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幅広い受容を狙った聴きやすい作品だが、最後までフリージャズを隠すことはできず

2013-09-25 10:21:42 | 音盤ノート
The Art Ensemble of Chicago "The Third Decade" ECM, 1984.

  ジャズ。The Art Ensemble of Chicagoはフリージャズ系ということになっている(参考)が、このアルバムはタイプの異なった短い曲(10分以内に収まる曲が6曲)を収録しており、彼らを一枚だけ聴いてみたいという人には良いだろう。彼等の他のアルバムと比べると大人しすぎるともいえるが、この聴きやすさは魅力である。

  一曲目の‘Prayer For Jimbo Kwesi’は、雲間から差す光のようなシンセサイザー音をレイヤーにして、管楽器が次々と現れてはソロをとるという静かに盛り上がる曲。次の‘Funky AECO’ではタイトル通りファンク風のエレクトリックベースが反復する。三曲目‘Walking In The Moonlight’はちょっと間抜けな感じもある甘めのスローバラード。四曲目‘The Bell Piece’は金属系の打楽器が明滅する上で、フリー系のサックス、次にちゃんとしたメロディを奏でるトランペットという順序でソロが現れる。五曲目‘Zero’はマイナーコードの8ビートジャズで、チャールズ・ミンガス的な湿っぽさがある。最後の‘Third Decade’は祝祭的な打楽器で始まり、徐々にフリー演奏が繰り出されてカオスとなる「彼ららしい」曲となっている。

  ECMがヨーロッパ路線を採る直前の、まだ米国ジャズ演奏家が大量に在籍していた頃の貴重な録音であり、この時期に残された、レーベルが持つシャープで熱気を欠いた録音スタイルと「本当の姿はもっと熱い」はずのプレイヤーとのギャップが面白い作品群のうちの一つである。
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