやクジャクソコヌメリはFishbaseでCallionymus属とされている。この問題については椎名さんがかつて運営していた某マリンアクアリウム系のウェブサイトで解説しているのでそちらの方を見て頂きたい。なおFishbaseのコモンネームはKai Island deepwater dragonetとされている。これはカイ島の深海性のネズッポという意味である。タイプ産地もバンダ海のカイ諸島とされている。

トンガリヌメリ尾鰭

トンガリヌメリ属の魚は尾鰭中央軟条の2軟条が不分枝であること、前鰓蓋骨棘の後端はカギ状になるという特徴がある。残念ながら前鰓蓋骨棘の写真は撮影していなかったよう(撮影していたとおもうのだが、行方不明に・・・)。しかし尾鰭中央軟条が分枝していないというのは、この写真からみればわかるだろうか。なお、生鮮時などはこの分枝していない軟条部分はよく伸長しているようである。

一般的にネズッポ類は性的二型があるとされるが、本種についてはわかっていない。しかしながら本種の雄と思われる個体も見ている。その個体はトップ画像の個体と異なり背鰭の第1棘かよく伸びていた。このほか臀鰭の色彩についても異なっているようで、雌では薄ら縁辺が暗色になっている。

トンガリヌメリは大陸棚のやや深い場所、大体150mほどの場所から底曳網漁業によって漁獲される。Fishbaseでの漁獲水深は180~290mとされているが、この水深は日本よりも深いが、熱帯域だとより深い海で見られる傾向にあるのかもしれない。やはり水温が関係しているのだろうか。雌の個体は愛媛県宇和海産。雄の個体は鹿児島県沖産で、どちらも有限会社 昭和水産の沖合底曳網漁業により採集されたもの。ありがとうございます。なお国内の分布域は愛知県以南の太平洋岸、対馬近海、東シナ海。海外では済州島、台湾、そしてタイプ産地のバンダ海である。このほか土佐湾で採集された個体も確認している。

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タカベ

2024年04月08日 23時58分22秒 | 魚紹介

今回も以前紹介していたと思っていたが、実は紹介していなかったというもの。タカベ科・タカベ属のタカベ。

タカベは本州~九州沿岸、海外では朝鮮半島沿岸に生息している。沖縄では見られないようだが、小笠原諸島では見られる。また伊豆諸島では多い。体が青く、体側から尾鰭にかけて黄色いさまはフエダイ科のウメイロであったり、フエダイ科に近縁なタカサゴ科のウメイロモドキなどによく似ている。この個体は死後撮影したもので、若干色が落ちているがそれでも生鮮時の美しさの名残も少しは見えるだろう。南半球に見られるLabracoglossa nitidaという種はタカベよりも黄色の範囲がひろく、よりウメイロやウメイロモドキに似ている。タカベ属にはタカベとL. nitidaの2種が知られている。どちらも群れで動物プランクトンを捕食しており、ウメイロモドキと似た食性をもつといえるだろう。

タカベの水中写真。やや濁って見えるのは大阪府から来たという釣り人が餌を撒いていたからである。プランクトンのような細かい餌を食べるタカベには撒き餌はごちそうである。体側の細い縦線は水中でも目立つようだ。伊豆諸島などではこのタカベを追い込み網などで漁獲したりしており、食用として重要とされている。塩焼きなどにして食べると結構おいしいらしい。写真の下、横縞の魚はお馴染みのオヤビッチャ。高知県沿岸ではオヤビッチャはいつでもいる。タカベも数多くみられるが、毎日見られるとは限らない。

本種を含むタカベ科は研究者によっては、メジナ属などとともにイスズミ科のなかに含めたりしていたが、現在は独立したタカベ科とする考えが主流である。Fishbaseによればタカベ科は世界で4属11種が知られている。ほとんどの種が南半球に生息しており、北半球ではタカベとMedialuna属のハーフムーン(属名そのもの...)が知られるのみである。最も種の多いScorpis属はオーストラリアの西海岸からチリまでの海岸に生息していて、青く塗ったマルコバンみたいな姿をしている。また体側に目立つ横帯があるものもいる。

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アマミハナダイ

2024年04月06日 15時48分02秒 | 魚紹介

今日も例によって時間がないので、過去紹介できていなかった魚のご紹介。スズキ目・ハタ科・ハナダイ亜科(もしくはハナダイ科)・イズハナダイ属のアマミハナダイ。

イズハナダイ属の魚は近年新種記載が続いている。本当に「新種記載ラッシュ」となっているのだ。ハゼ科のイソハゼ&ベニハゼと似たような状況になっている。本種は1972年に新種記載されたものでこの属としては比較的古くから知られていたようだ。ただしイズハナダイのように今なお分類学的に混乱の渦中に置かれているものもいる。1975年の「魚類図鑑ー南日本の沿岸魚」でイズハナダイについては「本種の学名には問題がある」とされているが、それから50年近くたってもいまだに決着がついていないようである。

アマミハナダイの分布域は奄美諸島以南の琉球列島、西太平洋、サモア諸島などで、水深100~200mほどの海底から採集されている。1968年に奄美大島から「イズハナダイ」として報告されたものの、イズハナダイと異なるとされ1972年に新種記載されたが、この新種記載の際には奄美大島のものではなく、沖縄産のものがホロタイプに用いられた。(奄美大島産のものはパラタイプとして記載に用いられた)

アマミハナダイの体側の斑紋

本種の大きな特徴は体に小さな黄色‐暗色斑が散らばること、体側に眼径大の不明瞭な赤色斑があることでほかの種と見分けられ、イズハナダイとは背鰭第3棘が伸びないことで見分けられる(イズハナダイでは、背鰭第3棘が長く伸びる)。イズハナダイ属魚類は成魚でも体長4cmほどの小型種もいるが、このアマミハナダイは大型で全長25cmほどになり、釣り、延縄などによって漁獲されて食用になっている。残念ながら2017年に入手したもので美味しかったかは忘れてしまった。また食べたい魚種のひとつであるが、再開は叶っていない。

沖縄美ら海水族館のアマミハナダイ

イズハナダイ属の魚類のうち、サンゴ礁域に生息する小型種は観賞魚として飼育されることがある。とくにフィリピンなどから輸入されるPlectranthias inermis Randall,1980は観賞魚としてよく知られているし、他にもチビハナダイなどは観賞魚店ではたまに見られる。しかしながら小型であっても深場に生息する、局地的な分布域の種であるなどの理由でお値段はどうしても高いものになってしまう。オシャレハナダイなども6ケタ円しないと買えない。先述したようにアマミハナダイは100~200mほどの海底に生息するため飼育されることはない、と思いきや2019年に私は沖縄美ら海水族館で感動的な対面を果たした。見た感じだと体側の暗色斑は黄褐色で、赤色斑はやっぱり不明瞭なよう。しかし、実はそれに先立ち名古屋の名東水園リミックス名古屋インター店においては2015年に衝撃的なアクアリウムシーンへのデビューを果たしていた。しかしお値段もまた恐ろしいものであったようだ。

今日の昼には「あかりん結婚」がTwitter(Xと改名)のトレンドとなっていた。どうやら吉田朱里さんが結婚したようだ。例の疑惑の彼氏だろうか。しかし「あかりん」(ひらがなあかりん)は48ヲタ界隈では通常SKE48の須田亜香里さんのことを指し、吉田朱里さんのことを「あかりん」と呼称する場合は通常カタカナで「アカリン」とつづる(カタカナアカリン)。Youtubeの「アカリンの女子力動画」だってカタカナアカリンだったしね。でも吉田朱里さんでよかった。須田亜香里さんが結婚したとなったら椎名さんは心が空虚なものになってしまう。

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ムレハタタテダイ

2024年04月05日 13時04分10秒 | 魚紹介

チョウチョウウオ科・ハタタテダイ属のムレハタタテダイはこれまでもこのぶろぐでは登場していたのだが、詳しくは紹介できていなかった。ということで今回はムレハタタテダイのご紹介。

ムレハタタテダイはインドー太平洋に広く分布している。また紅海やハワイ諸島にも分布しているのは本種らしい。日本ではどちらもその姿を見ることができるが、単独でいるのはハタタテダイのほうが多いような気がする。ただし手元のハワイの魚の本(Jordan and Evermann,1903/1973)にはハタタテダイの学名で掲載されている。ムレハタタテダイはその後に再記載されたのである。日本国内では千葉県以南の太平洋岸、山口県、長崎県、琉球列島、八丈島、小笠原諸島で見られる。

ハタタテダイ

ハタタテダイとの見分け方はいくつかあるが、有名なものは背鰭の棘条数である。ハタタテダイは背鰭棘がふつう11なのに対し、ムレハタタテダイではふつう12~13棘である。吻もハタタテダイのほうがよくのびる。さらにムレハタタテダイでは胸部が膨らむなどの特徴もある。ただしこの2種を見分けるのは初心者ではむずかしい。ある程度の数を見る必要がある。そして、適切な「指導者」の存在も。私は「適切な指導者」が2007年まで某サイトにおられたし、しっかり背鰭棘を計測することで覚えたのであった。

群れをつくるムレハタタテダイ

生態も異なっている。ハタタテダイは単独または数匹でサンゴ礁で小型の甲殻類を啄むように思えるが、ムレハタタテダイは大群を作りプランクトンなどを食っているように思える。実際にハタタテダイはなかなか釣れなかったが、ムレハタタテダイは漁港でオキアミを餌にするとすぐに釣れてきた。餌付きもよく飼育は簡単だというが、白点病になりやすいことや、サンゴをつつく可能性もあるため、なかなか飼育に踏み切れない。以前飼育していたが白点病に罹って死なせてしまった。定置網ではムレハタタテダイが時に多く網に入ることがあり、これを水族館に送って飼育されているケースもある。

ツノダシ

なおハタタテダイ・ムレハタタテダイによく似た魚にツノダシという魚がいる。ハタタテダイ属魚類に非常によく似た見た目をしているが、分類学的にはニザダイに近いとされている(もっとも、チョウチョウウオ科もニザダイに近いという意見もあるが)。ハタタテダイ・ムレハタタテダイともに尾鰭は黄色であり、尾鰭が黒いツノダシとは容易に見分けられる。ツノダシは単独でいることもあるが、産卵期などは大群をつくることもある。

ムレハタタテダイの塩焼き

ムレハタタテダイはいちど食したことがある。このときは小笠原諸島で獲れたものを山田良一さんに送っていただいたのだが、かなり大きいものだったので食してみた。塩焼きにすると皮目が厚くて気になったが、身自体は美味しく食することができた。山田良一さん、ありがとうございます。

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オニアジ

2024年04月01日 23時28分40秒 | 魚紹介

今日から新年度である。しかしながらこの年度はぶろぐをあまり更新できないかもしれない。今回も「以前紹介していたと思ったが、実は紹介していなかった」、そんな魚のご紹介。アジ科・オニアジ属のオニアジ。オニアジ属の魚はこのオニアジのみの1属1種のみからなる。

オニアジの特徴はいくつかあるが、最大の特徴はその小離鰭(しょうりき)である。この鰭は背鰭および臀鰭の後方にある小さな鰭のことで、サバ類では顕著であるが、アジの仲間ではムロアジ属が背鰭と臀鰭後方にそれぞれひとつもっているくらいで、あまりこの鰭を有する種は多くない。複数個有しているのはオニアジくらいのものである。この特徴によって、ほかのアジ科魚類とは容易に識別可能である。

このほか稜鱗(ぜんご、ぜいご)の形状もほかのアジ科魚類とは大きく異なっている。マアジやムロアジの仲間と比べると明らかに幅の広い稜鱗があり、この形質でも容易に見分けることができるだろう。写真などから同定するしかない場合は、小離鰭が広がっていないことがあるため、この形状をもとに同定するのが早いだろう。

顔つきはマアジよりもどこかシャープで「捕食者」的であるが、実際に肉食性が強いようである。眼は脂瞼に覆われているように見える。

オニアジは熱帯性のアジ科魚類であるが、日本においても主に宮崎や鹿児島県などで水揚げされている。この個体も鹿児島県で水揚げされたもので、当地ではそこそこ水揚げがあるようだが、「大隅市場魚類図鑑」によれば、鹿児島県内之浦湾においては成魚の漁獲はまれであるという。ただし幼魚は夏~秋にかけてまとまった数が漁獲されているという。日本における分布域は津軽海峡以南の日本海岸、相模湾以南の太平洋岸、瀬戸内海、琉球列島となり、海外ではインドー西太平洋の広域に分布している。身は赤みをおびてかなり美味、熱帯では重要な食用魚とされている。この個体は鹿児島県産で田中水産社長の田中積さんより。いつも、ありがとうございます^^

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