語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】糖質制限で筋肉が低下/やせるメリット&死亡率上昇リスク ~食の安全~ 

2016年08月02日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)糖質とは、食物繊維以外の炭水化物の総称。タンパク質や脂質と同じく体内のエネルギーとなる。ご飯、パン、お菓子などに含まれる炭水化物(糖質)を制限すると痩せるというのが糖質制限ダイエットだ。ご飯が中心の日本人の食生活にとって、そのご飯を半分にするだけで簡単にできるのも魅力だ。
 どんな食事療法だと体重減量効果があるか。イスラエルにおける試験によれば、開始2年の時点で、
  (a)カロリー制限なしで炭水化物を控えた→平均マイナス4.7kg
  (b)脂質を総カロリーの30%に控えた→平均マイナス2.9kg
 脂質制限より糖質制限のほうが体重が減る効果が大きかった。
 だが、別の研究では、糖質制限と脂質制限の体重減量効果に差は少ない。

 (2)糖質を制限するほど、糖尿病の指標となるHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)の値は下がるが、体重はそれほど減らない。内臓脂肪も、男性は減るが、女性は減らない。
 糖質制限すると、食欲抑制が起こるため、総エネルギー摂取量も抑えられることが多い。

 (3)糖質制限下でタンパク質不足になる場合、筋肉量低下の危険がある。
 糖質がほとんど摂取されていない状態だと、糖を必要とする赤血球のために“糖新生”によって肝臓で糖を作る。この材料となるのがタンパク質に含まれるアミノ酸。糖質制限下では通常より多くのタンパク質が必要になるのだ。それなのにタンパク質不足だと、特に高齢者の場合は、筋肉が壊れていくサルコペニアの危険がある。
 さらに、一般的には糖質過多で制限の必要があるとされる糖尿病患者の場合でも、薬との相性があったり、合併症の度合いによっては腎臓の悪化が進んだりする場合があるので、必ず専門医への相談が必要だ。

 (4)健康な人が行うダイエットでは糖質をどこまで減らせばいいのか。
 全米で注目された厳しい糖質制限は、糖質を1食20~40gにするとしたアトキンス医師の説。
 少し緩めのバーンスタイン医師の説では、1日の摂取絵量は130g以下だった。130gは、日本人の1日の平均摂取量の半分だ。
 糖質制限は健康にどう影響するかは定説がない。長期的には死亡率が高まるのではないか、などといろいろな懸念も生まれてきている。
 糖質を制限するほど死亡率が上がるという海外の研究も多くある。それによると、最も長生きなのは総エネルギーに対して糖質が45~60%のようだ。日本人の平均摂取値が55~60%なので日本が長寿国なのも納得できる。

 (5)結局のところ、糖質制限により食欲抑制が働けば、カロリー制限と同じことだ。痩せるかどうかはエネルギー摂取量にあるという意見もある。
 要はファッショントレンドと同じ。新しいエネルギーコントロールとして糖質制限が注目されているだけ。
 健康維持のためには、まず肥満指数(BMI)25を超えないようにすること。その方法は、糖質制限にこだわらなくてもいい。食べすぎを矯正したり運動したりするだけでも効果が出る。

 (6)糖質制限のメリット、デメリット(総括)。
  (a)メリット・・・・ダイエットしたいとき、開始してすぐ体重が減り、効果が出やすい。血糖値をコントロールできるので、正しく行えば糖尿病の改善効果がある。糖質ととると分泌されるインスリンは別名「肥満ホルモン」で、それを抑制できる。カロリーを気にする必要がなく、タンパク質と脂質の摂取を制限しなくても体重が減る。そもそも縄文時代は糖質制限食で、日本人本来の食に近い。
  (b)デメリット・・・・食欲が落ち、結果としてエネルギー不足で疲れやすくなる。厳しい糖質制限では筋肉が減ってしまう場合もある。糖質制限をするほど死亡率が高まる。糖質制限の効果を科学的に調べるのは難しく、結論はでていない。糖質を過度に制限した結果、高死亡食になり動脈硬化を促進する。

□石臥薫子・柳堀栄子(編集部)「糖質制限で筋肉が低下 やせるメリットの一方、死亡率が上がるリスクも ~食の安全~」(「AERA」2016年7月25日号)
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 【参考】
【食】甘いが低カロリー、偏食に要注意 ~果物~
【食】1日3杯までなら死亡リスクを低下させる ~コーヒー善玉説~
【食】トランス脂肪酸は10年前の10分の1 ~マーガリン~
【食】グルテンの中毒性、仮説を明確に否定 ~パンやうどん~
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