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1990年代から2000年代にかけてのテレビ番組と音楽市場の多様性を測る

2024-09-10 09:55:09 | 読書ノート
浅井澄子『コンテンツの多様性:多様な情報に接しているのか』白桃書房, 2013.

  日本語タイトルからは分かりにくい──英語タイトルにはbroadcastとmusicの語が入っている──が、テレビ放送における番組ジャンルの多様性と、CDやダウンロード音源などの形態で市場に流通する音楽ジャンルの多様性、この二つについて量的に検証する専門書籍である。なお数式が出てくる。対象期間は主に1990年代から2000年代までである。

  前半ではテレビ放送の多様性を検証している。米国では1960年年代半ばから1990年頃まで、三大ネットワークの独占力を削ぐための規制があった。しかし、規制者の意図に反して、番組ジャンルの多様性は規制があった期間中に減少していったという。日本では、視聴者の需要よりも広告主や放送局の財政状況が番組編成に影響するとのこと。パブル経済が崩壊して以降、テレビ局の収入が減ってドラマ(高価)を製作することができなくなり、バラエティ番組(安価)に置き換わっているらしい。また、BS放送の導入は、一つのテレビ局内の多チャンネル化をもたらし、番組の多様性をもたらすこととなったとのこと。

  後半では音楽ジャンルの多様性を検証している。日本における、CD販売のピークは1990年代後半である。新譜数と新人数で測られた多様性については年によって増減することがあるものの、それらは経年的に蓄積されてアクセス可能となるので市場全体として多様性は増加しているとする。このほか、CDの売上は発売直後の第一週に集中してその後は下降線をたどること、CDレンタルやダウンロード販売は(CDの購入より安価であるため)実績の少ないアーティストの音源にアクセス機会を提供していること、などについて議論されている。

  以上。コンテンツについて量的に検証することを試みる向きには重要な研究書籍だろう。ただし、統計手法の説明があっさりしていて、わからないところもあった。また、ハーフィンダール・ハーシュマン指標(HHI指標)という多様性を測る指標が開発されていることを初めて知った。詳細は原典に当たる必要があるが、本書の説明を読む限りでは図書館の所蔵にも適用可能な指標であるように見える。
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