既に2ケ月近くが経過してしまった高野山の近代建築探訪記。その5までアップしたものの(その1、その2、その3、その4、その5)、実はまだメインの建物を紹介していませんでした。
それが高野山大学図書館で、竣工は昭和4年(1929年)、設計は武田五一です。今回の探訪で唯一の洋風建築であり(洋間と擬洋風は幾つかありましたね)、高野山始まって以来の洋館だったそうです。
鉄筋コンクリート造3階建てで、半円アーチの玄関部、半円状に突き出したベランダが特徴的です。下部が段を持つ円錐状にデザインされたベランダは結構大きく、見た目にもインパクトがあります。
玄関ホール部正面の壁には明かりとり用の窓があり、その周囲はイスラム風の彫りの浅い装飾によって縁取られています。控えめですが、味わいあり。
1階の床には共通して市松模様のセメントタイルが貼られており、色合いも良い感じです。
広間に設置された円柱周りのソファは造りつけで、当初からのものだそうです。これは貴重ですね。階段周りも見事です。
そして、圧巻は2・3階吹き抜けの閲覧室で、扁平ヴォールト天井を支える鉄筋コンクリートの梁が描くアーチが優美です。その側方に穿たれたアーチ窓との接合部が造り出す曲線・曲面の美しさが素晴らしいです。閲覧室が見どころの図書館は多いですね。優美で、かつ構造面にも優れた大空間を如何にして作り出すか、そこが建築家の腕の見せ所なのでしょう。
この日は特別に閲覧室の奥にある書庫(収蔵庫)内も見学させて頂きました。ここは1階から最上階まで吹き抜けの空間となったところに背の高い書架を設置し、その間に通路を配置するといった構造だそうです(全部で5層?)。書架と木製通路の間には結構大きなすき間があり、そこから上下階の本が見えているのは珍しいのではないでしょうか。ここの構造と佇まいは実に印象的でした。
探訪記、まだあと2回分くらいあります(汗)。恐るべし高野山!?