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【金曜恒例】反原発北海道庁前行動(通算343回目)でのスピーチ/映画「おだやかな革命」を見て

2019-06-30 14:32:27 | 原発問題/一般
 皆さんお疲れさまです。この1ヶ月間、JR北海道の運賃値上げ問題で忙しく、1ヶ月ぶりの参加になってしまいました。

 先週土曜、22日に江別市の「えべつ環境広場2019」という環境問題関係のイベントがあり、その中で「おだやかな革命」という映画の上映会がありました。2018年2月の公開からすでに1年4ヶ月も経っていますが、首都圏などでは市民による自主上映が息長く続けられている作品です。北海道での上映会は、江別がおそらく初めてだと思います。環境問題ジャーナリストの木村麻紀さんという方が「変革はローカルから始まっている ~映画「おだやかな革命」に見る、「幸せな経済」のつくり方~」というネットニュースの記事で紹介をされていて、それ以来ずっと見たいと思っていた映画です。

 この作品は、再生エネルギーを中心に自立循環型経済を目指している地域とそこに暮らす人々の意欲的な取り組みを描いたものです。初めに福島県の会津電力が登場します。会津電力は、喜多方市で江戸時代から続く老舗の酒蔵「大和川酒造店」の9代目経営者、佐藤彌右衛門さんを中心に、地元金融機関や有志が資金を出し合って設立した太陽光発電の会社です。会社設立に当たり、佐藤さんは「東京に電力を送ることが晴れがましかった時代もあった。会津の電気が山手線も東京タワーも動かしている。若者はこぞって東京を目指した。そうやって地方はヒト、モノ、カネのすべてを東京に吸いとられてきた。これからは会津の自然を利用したエネルギーの自給を目指す。東京電力が持っている猪苗代湖などの水利権もいずれ買い戻す。会津はエネルギーで自立するんです」と熱く語っています。太陽光発電事業はすでに始まっており、私はこれを原発事故で取り返しのつかない被害を受けた福島からの、電力の「植民地解放」運動だと思っています。

 佐藤さんに刺激を受けて、飯舘村でも「飯舘電力」が設立され、電力事業が始まりました。設立の中心的役割を果たしたのは全村避難で一時、宮城に避難していた小林稔(みのる)さんです。小林さんは、避難住民が戻ってきた後の飯舘村では当分、農産物を売ることは難しいため、太陽光発電を村の主力産業に育てたいと思いを語ります。

 岐阜県郡上(ぐじょう)市石徹白(いとしろ)集落では、地元で出資を募って小水力発電所の会社を設立しました。都会からの移住者が再生エネルギーで動いたのをきっかけに、地元の特産物を生かしたカフェができ、休眠状態だった農産物加工所が復活するなどの変化が生まれています。子育て世代の移住が進み、このままでは廃校といわれていた小学校の存続も見え始めたといいます。懐かしさを感じさせる木造の用品店もオープンしました。

 秋田県にかほ市では、生活クラブ生協と提携し風力発電事業を始めています。交流事業でトマト栽培も始まり、ここで採れたトマトは生活クラブが全量買い上げることになっています。

 岡山県英田(あいだ)郡西粟倉(にしあわくら)村は鳥取県との県境にある典型的な辺境の村ですが、木質が悪いためCランクとして二束三文にしかならない木材を売るのをやめ、その木材を燃やして温泉を湧かしたことで、観光客が訪れるようになり村が活性化しました。

 この映画に登場する地域の関係者が揃って口にするのは「大きなシステム依存からの脱却」であり「食料とエネルギーを自前で持つこと」です。当たり前の話ですが、この2つを外部に依存するのと自分たちで持つのとでは全く違います。西粟倉村の関係者が「貨幣経済の力が落ちているときこそこのような自立循環型経済に踏み出すチャンス」と述べていたのが印象に残っています。まさかこの映画の登場人物から脱貨幣経済というキーワードが飛び出すとは思っていませんでした。「おだやかな革命」は、その意味ではまさに反資本主義映画であり、革命映画だと思います。

 岐阜県石徹白集落への移住者が「未来とは懐かしさなのではないだろうか」と述べていたことも強く印象に残りました。思えば私たちは、今までにない、新しいことをするのが未来だと思っていました。AI(人工知能)、自動運転など現在の延長線上に新しいことに取り組んでいくことが未来だと信じ込まされてきたと思います。でも私はこの言葉を聞いて目が覚めた気がしました。人類に幸福をもたらすかどうかもわからない、得体の知れないことに取り組むのが未来なのではなく、近代化、工業化、科学化の中で奪われ、失われていったものを取り戻す営みの中にこそ未来があるのだというメッセージだと思います。

 この映画に登場する人々の、どこか懐かしく、淡々としているけれど、それでいて力強くしなやかな言葉やメッセージを聞いているうちに、旧時代の異物と化した支配装置としての自民党は倒すものではなく溶かすものなのかもしれないと思いました。重工業化、一極集中、大量生産、大量消費から多極分散、自立循環型経済へ下部構造そのものを変える営みの中で生き生きとしている女性や若者たちの笑顔を見ていると、いずれこの笑顔の中で自民党は溶けていくのではないかという気がします。「おだやかな革命」、非常におもしろい映画であり、ぜひ皆さんも見ていただきたいと思います。劇場公開はされていないので、自主上映に取り組むのもいいと思います。

 最後に、この映画では触れられていませんが、ひとつだけ私が気づいたおもしろい点に触れておきます。今回、この映画に登場した地域には1つの共通点があります。福島県喜多方市は磐越西線、秋田県にかほ市は羽越本線、石徹白集落のある岐阜県郡上市は長良川鉄道(旧国鉄越美南線)、そして岡山県西粟倉村は智頭急行と、すべて鉄道が通っていることです。私はこれを決して偶然とは思いません。人口減少時代を迎える中で、移住者、交流人口を増やすためには一定の輸送力を持った交通手段が必要です。地域興しをしたくても、人の出入りもできないような不便な地域では不可能です。日本では、鉄道が道路や空港、港湾のような公共財、社会資本として扱われてきませんでした。それは今も変わらず、鉄道は「残したいと思っている地域住民と民間企業が勝手にやるもの」だという不当な扱いを受けています。しかし、だからこそ鉄道のある地域はそれを宝物として扱い、輸送力が大きい代わりにコストもかかる鉄道をアイデアと行動力で維持してきました。そのアイデアと行動力が、ここに来て一斉に花開いてきているのだと思います。北海道も今、鉄道が非常に苦しい局面を迎えていますが、今ここで地域が一丸となって鉄路を残すことができるなら、10年後、20年後に北海道が勝ち組になり、豊かで明るい未来が訪れることを、これらの事例が示しているように見えます。

 さて、私から最後に皆さんにお知らせがあります。来週月曜、7月1日に国の運輸審議会が行うJR北海道の運賃値上げに関する公聴会で、私は3人の公述人の1人として意見陳述することが決まっています。公述書の内容をお手元にお配りしています。当日は道民代表としてがんばりたいと思います。

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