ひろの東本西走!?

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出口のない海(横山秀夫)

2006-08-31 23:00:00 | 本と雑誌

Deguchino1 出口のない海(講談社文庫)
★★★★☆’:85点

8月だからというわけではないのだが、最近、戦争に関係する本を2冊続けて読んだ。そうちの1冊が近々映画も公開されるという横山秀夫氏の小説「出口のない海」。 警察ものなどで有名な横山秀夫が特攻兵器の人間魚雷「回天」を題材にした作品を書くのは意外だったが、優れた作品であり、一気に読了した。

【注意:以下、ネタバレ大あり】

学徒出陣の大学生・並木が主人公。戦争を描いた小説はともすれば暗くなりがちであるが、そこに野球(並木は甲子園の優勝投手)という題材を付け加えたことが、作品に明るさと爽やかさ、躍動感を与えて非常に良かった。

マネージャーの小畑が身の回りのものに加え、大切な眼鏡までも質に入れてお金に換え、郷里に帰ってちりぢりなった仲間に至急電報を打って開催にこぎつけた壮行試合。相手は近所のおやじさん達に赤い口紅のホステスさん!が加わった寄せ集めチームだったが、久しぶりの野球は明るくて楽しくて逆にそれが胸を打つ。 解説で山田洋次氏が書かれていた”野球の開放的な世界と回天の暗闇の空間の対比”が見事だった。

死を約束され、死を覚悟したのに、何度出陣しても故障などで戦果を挙げることなく帰投する北や沖田。そんな彼らに浴びせられる上官たちの非情な言葉。 「・・・出ていくからには戦果を挙げろ。スクリューが回らなかったら、手で回してでも突っ込んでみろ。わかったか!」
「スクリューを手で回せだとお?チクショウ!ふざけたこと言いやがって!・・・ああ、いいとも、死んでやる。・・・スクリューが回らなかったら、自爆したって死んでやらあ!」
敵艦に体当たりするのが使命の特攻隊員が味方の心ない言葉に傷つき、自棄になって死に急ごうとする虚しさ。

並木が沖田に語った言葉「俺は回天を伝えるために死ぬ。人間魚雷という特攻兵器がこの世に存在したという事実を伝えたいんだ」自分の死に何とか意味を見いだそうとする若者の苦悩がよく表れていたと思う。

軍隊生活を通じて一度も部下や目下のものに鉄拳をふるったことのなかった並木。「発進用意!」で心を決め、発動桿を押したのに、艇はクーンという妙な音がしただけで、燃料に点火しない「冷走」のトラブルに見舞われる。一度は死線を越えてしまった並木。回天のハッチから潜水艦に戻る彼の顔は蝋のように白く、髪が逆立ち、目は虚ろに宙を彷徨っていた。並木が出迎えた整備員・伊藤に「なぜ笑うかあ!」と怒鳴りつけ、頬を殴りつけたシーンに一瞬とはいえ人間が崩壊してしまった恐ろしさを感じた。

練習中に訓練艇に乗ったまま行方不明になった並木の驚愕の帰還。ボールに書かれた「魔球完成」の文字と沖田・美奈子に宛てられた手紙。感謝と詫びの言葉にこめられた喜びと悲しみが切ない。

本作ではラヴェルの「ボレロ」が重要な役割を担っていた。出征前の最後の日、喫茶「ボレロ」でマスターが並木と美奈子のためにかけてくれた秘蔵のレコード。国民学校の若い女性教師が拙いオルガンで必死に弾いてくれたボレロ。これからは「ボレロ」を聴くたびにこの小説のことを思い出しそうである。

文庫本カバーに「戦争青春小説」とあったが、この表現はちょっと軽く安易な気もした。戦時下という極限状態の中でも夢を追いかけ、精一杯考え、悩み、それでも明るくひたむきに生きようとした若者たちの物語とする方が良いのではないだろうか。 10代の頃に読んだ阿川弘之の名作「雲の墓標」にも深く感動した記憶がある。本作は主人公・並木の人柄もあり、より明るく軽みも持った作品になっていた。

ふと思ったのだが、ずっと戦火が続いているような国々では、このような小説が書かれることはないのだろうか。戦争の悲惨さ・虚しさを文学で伝えることはできないのだろうか。民族・宗教などバックにあるものが違うとは思うが。

********************** Amazonから **********************

出版社 / 著者からの内容紹介人間魚雷「回天」。発射と同時に死を約束される極秘作戦が、第二次世界大戦の終戦前に展開されていた。ヒジの故障のために、期待された大学野球を棒に振った甲子園優勝投手・並木浩二は、なぜ、みずから回天への搭乗を決意したのか。命の重みとは、青春の哀しみとは--。ベストセラー作家が描く戦争青春小説。


8月は9日間で100km超

2006-08-30 00:01:00 | ランニング

猛暑・酷暑続きだった8月もまもなく終わりですね。さすがに朝晩は多少しのぎやすくなってきましたが、日中は気温もグングン上昇してやっぱり暑いです。今年はめちゃくちゃ動き回ったこともあって、ここにきてちょっと夏バテ気味。

結局今月は12日以降の9日間で何とか100km超を走りました。1昨年に怪我をしたこともあって100kmを超えたのは2年ぶりかな?まあ、これまでの月間走行距離の最長記録も250kmで、それもたったの1回だけで、ランナーとしては非常に少ないんですけれど。その割にはかつてはそこそこのタイムで走れていて効率的なランナーでした。

今年も11月23日の福知山フルが本番ですが、9月の目標は120km、10月は150km、11月が90kmくらいかなあ。でも10月は東京ディズニーランド&ディズニーシーに行く予定やしなあ。多分このときは走れへんやろから、150kmはあり得ないかなあ。半月板を痛めて手術を受けてからは、それまで以上にあまり記録にこだわらなくなったので、ほどほどに頑張ろうっと。


砂漠(伊坂幸太郎)

2006-08-29 21:30:00 | 10:あ行の作家

Sabaku1_1 砂漠(実業之日本社)
★★★★’:75点

伊坂幸太郎さんの作品を読んだのは初めてでした。
世評では失敗作と言われたり、この作品では直木賞は獲れないといったような書かれ方が多かったと思いますが、読み終えてみるとなかなか面白かったです。

クラブやサークルには入らず、そこそこ一生懸命勉強し、学業に差し支えない程度にバイトし、時々合コンして酒を飲み、麻雀卓を囲む国立大学の学生男女5人組(北村、鳥井、西嶋、南、東堂)。
最初は、他愛のないつまらない会話が続くなあと思っていましたが、5人の性格や考え方などが次第に鮮明になり、各々の存在感が出てきたあたりから面白くなりました。

とある大きな事件が起こり、みんな傷つき、悩み、やがてまた元気になって人間として成長していく姿が丁寧に描かれ、私の採点も55点→60点→70点→75点と、次第にアップしていきました。

とくに、自分の一風変わった主義主張に熱心で他人と合わせたりすることに汲々したりしない信念&孤高の人(? と書くとカッコイイのですが、通常は”変わったヤツ”と思われてしまう)西嶋と滅多に笑わない美女・東堂のカップルが非常に印象的。後半の彼らの会話・行動が得点アップに大きく寄与しました。娘とは違ってとても明るい東堂の母も面白い。自信なさげな南の超能力も very good.南の想いになかなか気付かなかった鳥井のおかしさ。その鳥井が受けた衝撃・悲しみとそこからのカムバック----優しく支えた南たちの存在。いい味わいでした。

最初、春夏秋冬で1年間の物語なんだなと思って読んでいたら、4年間の話だったんですね。どうりで将来に対する不安などの会話も多かったし、寂寥感もあったはずです。

この本で言いたいことは、終盤に出てくる以下の会話・シーンかな?

東堂
  「うん、西嶋も言ってた。北村と北村の彼女が選んでくれたんですよって、
   ずっと言ってた。友達に選んでもらったんですから、って。誇らしげだった」
  「俺は恵まれないことには慣れてますけどね。大学に入って、友達に
     恵まれましたよって、西嶋はずっと言ってた」

卒業式での学長の言葉
  「人間にとって最大の贅沢とは、人間関係における贅沢のことである」
    これは、サン=テグジュペリの本に出てくる言葉らしいですが、重みが
   ありました。

このテーマ自体は珍しいものでも何でもありませんが、彼ら5人(+鳩麦さん)によってそれが生き生きと、また時にはしんみりとよく描かれていたと思います。一見平凡だけれども鮮やかな青春群像だと思いました。

******************* Amazonより *******************

内容(「BOOK」データベースより)
「大学の一年間なんてあっという間だ」入学、一人暮らし、新しい友人、麻雀、合コン…。学生生活を楽しむ五人の大学生が、社会という“砂漠”に囲まれた“オアシス”で超能力に遭遇し、不穏な犯罪者に翻弄され、まばたきする間に過ぎゆく日々を送っていく。パワーみなぎる、誰も知らない青春小説。

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参考ブログ:

 ざれこさんの”本を読む女。改訂版”
 そらさんの”日だまりで読書”


菅原町

2006-08-27 21:47:57 | まち歩き

西天満の東側にある菅原町。

自宅から淀川方面に向かってランニングするとき、必ずこの南側にある長屋風建物の前を通ります。それ以外にも、古い蔵造りの建物を利用した印刷屋さんなどがあるのは知っていたのですが、何とこの一画にダイニングレストランがありました。名前は「IORI(イオリ)」で、元カラシ屋さんの蔵を改装した建物のようです。2枚目の写真で右側の灯りがともっているところが入り口です。昼間はカフェとしての利用も可能だそうです(お店の前に置いてあったチラシから)。実際の玄関はずっと奥でしたが、良さ気な雰囲気でした。

他の写真にもあるように、このあたりは大阪には珍しい独特の雰囲気があるのですが、このお店を見つけて「へぇーっ!」と思いました。今日は他のところも回りたかったのでお店には入りませんでしたが、今度はぜひ入ってみようっと!

※今日も早朝に16kmのランニング。午後からは自転車で20km走り回り、
  さすがに疲れました。夏の終わりに夏バテかな?

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レッズは強かった

2006-08-27 11:15:00 | スポーツ

長居スタジアムで行われたJ1-セレッソ大阪vs浦和レッズの試合は、1-2でセレッソ無念の敗北。実際には、特に前半、日本代表メンバー(旧・現)を多数擁するレッズ怒濤の&縦横無尽の攻めにセレッソDF陣が翻弄された印象が強いです。

GK吉田のファインセーブもあって何とか0-1でむかえた後半早々には、大久保が”アチャー、やってしもたか”の一発退場で10人に。レッズ相手に10人では苦しいですね。案の定、その後、永井に押し込まれて0-2に。”あーぁ・・・”となったセレッソ・サポーターですが、攻めるしかなくなったセレッソはDFも積極的に前に出て攻勢をかけます。後半も残り5分を切ってから橋本のビューティフルゴールが決まり、それまで比較的静かだったセレッソ・サポーターもようやく凄い盛り上がりを見せました。疲れているであろうFW・西沢が渾身のヘディング・シュートを放ちましたが、GKに阻まれ、立ち上がったサポーターが頭を抱えて崩れ落ちます。惜しい!このようなシーンが2、3度あったのですが、試合終了。

レッズはボールを持ってからシュート体勢に入るまでがセレッソに比べると遙かに早かったですね。三都主は「4、5点は取れた」と語ったそうですが。一緒に行ったお母さんたちの目は(実は私もなのですが(^_^;)、もっぱらスター軍団・レッズの選手に注がれました。

田中達也:鋭い飛び出しが見事&足がめちゃくちゃ速い!こういう選手が欲しいです。闘莉王:チャンスと見るや前線までドーッと出てくる迫力十分。三都主:左サイドでボールを持ったときの突破力はさすが。小野:初めて目の前できちんとプレーを見ました。予想以上に積極的かつ激しい動きで、前半は特に素晴らしかったです。鈴木啓太:小野と共に中盤をよくコントロール。遠くからの意表をつくシュートもgood。坪井:あまり前に出てくることはなかったですが、西沢をよく抑えていたようです。

セレッソでは、後半から登場した名波の動きが良く、CKのシーンではもっと盛り上げてくれとサポーターをあおるなどのパフォーマンスも抜群。これからの活躍が期待できます。

レッズ・サポーターの統率のとれた迫力ある応援は以前から注目していましたが、我々が陣取った席には低音のもの凄い声・歌が響いてきました。人数は2000人くらい?ずっと立ち上がって飛び跳ねていましたね。自由奔放でややのんびりとしたセレッソの応援がえらく可愛らしく思えてしまいました。

ま、最後に盛り上がったし、夏休み最後の週末をみんなで楽しんだので良しとしましょう。

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