古い倉庫を始末し、新しく設置した際、古い倉庫から出てきた本の一。
(1)解説によれば、ウンディーネは、ラテン語のunda(波)に語源をもつ水の妖精で、ルネッサンス期のパラケルスス(A・T・Paracelsus、解説ではパラツェルズス)がウンディーナundinaと名づけた。独語読みでウンディーネUndineとなる。仏語読みではオンディーヌondine、フランスの作家ジャン・ジロドゥーはフーケの作品を翻案して、しかし独自の戯曲『オンディーヌ』をものしたらしい。
本書はドイツ・ロマン派の代表作とされる。
(2)魂を持たぬ妖精が、人間と愛し合うことで魂を得る。魂を得ることで、妖精の時には知らなかった悲しみ、悩みを抱くにいたるが、ウンディーネは後悔しない。
妖精の、魂をもたぬ状態は、田村隆一がうたう「言葉のない世界」(言葉なんか覚えるじゃなかった・・・・)に正確に対応するだろう。アヴェロンの野生児を引き合いに出すまでもなく、言葉は人間の人間たらしめる要素である。
言葉と魂とは二にして一である。
してみれば、ウンディーネは言葉を知ることで魂を得るにいたったのだ。
(3)しかし、言葉がなかみを伴わないときもある。その時、言葉は魂を置き去りにし、あるいは逆に魂が言葉を置き去りにする。別の女に心を移し、夫という言葉だけを残した騎士フルトブラントがそのケースだ。
ところが、ウンディーネは依然として騎士フルトブラントを愛し続け、不倫相手のベルタルダの身をも気遣う。切ないではないか。
□フリードリヒ・バローン・ド・ラ・モット・フーケ(柴田治三郎・訳)『水妖記(ウンディーネ)』(岩波文庫、1938/改訳、1978)
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