新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

温顔との別れ

2009年01月06日 11時22分17秒 | 身辺雑記

 昨夜、Yさんの通夜があった。83歳。

 私にとっては、忘れがたい大先輩だった。大変にお世話になった。遊びもにも誘ってもらった。

 経営上の面で、絶対に怒らせてはいけないKさんを、私が怒らせてしまったことがあった。

 その折り、Yさんにうまく収拾してもらった。だから首が繋がったようなものだった。

「どうせ無理を言うだろうが、怒らせずに断ってこいよ」 Yさんの指示であった。

 怒らせずに拒否するだけのことなら、日常的にいつもやっている。さほど難しいことでもない。

 たがKさんは、特別面倒臭い人であった。誰も苦手としていた。権力を笠に着て、ムチャクチャに押し込んでくるタイプだった。理屈は通用しないのだ。

 その日も、例のごとくゴリゴリと要求してきた。多少のことなら、こちらはヌラリクラリと逃げ帰ってくるのだが、その日のKさんは、いつになく無礼で執拗だった。

「子供の使いじゃあるまいし、そんなことを言うためだけに出てきたのか!」 

 罵詈雑言に近い言葉をぶっつけられた。繰り返し繰り返しぶっつけられた。

 通常なら、その程度であればほどほどに逃げ回るのだが、「子供の使いじゃあるまいし・・・」のセリフに、私は暴発してしまった。

 今までの思いの丈を、精一杯ぶちまけてしまった。しかも、私は席を蹴って外へ出てしまったのだ。

 Kさんの部下が、すっ飛び出てきた。

「そう怒らずに、話し合いをしましょうよ」 部下の方は、至極穏当な態度だった。

 ところが、冷静でなければいけない立場の私が、すっかり頭へ血が上ってしまっていた。誰の意見も聞きたくなかった。過去はこんなことはなかった。初めてのことだった。

 席へ戻ることはしなかった。決然として席を立つ・・・そんな感じだった。

 しかし、すぐに反省が私を襲った。

「エライことをしてしまったなあ」 

 もはや、覆水は盆に帰らずだった。

 戻った私は、一部始終をYさんに報告した。すぐにバレることだったので、隠しきれる話ではなかった。

 私の報告を全部聞き終わってから、

「ふーん」とKさんは言った。

「もう言っちゃったンだから、しょうがないよなァ」 それだけを言って、あとは呵々大笑。

 あの呵々大笑が、私をどん底の気分から救ってくれた。

 次回からは失敗すまいと、心に誓った私であった。

 その後のYさんは、大きな国家プロジェクトの責任者にもなった。

 成功したり失敗したりで、気苦労が多かったと聞いていた。

 お通夜の席で、遺影の温顔を見ながら、昔のことを思い出していた。

 冬にしては、暖かい夜であった。

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コメント (14)
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