安全問題研究会~鉄道を中心とした公共交通を通じて社会を考える~

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こんなにおかしい!ニッポンの鉄道政策
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震災被災のJR山田線、三陸鉄道へ譲渡(地方への押しつけ)か

2014-02-13 21:59:50 | 鉄道・公共交通/交通政策
山田線の三鉄移管を正式提案 JR東、具体策示さず(岩手日報)

東日本大震災で被災した岩手県・山田線について、JR東日本が復旧費を全額負担するのと引き替えに、三陸鉄道へ譲渡する方針を決め、地元に正式に提案した。

当ブログは、この提案をJRによる「体のいい地元譲渡という名の切り捨て」なのではないかと危惧している。もちろん、山田線を間に挟んで南北に分断されている三陸鉄道が1本の路線としてつながり、一体運行ができることにはそれなりのメリットもあろう。だが、実際問題、山田線の三鉄移管によるメリットとして想定できるのは「一体運行」程度ではないだろうか。

リンク先の記事にあるように、三鉄による運行案が実現しても、事業者サイドから見れば保線費用の増加、乗客サイドからは運賃の増加が見込まれる。自治体の出資割合など調整の課題は山積しているが、なんといっても保線費用をどうするかが最大の焦点だろう。特に、山田線宮古~釜石間は開業が1939(昭和14)年と古く、1972(昭和47)年に開業した宮古線(現・北リアス線)と比べても圧倒的に古い。保線も手間がかかる路線であり、JR東日本からすれば「厄介払い」といえなくもない。

このような事態を招いた原因が、黒字事業者には災害復旧費が補填されない現行制度にあることは疑いがない。黒字企業であるJR東日本に国庫補助が適用されないからだが、JRにも災害復旧費の補助ができるよう、自民党内で非公式な検討が始まったとの話も聞く。未曾有の大災害の中で、、交通インフラとしてのJRはどのようにあるべきか、国民的議論をすべき時だろう。

なお、安全問題研究会は、これまで数度にわたり、JRにも災害復旧費の国庫補助を行うよう国土交通省に要請・申し入れを実施している。内容は、こちらから見ることができる。特に「鉄道・運輸機構の剰余金の取り扱いに関する要請書(2010年11月12日)」で災害復旧費に関する国庫補助制度の問題について詳しい要請を行っている。今回の問題を考えるに当たり、要請書の内容を再掲載するので、これを機に読者の皆さまもお考えいただけると幸いである。

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鉄道・運輸機構の剰余金の取り扱いに関する要請書

安全問題研究会

 当会は、各鉄道の安全や地域公共交通の存続及び利便性向上のための活動を行う鉄道ファンの任意団体です。これまで、国内各地の鉄道を初めとする公共交通に乗車して点検を行う活動、鉄道事故の原因調査や学習会などを通じて安全問題や地方ローカル線問題の検討を行ってきました。

 こうした中、最近の厳しい財政状況を受け、鉄道・運輸機構が抱える巨額の剰余金について、会計検査院、財務省から返還が求められる事態となっています。しかし、下記に示した理由から、当会はこの巨額の剰余金を、鉄道を中心とした公共交通政策のために生かすべきだと考えます。

 この趣旨をご理解の上、ぜひ実現していただくよう要請します。

 記

【要請内容】

 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下「鉄道・運輸機構」という。)が保有する約1.2兆円の現金資産については、国に返納せず、鉄道・交通政策のための原資とすること。特に、鉄道の安全対策、災害復旧、ローカル線対策のために、この資金を活用して所要の措置を講ずること。

【説明】
 旧国鉄は、1949年の日本国有鉄道法施行に伴い、旧運輸省鉄道総局が行っていた官営鉄道事業が公共企業体として分離され発足した。このとき政府が国鉄に出資した資産を引き継いだのが、鉄道・運輸機構の剰余金である。

 一方、1986年、国鉄分割民営化のための関連法案が審議されていた参議院国鉄改革に関する特別委員会で、法案可決に当たって行われた付帯決議の二として「各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと」が掲げられている。これは、国鉄の解体によって、大規模な自然災害の際の復旧工事費や安全投資のための資金拠出が困難になることが予想されたため、政府にそのための財政措置を講ずるよう求めたものだが、災害によって鉄道の復旧が必要となった際に、鉄道会社からの申請でその都度、復旧費を手当てするという対応が続けられ、鉄道会社が災害復旧のため、いつでも引き出して使えるような恒久的財源としての災害復旧基金の創設は、今日に至るまで行われていない。

 その結果、旧国鉄特定地方交通線転換第三セクター鉄道の中にも、高千穂鉄道のように災害からの復旧ができないまま廃止に追い込まれるものが出始めた。災害復旧費の政府からの補助がほぼ受けられないJRでも、ローカル線が災害で不通となるたびに、復旧に数年もかかるような事態がしばしば見られる。当会が把握している限りでも、1990年の豊肥本線の水害では復旧に2年半近くを要したほか、1995年に発生した大糸線の水害では2年以上、最近のものに限っても、越美北線は2年以上、高山本線はほぼ3年近くかかっている。

 復旧に時間を要する路線は地理的条件の厳しい地方の山間部であることが多く、JRの鉄道が唯一の生命線という地域が多い。公共交通である鉄道での長期間の不通は、地域社会に大きなダメージを与えている。

 国鉄解体から23年が経過し、今、JRの多くの地方交通線は、地方の衰退と人口減少により、当時の特定地方交通線と同程度かそれ以下の営業成績に落ち込んでいる。国鉄再建法の特定地方交通線選定基準(輸送密度~1日1キロメートルあたり輸送人員~4000人未満)を現在のJR線に当てはめて「特定地方交通線の再選定」を行うとしたら、JRの地方交通線の半分程度は消えかねないというところまで追いつめられている。今年7月から土砂崩れで不通が続いている岩泉線(岩手県)に至っては、2005年度の輸送密度がわずか85人と記録されており、廃止して代替交通に転換する場合、タクシーでも間に合うと考えられる。

 このようなローカル線を全国のあちこちに抱えながら、JR各社は補助金の支給対象から外され、ローカル線の復旧も原則として自前で資金調達して行っている現状にある。

 鉄道・運輸機構に1.2兆円の財源があることが判明した以上、この剰余金を全国の鉄道事業者が安全向上、自然災害からの復旧あるいはローカル線支援のために引き出して使える基金に改組することこそ、鉄道の未来を見据えた真の交通政策であると当会は考える。

(以  上)

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