Takashi Yoshimatsu "Yoshimatsu: Piano Concerto "Memo Flora"" Chandos, 1998.
クラシック。NHKの大河ドラマ「平清盛」のサントラで知られるようになった、現代音楽作曲家の吉松隆の作品集である。ピアノ協奏曲 ‘メモフローラ‘以下、‘鳥は静かに (And Birds Are Still …)‘ ‘天使はまどろみながら… (While an Angel Falls into a Doze...)‘ ‘夢色モビ ールⅡ(Dream Colored Mobile II)‘ ‘3つの白い風景 (White Landscapes)‘というタイトルが付けられた、オーケストラによるゆったりしたテンポの曲が多く収録されている。このアルバムは英国クラシックレーベルのChandosからで、オケはManchester Camerata、レコーディングも英マンチェスターである。日本人演奏者も参加しており、指揮者は藤岡幸夫、ピアノは田部京子となっている。日本盤はない。
で、今さらなぜ1998年のこの録音なのかというと、最近見たYouTubeチャンネルで収録曲の‘メモフローラ‘の第一楽章終盤が紹介されていたからである。オーストラリアのTwo Set Violinというデュオによる、2020年の”5 Contemporary Composers You Should Definitely Check Out”という動画である(下記リンク参照)。そこでは「アニメのサントラっぽい」という紹介のされ方がなされており(動画ではジブリに言及している)、見ている人は久石譲に近いタイプだろうと思ったはずだ。確かにミニマルミュージックを通過した叙情性という点は共通しているけれども、久石のほうがずっと素朴で抑制が効いている。一方、吉松のほうは豪華絢爛で情動全開である。上に記した曲名からも「この乙女チックな趣味はいったいなんなんだ」と感じるだろう。そういったべたべた甘々でやりすぎなところこそが彼を抜きんでたものにしている。
このアルバム、個々の収録曲は優雅で美しいのだけれども、CDで通して聴くと大人しめの曲ばかりでメリハリがあまりなく、少々退屈に感じなくもない。一方で、交響曲など他のオーケストラ曲で見せる過剰さや暴力性(タルカス編曲版含む)は控えめなので、通して聴きやすいとも言える(メリハリがある曲は音量が気になるんだよね)。なお、収録曲はすべてストリーミングで聴くことができる。個人的には、こぼれ落ちるような悲しみをベタに聴かせる弦楽アダージョ‘鳥は静かに‘ がいいかな。
ちなみに下のTwo Set Violinが紹介した他の四人の作曲家は、アルヴォ・ペルト、マイケル・ナイマン、デビッド・ラング、マックス・リヒターだった。ペルトとナイマンは1980年代にはすでに注目されていたので今さら感があるのだが、若い演奏家にはあまり聴かれてこなかったということなんだろうか。デビッド・ラングについても、1990年代から評論家受けはしていたというイメージがある(最近では久石譲が日本に紹介している)が、得意の変拍子がとっつきにくいのか、大衆受けはしていない。というわけで、マックス・リヒターだけが初めて知る作曲家だった。
クラシック。NHKの大河ドラマ「平清盛」のサントラで知られるようになった、現代音楽作曲家の吉松隆の作品集である。ピアノ協奏曲 ‘メモフローラ‘以下、‘鳥は静かに (And Birds Are Still …)‘ ‘天使はまどろみながら… (While an Angel Falls into a Doze...)‘ ‘夢色モビ ールⅡ(Dream Colored Mobile II)‘ ‘3つの白い風景 (White Landscapes)‘というタイトルが付けられた、オーケストラによるゆったりしたテンポの曲が多く収録されている。このアルバムは英国クラシックレーベルのChandosからで、オケはManchester Camerata、レコーディングも英マンチェスターである。日本人演奏者も参加しており、指揮者は藤岡幸夫、ピアノは田部京子となっている。日本盤はない。
で、今さらなぜ1998年のこの録音なのかというと、最近見たYouTubeチャンネルで収録曲の‘メモフローラ‘の第一楽章終盤が紹介されていたからである。オーストラリアのTwo Set Violinというデュオによる、2020年の”5 Contemporary Composers You Should Definitely Check Out”という動画である(下記リンク参照)。そこでは「アニメのサントラっぽい」という紹介のされ方がなされており(動画ではジブリに言及している)、見ている人は久石譲に近いタイプだろうと思ったはずだ。確かにミニマルミュージックを通過した叙情性という点は共通しているけれども、久石のほうがずっと素朴で抑制が効いている。一方、吉松のほうは豪華絢爛で情動全開である。上に記した曲名からも「この乙女チックな趣味はいったいなんなんだ」と感じるだろう。そういったべたべた甘々でやりすぎなところこそが彼を抜きんでたものにしている。
このアルバム、個々の収録曲は優雅で美しいのだけれども、CDで通して聴くと大人しめの曲ばかりでメリハリがあまりなく、少々退屈に感じなくもない。一方で、交響曲など他のオーケストラ曲で見せる過剰さや暴力性(タルカス編曲版含む)は控えめなので、通して聴きやすいとも言える(メリハリがある曲は音量が気になるんだよね)。なお、収録曲はすべてストリーミングで聴くことができる。個人的には、こぼれ落ちるような悲しみをベタに聴かせる弦楽アダージョ‘鳥は静かに‘ がいいかな。
ちなみに下のTwo Set Violinが紹介した他の四人の作曲家は、アルヴォ・ペルト、マイケル・ナイマン、デビッド・ラング、マックス・リヒターだった。ペルトとナイマンは1980年代にはすでに注目されていたので今さら感があるのだが、若い演奏家にはあまり聴かれてこなかったということなんだろうか。デビッド・ラングについても、1990年代から評論家受けはしていたというイメージがある(最近では久石譲が日本に紹介している)が、得意の変拍子がとっつきにくいのか、大衆受けはしていない。というわけで、マックス・リヒターだけが初めて知る作曲家だった。