語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【櫻井よしこ】隙あらば侵略の機会うかがう中国/冷静かつ力に基づく戦略を取る日本

2016年08月29日 | 社会
 (1)悪貨は良貨を駆逐する、といわれる。
 だが、中国が席巻するアジアにしてはならない。いま、私たちはその岐路に立っている。

 (2)8月24日、日中韓外相会談に続いて、岸田文雄・外相は東京で中国の王毅・外相と会談した。岸田氏が「中国公船」が尖閣諸島周辺で相次いで領海侵入をしていると抗議すると、王外相は尖閣諸島は中国領だと、従来どおりの主張で反論、記者団に「事態は基本的に正常な状態に戻った」と述べた。

 (3)いかにも中国らしい主張ではないか。王氏は、駐日大使だった時、東京・有楽町の外国特派員協会などを舞台に尖閣諸島や東シナ海問題について偽情報を流し続けた。国際社会に中国の主張を浸透させるためのデマゴーグとはいえ、驚くべき虚言外交だった。
 そこで、王外相いわゆる「正常に戻った」発言の実態を明確に認識する必要がある。確かに、リオデジャネイロ・オリンピックの開会式に合わせて押し寄せた公船15隻と漁船300隻は、これまでどおりの規模、公船3隻と漁船数十隻に戻っている。だが、彼らは25日現在22日連続で尖閣の海を航行中だ。
 <王外相のいう「平常」は中国海警局の公船と海上保安庁の巡視船がにらみ合いを続けている状態なのでしょう>【砥板芳行・沖縄県石垣市議会議員/防衛協会幹部】
 中国が侵略的行動を繰り返し、海上保安庁が警戒し続ける状態を、王氏は「平常」と呼ぶわけだ。
 <本土の人たちが考える以上に、沖縄の海は中国に侵食されつつあります。中国の調査船はわが物顔で日本の海の調査をします。一群の軍艦が沖縄本島と宮古島の間を航行して存在感を見せつけます。こうしたことを通して、彼らは自らのプレゼンスを沖縄の海で常態化しているのです>【砥板氏】

 (4)こうしたなか、8月24日にも尖閣の海に人民解放軍の軍艦が入ったという。しかも、それは久米島周辺の接続水域だという。
 久米島は尖閣諸島の魚釣島から東に410km、沖縄本島に近い。事実なら海上警備行動発令になろう。
 海上保安庁も防衛省もこの情報は全否定したが、6月9日、尖閣諸島周辺海域に中国の軍艦が初めて侵入したのは記憶に新しい。それまで海警局の公船だったのを、中国は一気に軍艦を送り込んできた。このことを各全国紙は一面で伝え、尖閣情勢が新たな緊張の段階に入ったと解説した。

 (5)中国の動きは止まらない。8月15日には、鹿児島県口永良部島周辺の領海に、16日には尖閣諸島の東大東島の接続水域に、中国の軍艦が侵入した。
 ここまでは大きく報道されたが、その後、中国軍艦侵入の情報は伝わってこない。

 (6)自衛隊と海保は、いかにして日本の海を守っているのか。中国が30万人規模の海上民兵隊をつくり、隙あらばと侵略の機会をうかがっているなかで、中国の野望を阻止するために、日本が実施しているのは意外にも力に基づく戦略だ。ただ、日本の対応は極めて冷静かつ沈着だ。
 <中国が10隻の船を出せば、わが方は12隻出す。中国が戦闘機2機を出せば4機出すという具合です。力を見せつければ日本は引っ込む、という誤解を中国に与えないためです>
 この関係者の言葉は、各局面で日本は、国防に関して絶対に妥協しないという決意を示し続けることで、中国に誤解させない、ということを示している。この姿勢はしかし、自衛隊と海保の予算を増やさないと続けられない。

□櫻井よしこ「隙あらば侵略の機会うかがう中国 冷静かつ力に基づく戦略を取る日本 ~オピニオン縦横無尽No.1147~」(「週刊ダイヤモンド」2016年9月3日号)
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 【参考】
【櫻井よしこ】容易に匿名報道に走るメディアの問題 ~相模原の障害者施設殺害事件~
*【櫻井よしこ】南シナ海問題で国際法無視の中国 ~
【櫻井よしこ】中国、裁定直後フィリピンを恫喝 ~強める軍事的色彩~
【櫻井よしこ】南シナ海問題で完敗でも拒否する中国 常軌を逸した習近平体制の暴走
【櫻井よしこ】米でも絶賛の中国の要人が豹変 ~永遠なのは国益~
【櫻井よしこ】西側は自国第一主義を深め、中国は民主主義の限界に自信を深める ~英国のEU離脱~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(2) ~商売上手な中国、政治主導の経済~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(1) ~踏んだり蹴ったり~

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