マラソンを走ったりスキーに行ったりで読み始めてからかなり日数が経ってしまいましたが3/中に読了。さらに感想を書くまでに2週間も経ってしまった・・・。
終盤の謎解き部がやや味わいに欠けて弱い気がしましたが、トータルとしては80点(レベル8?)という十分に高水準の作品でした。初期作品で既読のものの中では、
魔術はささやく > 龍は眠る> レベル7
といった順位でしょうか。
********* Amazon より 内容(「BOOK」データベース) ********
レベル7まで行ったら戻れない―。謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女の腕に浮かび上がった「Level7」の文字。少女の行方を探すカウンセラーと自分たちが何者なのかを調べる二人。二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導いていく。ツイストに次ぐツイスト、緊迫の四日間。気鋭のミステリー作家が放つ力作長編。
*************** 以下、多少のネタバレあり *****************
解説で香山二三郎氏が書かれていましたが、「レベル7」という謎のキーワードをめぐる2つのスリリングな追跡行(記憶喪失譚(自分探し)と貝原みさお探しの2つの物語)が素晴らしい。2つの物語は、それぞれの登場人物は一体どのような関係があるのか、それらはどこで交差するのか。読書中は4日間の物語とは全然意識していなかったです。展開でちょっと性急すぎるような部分もありましたね。
<良かったシーン>
◎記憶を失った二人の真実の姿が分かったシーン。
ひょっとして○○かと思わせておいて・・・。うまい!
◎悦子が榊医師にかまをかけたシーンは面白かったです。
「・・・っていう十七歳の女の子です」悦子のバットがとらえた球は、
今度はスタンドの方まで飛んでいった。医師の顔色が変わった。
記憶を失った二人が自分探しをするあたりがミステリアス&不思議な雰囲気も含めて、新保裕一の「奇跡の人」や岡嶋二人の「クラインの壺」に似ているような気もしました。”レベル7”はてっきり究極のロールプレイングゲームの内容だと信じ込んでいたので、真相が分かってちょっと拍子抜けの感も。この題材はあまり好きではなかったなあ・・・。プロローグにラストの謎解きの伏線が張られてはいましたが、ちょっとそこまでは考えが及ばず。まあ、うまかったと言っておきましょう。真行寺悦子・ゆかり母娘と悦子の父・義夫が良い味わい。三枝との関係が切ない。
宮部さんは豪腕タイプではないのですが、読者を惹きつける筆力が凄いですね。人物造形も見事で信頼のおける作家さんです。