男は色香に弱いものです。すぐに惑わされます。これは男の一般論です。
しかし、これから述べることは、一般論ではありません。ある男性の実話です。
このブログでは、「その男」とでも申しておきましょうか。
その男も、一般的な男性と同じように、色香に惑わされ易かったようでした。
その男は私同様、酒に溺れることはありません。
何故って、あまり飲まないからです。つまり、飲めないのです。
「いやあ、酔っぱらっていたものですから、つい……」
こんな事態に陥ったことはありません。どんな不始末でも、正気の沙汰なのです。
飲めないくせにカラオケが大好き。チョッピリ飲んで、ガンガン唄います。
カラオケボックスには、あまり近づかなかったようですね。スナック派でした。
つまり、歌を褒めてくれる女性がほしかったのです。
仲間だけの場合、誰もその男の歌を褒めません。もともと下手ですから、褒めないのが当たり前なのです。
不思議なことに、その男も、仲間に褒められるのが嫌だったようです。揶揄されたように思ってしまうのでしょうね。
それでいて、スナックの女性に褒められると、とても嬉しそうでした。
営業上の褒め言葉と知っているので、すんなり受け止められたのでしょう。嬉しそうにしながら、すぐに次の歌を探しておりました。
褒め上手の店には、一人でも出かけます。
しかも、開店早々の時間を狙います。ほかの客がいては、唄い難いからです。
そんな繰り返しは、歌だけで済まなくなります。いくら酒を飲まなくても、色香に対しては人並みの感性はあります。いや、アルコールが入っていないので、呑兵衛よりも鋭敏だったかもしれません。
居酒屋風の某スナックに通い詰めたことがありました。客が数人で満席になる店です。仮に、「Q」とでも言っておきましょうか。
「Q]は二次会の客を狙っているので、開店早々に客はおりません。そんな時間帯は、ママさん一人が下拵えなどをしています。
歌を唄いやすかったので、その男は足繁く通いました。
ママさんは当然褒め上手。気分よくあしらってくれたようです。
デュエット曲も唄い放題です。
ママさんからもデュエット曲のリクエストがありました。新曲の場合は、二人で繰り返して唄ったようです。
並んで唄うのですから、木石たる男でも心は動きます。和服に割烹着姿。まさにその男の好みでした。
よく現れる男性がおりました。何処にでもいそうな中年紳士です。
ある夜のことです。
いつもより少し遅い時刻に、その男が「Q]へ入って行きました。
驚いたことに、夕べもママさんと練習していたデユエット曲が流れていました。
中年紳士とママさんが唄っていたのです。ママさんの歌い方には、いつもよりも情感が豊かでした。
「ム、ム、ム・・・」
その男の心にジェラシーが燃え上がる前、間髪を入れずにママさんが言いました。
「あーら、今夜は遅かったのねえ。紹介しますね、コイツ、あたしの亭主です!」
さすがに歴戦のママさん。タイミングを上手く捉えた一発でした。
「いやーよろしく……」
その男は名刺などを出して……。とても見られた光景ではありませんね。
もちろん次の夜から、その男の「Q]通いはストップしたとのこと。
臘梅の香に惑はされ惑はされ 鵯 一平
他愛ない話でご免なさいね。
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