ひろの東本西走!?

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永遠の0 ゼロ (百田尚樹)

2009-07-30 22:32:39 | 15:は行の作家

Eiennozero1Eiennozero2_2永遠の0 ゼロ (太田出版、講談社文庫)
★★★★☆’:85点

私にとって今年のベスト1候補である「ボックス!」 の著者がこんな小説を書いていたとは!いや、逆に、この小説を書いた著者が次に「ボックス!」 のような小説を書くとは!全く異なった題材と味わいの2作。これは嬉しい驚きである。

私が大感動した「ボックス!」に続いてこの本を単行本で読んだのは今年の2月である。このときは内容について全く予備知識なしで読み出し、まずは”0(ゼロ)”の意味に驚き、どんどん物語に引き込まれ、最後は宮部久蔵という人物の生き様に深く心を打たれた。

この夏、本書が文庫本化されて宣伝にもかなり力が入れられているようだ。 「ボックス!」で本屋大賞・第5位になったこと、8月15日が近づいていることなどからキャンペーンが張られているのだろうか。百田尚樹氏がより多くの読者に知られることは嬉しく思う半面、密かな愛読書(と言ってもまだ半年なのですが)が表舞台に出てくるのは、隠していた宝物を見つけられてしまったようなちょっと惜しい気もする。百田さんゴメンナサイ。

********************** Amazon(BOOKデータベース)より ********************** 

(単行本)
日本軍敗色濃厚ななか、生への執着を臆面もなく口にし、仲間から「卑怯者」とさげすまれたゼロ戦パイロットがいた…。人生の目標を失いかけていた青年・佐伯健太郎とフリーライターの姉・慶子は、太平洋戦争で戦死した祖父・宮部久蔵のことを調べ始める。祖父の話は特攻で死んだこと以外何も残されていなかった。元戦友たちの証言から浮かび上がってきた宮部久蔵の姿は健太郎たちの予想もしないものだった。凄腕を持ちながら、同時に異常なまでに死を恐れ、生に執着する戦闘機乗り―それが祖父だった。「生きて帰る」という妻との約束にこだわり続けた男は、なぜ特攻を志願したのか?健太郎と慶子はついに六十年の長きにわたって封印されていた驚愕の事実にたどりつく。はるかなる時を超えて結実した過酷にして清冽なる愛の物語。

(文庫本)
「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために」。そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、一つの謎が浮かんでくる―。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。涙を流さずにはいられない、男の絆、家族の絆。

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感動本ほど感想を書けないという悪いクセが出て(?)、この本も感想を書けないまま約半年が過ぎてしまった。細部については忘れてしまっている部分も多く、以下はノートに残していたメモをもとに書いたものである。

【注:ネタバレあり】

戦争に疑問を感じる主人公といった観点では、横山秀夫の「出口のない海」とも共通点があり、家族への強烈な愛情といった点では、淺田次郎の「壬生義士伝」との共通点があった(但し、これも感想を書けていません)。特に「壬生~」の、凄い腕を持ちながらも給金をせっせと仕送りし、死の直前になっても家族のことを考え続けていた主人公の吉村と本作品の凄腕パイロット・宮部。この本を読んでいる間、終始二人の姿と生き方が重なり合う気がすると共に、色々考えさせられた。果たしてここまで家族を愛せるだろうか・・・。

あれほど生きて家族のもとへ帰ることを切望していた宮部は、いざ出撃という最後の最後で幸運を掴んだことを知る・・・。しかし、悩んだ末に彼が下した決断は・・・。そして、ラストで明らかになった真実に驚嘆。

  最後に宮部と会った時-
  あの人は別れ際に言いました。必ず生きて帰ってくる。たとえ腕がなくなっても、
  足がなくなっても、戻ってくる-と

  そして、宮部はこう言いました。たとえ死んでも、それでもぼくは戻ってくる。
  生まれ変わってでも、必ず君の元に戻ってくると。

この夫人の言葉に全ての真実が込められていた。
そして、宮部から外套をもらった人物は・・・。
ここは涙、涙、涙ですね。
他にも良いシーンがいっぱいありました。

第十章:阿修羅、第十一章:最期、第十二章:真相。そしてエピローグと、終盤のたたみかけるような展開が凄かった。宮部の死を描き、誇りと意地、畏敬の念と愛情に満ちあふれたエピローグも秀逸。

宮部久蔵。人から何と思われようが、何と言われようが自分の信念を曲げることなく家族のために生き抜こうとした男。本書はそんな人物を見事に描ききったといえよう。

◎参考ブログ:

   藍色さんの”粋な提案”
   naruさんの”待ち合わせは本屋さんで”
   ほっそさんの”Love Vegalta”(2010-7-27)
   かわさんの”国内航空券【チケットカフェ】社長のあれこれ”(2010-10-18)


喫茶なかむら

2009-07-30 07:57:31 | まち歩き

JR京都駅の南側、新都ホテルの近くにある「喫茶なかむら」です。京都駅前にこんな赤煉瓦の建物が!?と思うような佇まいで、先日、この近くであった講演会の帰りに初めて入りました。

店内は想像していたよりもシンプルでしたが、天井面の木組みや中央の大きなシャンデリアなどの照明が印象的です。厨房・カウンター横の壁は細い丸太状の材料が使われるなど、ちょっと山小屋風の味わいもあり、全体的に木を多用した落ち着いた空間に仕上がっていますね。テーブルや椅子のデザインもお店の雰囲気によくマッチしています。

外観の写真は以前に撮ったもっと日が当たったものがあるのですが、見つからず(汗)。

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新港貿易会館(旧新港相互館)その2

2009-07-26 23:02:07 | 近代建築

新港貿易会館の続きです。

ここは内部も素晴らしいです。現役のオフィスビルですが、1Fにはインテリアショップも入っていますし、少人数で騒がしくしなければ内部を見ることも可能と思われます。但し、日曜日は正面玄関が閉まっているはずです。

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正面玄関は写真的には自販機がちょっと・・・なのですが、タイル(スクラッチではないですね)、天井、ステンドグラスなどが味わいがあります。

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1階エレベータ前のホールはシックで落ち着いた空間です。インテリアショップのドア部はオリジナルのままでしょうか?お店の雰囲気に見事にマッチしています。

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大理石をふんだんにあしらった階段。手すり部などのカーブも優美です。
↓南面・上部にある丸窓のステンドグラスです。ガラスの色合いや質感もよく分かります。

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再び1階です。廊下にあるドアや玄関脇の受付(?)上部のガラスにはアール・デコ的な幾何学デザインが施されており、味わいがあります。デジカメで下の2枚目の写真を見たぷにょさんが、これは郵便マーク(〒)では?と発見されました。本当ですね。

などなど、新港貿易会館は内外ともに様々なデザイン、要素が取り入れられており、見どころがいっぱいです。

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新港貿易会館(旧新港相互館)

2009-07-26 18:28:12 | 近代建築

蒸し暑い毎日が続いています。九州地方・中国地方で土砂災害に遭われた皆様、お見舞い申し上げます。近畿地方も天候不順が続き、まだ梅雨明け宣言が出ません。天気が安定しないし蒸し暑いしで、この週末は建築探訪なしで映画を観たり、ランニングクラブの練習会に参加したり、本を読んだりと比較的のーんびりとしています。

神港ビルや商船三井ビルディングを紹介した続きで、 これは1930(S5)年に竣工の新港貿易会館(旧新港相互館)です。以前にも簡単に紹介したかもしれません。ロケーション良し、姿・形良し(外観良し、内部も良し:この紹介は次の記事で)、素材良し、細部装飾良しで、神戸の近代建築の中で最も好きな建物といっても差し支えありません。

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裏手となる北面から近づき、西面~南面と回り込んでいくに連れて表情やボリューム感が変化していきます。西面からの眺めはスリムに見えますが、南面からはアールのついたコーナー部を舳先とする巨大な船のようにも見えます。強調された水平線や丸窓などの組み合わせはいかにも船&港町神戸といった香りがします。いつ見てもいいなあ。。。
以前、西面から撮られた写真が「Meets Regional」の表紙を飾り、限りなく美しかったことを覚えています。今回の写真は空の青みが不足しているのと全体に白っぽいのがちょっと残念で、秋から初冬にかけて青空をバックにつるべ落としの西日に輝く姿がベストかもしれません。

◎参考ブログ:

   sunshine-worksさんの”近代建築Watch”
   写真が限りなく美しいです。こちらが本来の色だと思います。

比較的最近、スクラッチタイルなどの外装がきれいにされたのでしょうか?この日の天候のせいもあるのか、昔よりも明るく白っぽくなったような気もしました。

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最上階・南面の丸窓はステンドグラスです。詳しくは次の記事で紹介しますが、これが美しく見事です。また、内部は他にも見どころがたくさんあります。

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日本の外灘?神戸旧居留地

2009-07-23 23:14:52 | 近代建築

関西洋風建築めぐりで神港ビルを見学した後、一同は近くの商船三井ビルディング(旧大阪商船神戸支店、1922(T11)、渡辺節建築事務所)、海岸ビル(旧三井物産神戸支店、1918(T7)、河合浩蔵)、神戸郵船ビル(旧日本郵船神戸支店、1918(T7)、曾禰中條建築事務所)などを巡りました。

これらの近代建築がずらっと並んでいる景色(6枚目の写真)は、まるで上海の外灘のようで(実は現地に行ったことはありません(汗))、往時の眺めはさぞかし壮観で異国情緒にあふれていたことでしょうね。この中ではコーナー部に玄関を持つ三井ビルディング(旧大阪商船神戸支店)のすっくとした威風堂々にして優美な姿が私の一番のお気に入りです。神戸の近代建築の中でベスト3に入れても良いくらいかもしれません。

注)アップした写真は建築めぐり講座とは別の日に撮ったものです。
  もうちょっと日射しがあって青空が美しければ、より素晴らしく
  見えるのになあ。。。

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↑手前が海岸ビル、奥が商船三井ビル。
 商船三井ビルは細部装飾も素晴らしいです。建物の一番上にもライオンがいました。 

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↑えーっと、由来を忘れました。可愛らしい建物です。玄関周りや窓に味わいあり。

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↑神戸郵船ビル。

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先生の解説にもあったのですが、昔の建物は石の厚みが凄かったことがよく分かります。