ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

レベル7(宮部みゆき)

2006-03-30 21:50:00 | 16:ま行の作家

Revel71レベル7(新潮文庫)
★★★★:80点

マラソンを走ったりスキーに行ったりで読み始めてからかなり日数が経ってしまいましたが3/中に読了。さらに感想を書くまでに2週間も経ってしまった・・・。

終盤の謎解き部がやや味わいに欠けて弱い気がしましたが、トータルとしては80点(レベル8?)という十分に高水準の作品でした。初期作品で既読のものの中では、

魔術はささやく > 龍は眠る> レベル7 

といった順位でしょうか。

********* Amazon より 内容(「BOOK」データベース) ********
レベル7まで行ったら戻れない―。謎の言葉を残して失踪した女子高生。記憶を全て失って目覚めた若い男女の腕に浮かび上がった「Level7」の文字。少女の行方を探すカウンセラーと自分たちが何者なのかを調べる二人。二つの追跡行はやがて交錯し、思いもかけない凶悪な殺人事件へと導いていく。ツイストに次ぐツイスト、緊迫の四日間。気鋭のミステリー作家が放つ力作長編。

*************** 以下、多少のネタバレあり *****************

解説で香山二三郎氏が書かれていましたが、「レベル7」という謎のキーワードをめぐる2つのスリリングな追跡行(記憶喪失譚(自分探し)と貝原みさお探しの2つの物語)が素晴らしい。2つの物語は、それぞれの登場人物は一体どのような関係があるのか、それらはどこで交差するのか。読書中は4日間の物語とは全然意識していなかったです。展開でちょっと性急すぎるような部分もありましたね。

<良かったシーン>

◎記憶を失った二人の真実の姿が分かったシーン。

   ひょっとして○○かと思わせておいて・・・。うまい!

◎悦子が榊医師にかまをかけたシーンは面白かったです。

      「・・・っていう十七歳の女の子です」悦子のバットがとらえた球は、
     今度はスタンドの方まで飛んでいった。医師の顔色が変わった。

記憶を失った二人が自分探しをするあたりがミステリアス&不思議な雰囲気も含めて、新保裕一の「奇跡の人」や岡嶋二人の「クラインの壺」に似ているような気もしました。”レベル7”はてっきり究極のロールプレイングゲームの内容だと信じ込んでいたので、真相が分かってちょっと拍子抜けの感も。この題材はあまり好きではなかったなあ・・・。プロローグにラストの謎解きの伏線が張られてはいましたが、ちょっとそこまでは考えが及ばず。まあ、うまかったと言っておきましょう。真行寺悦子・ゆかり母娘と悦子の父・義夫が良い味わい。三枝との関係が切ない。

宮部さんは豪腕タイプではないのですが、読者を惹きつける筆力が凄いですね。人物造形も見事で信頼のおける作家さんです。


ドラマ「白夜行」完結

2006-03-28 23:00:00 | テレビ番組

Byakuyakou11 書き込みが遅くなってしまいましたが、ドラマ「白夜行」が遂に完結。

非常に重いテーマ、早い放送時間帯ということもあってか、スタート前の注目度から考えると視聴率的には苦戦が続いたようですね。ですが、なかなか迫力のある骨太のドラマだったと思います。原作を読んだ人には不評だったようですが、私は1つの解釈編として見ていたので(&原作の細部はすっかり忘却の彼方だったので)さほど抵抗感なく、毎回結構のめり込んで見ていました。

あの原作を”純愛”に置き換えたのにはちょっとビックリしましたし、単純に”感動した!”とも言えませんが、幼い頃に受けた不幸ゆえ、2人が結果的に悪事を重ねることになりながらも精一杯生きようとした姿には心うたれた面もあります。完結して思ったのは、凄いドラマだったなということと、やはり東野圭吾の原作がそれを上回る凄さだったということです。

演技を振り返ると、

山田孝之(桐原亮司)。最初の頃はうーんどうかな?と思っていましたが、次第に良くなっていき、ときには凄みさえ感じました。「なあ、雪穂・・・」のセリフが耳に残っています。綾瀬はるか(唐沢雪穂)。原作では素顔が全く分からないので非常に難しい役どころでした。綾瀬さんは悪ぶっても、どうしても悪女には思えなかったですね。泉澤祐希(幼少時代の亮司)と福田麻由子(幼少時代の雪穂)の子役二人は文句無し。

私が俳優で最も素晴らしいと思ったのは、武田鉄矢(笹垣潤三)、渡部篤郎(松浦勇)のお二人。当初、武田鉄矢の関西弁には注文をつけたのですが、途中からそんなことは関係なし。抜群の存在感で見事に笹垣を演じきりました。彼が大阪に舞い戻ってこなければ、亮司と雪穂はあのような生き方をせずにすんだかもしれないのですが・・・。渡部篤郎は正にハマリ役。キレた感じが恐かったです。二人は名演でしょう。

亮司と雪穂を執念深く追いかけた笹垣が唯一の理解者だったというのは泣かせますね。「一人の人間幸せにするために、お前は精一杯やった。俺がちゃんとお前の子供に言うたる。・・・あの日、おまえを捕まえてやれんで、ほんま、すまんかったのう。」という笹垣の言葉には重みがありました。それに感謝しながらも死を選ばざるをえなかった亮司の姿にはつらいものが。「オレ、そのことだけは誰にも言わなかったじゃん」という松浦の最後の慟哭も心に残っています。

麻生祐未(桐原弥生子)は夫と”息子”を失ってしまい、酒におぼれるしかなかった悲惨さを演技と表情でよく表現していました。八千草 薫(唐沢礼子)、さすが貫禄の演技でした。病院のベッドで二人に告げた言葉が鮮烈。余貴美子(谷口真文)が出てくるシーンは唯一ほんわかしたムードがあって、救われた感じがしました。彼女は二人の素直な面の理解者でしたね。柏原崇(篠塚一成)も予想以上に存在感とムードがあって素晴らしかったです。 

奥貫薫(西口奈美江)、大塚ちひろ(川島江利子)、西田尚美(栗原典子)は登場シーンはそれほど多くなかったのですが、印象的でドラマに深みを与えていました。 西田尚美さんは朝日新聞のインタビューで”幸薄い役が多い”と書かれていましたが、確かにそのような印象があります。素顔は明るい女優さんらしいですけれど。

粗を探せば幾らでも出てきますし、このように描いて欲しかった、描くべきだったのではという点も多数ありますが、あの映像化が難しい原作を何とかこのグレードにまで持ってきたスタッフの力量を私は評価します。

<参考ブログ> ※私と感想は異なりますが・・・

そらさんのブログ:日だまりで読書

juraさんのブログ:jura'file+++movie


ウェブ進化論(梅田望夫)

2006-03-28 12:50:00 | デジタル・インターネット

Webshinkaron1

ウェブ進化論-本当の大変化はこれから始まる(ちくま新書)
★★★★☆:90点

not 趣味系の本では久々に一気読みで抜群の面白さでした。既にベストセラーになりつつありますが、いやー、この本は凄いです。普通は殆ど小説しか入れない”My年間ベストテン”のランキング入り間違いなしと断言しましょう。






***************** Amazon:内容(「BOOK」データベースより) *****************

インターネットが登場して10年。いま、IT関連コストの劇的な低下=「チープ革命」と技術革新により、ネット社会が地殻変動を起こし、リアル世界との関係にも大きな変化が生じている。ネット参加者の急増とグーグルが牽引する検索技術の進化は、旧来の権威をつきくずし、「知」の世界の秩序を再編成しつつある。そして、ネット上にたまった富の再分配による全く新しい経済圏も生まれてきている。このウェブ時代をどう生きるか。ブログ、ロングテール、Web2.0などの新現象を読み解きながら、大変化の本質をとらえ、変化に創造的・積極的に対処する知恵を説く、待望の書。

序章 ウェブ社会―本当の大変化はこれから始まる
第1章 「革命」であることの真の意味
第2章 グーグル―知の世界を再編成する
第3章 ロングテールとWeb2.0
第4章 ブログと総表現社会
第5章 オープンソース現象とマス・コラボレーション
第6章 ウェブ進化は世代交代によって
終章 脱エスタブリッシュメントへの旅立ち

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一般的には検索エンジン(の会社)として認識されているGoogleがやろうとしていることの壮大さ・物凄さが極めて印象的でした。Googleってこれほど凄い会社なのか・・・。全然分かっていなかった・・・。オープンソース、ロングテール、「あちら側」と「こちら側」----この内容も秀逸、世代交代論(かつて力づくでネットスケープを叩き潰したビル・ゲイツが1兆円でGoogleを買収しようとしたが実現しなかった。そこには、Google創設者たちの「あちら側」のことが分かっていないゲイツには絶対に屈しないという強い意志があった)、究極の知的生産の道具かもしれないブログ などなど、いやー面白かったです。専門的な内容で多少理解しづらい点もありますが、ブログやホームページをやっている人には絶対のオススメ本です。

本書に書かれたようなことを知っている人/知らない人、使う人/使わない人の情報格差は今後、広がる一方ですね。どちらが幸せかは解釈によって異なりますが・・・。


王JAPAN、WBC初代チャンピオン!

2006-03-21 17:37:33 | スポーツ

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王監督率いるJAPANがWBC決勝で強豪キューバを10-6で下して見事初代チャンピオンに!おめでとう!


今日は久々に外出の予定なし。満を持して11時前からテレビの前にどっかと座り、約4時間ずーっと観戦&応援していました。


気合い入り過ぎかと思うくらいの松坂の力投、今江のセンター前クリーンヒット、松中の2度にわたるタッチアップの力走、エラーの汚名返上とばかりにブロックをかいくぐった川崎の必死のホームイン、8回に1点差に迫られどうしても追加点が欲しかったときのイチローさすがの好打、西岡の名人芸・プッシュバント、代打策ドンピシャ!福留の快打、最後のバッターを見事三振にうちとった大塚・・・。名手・川崎のエラー&スーパーファインプレーにはハラハラドキドキ。ベンチで迎えるチームメートが口々に”おいおい、柄になく緊張してるのか?””気にするな、思い切っていけ!”というような声をかけているシーンも印象的でした。やっぱり凄いプレッシャーの中でプレーしていたんでしょうね。でも、プロ中のプロが真剣に必死なって戦う姿に感動しました。常に後手に回りながらも、ピッチャーを次々と繰り出して決してあきらめないキューバも最後まで不気味でさすがでした。


野球って楽しいですね。スピード感が売り物の(?)サッカーとは異なり、1対1の対決を中心にじっくり楽しむ野球の魅力を満喫しました。誰もがあきらめかけた準決勝進出。崖っぷちからはい上がっての栄冠は人々に”あきらめなかったら、何かが起こる”ことを教えてくれました。素晴らしい試合をありがとうと言いたいです。試合後のインタビューで、イチローと松坂が素晴らしい仲間とプレーできたことを喜びながらも、明日から別れてしまう寂しさを語っていましたが、この気持ちも分かるなあ。


さあ、次はサッカーW杯!


(写真は、asahi.comより)


少年SF短編集1「未来ドロボウ」(藤子・F・不二雄)

2006-03-20 12:59:38 | アニメ・コミック・ゲーム

4091407013091 少年SF短編集1「未来ドロボウ」(小学館コロコロ文庫)
★★★☆:70点

(表紙写真は実際に読んだものとは異なります)

最近3冊読んだ藤子・F・不二雄の短編集を評価すると、収録各編の個別評価も考慮して

箱舟はいっぱい > 未来ドロボウ(本作) > パラレル同窓会

といった感じでしょうか。

●あらすじ●日本一のストーリーテラー藤子・F・不二雄先生の珠玉の短篇集。▼第4話/未来ドロボウ▼人生の勝利者をめざし、わき目もふらず勉強する少年、学は父の工場がつぶれ、高校進学を断念しなければならなくなる。そんなとき、人生に成功した大金持ちの老人と知りあう。自分の未来の不幸をなげき、老人をうらやましがる学に、老人は自分の全財産と学の未来を取りかえてもいいともちかけた。それを老人のじょうだんだと思った学は軽い気持ちで契約書にサインしてしまうが、本当に体を入れかえられてしまう!そして、老人の余命は半年だった!!はたして、学の未来はどうなるのか!?▼第1話/ひとりぼっちの宇宙戦争▼第2話/コマーさる▼第3話/なくな! ゆうれい▼第5話/四畳半SL旅行▼第6話/恋人製造法▼第7話/ニューイヤー星調査行▼第8話/宇宙船製造法▼解説/大林宣彦 

「ひとりぼっちの宇宙戦争」「未来ドロボウ」「恋人製造法」の3篇がベスト3。次いで、「コマーさる」「四畳半SL旅行」「宇宙船製造法」かな?

○「ひとりぼっちの宇宙戦争」

地球代表として地球の命運をかけて異星人代表(何と自らのクローンロボット)と戦うはめになった少年。敵は自分のクローンであり実力的には差がないものの、冷酷無比なロボットに次第に劣勢に追い込まれる。もはやこれまでかと思われたが・・・必ず最後に愛は勝つ!

○「未来ドロボウ」

貧しいばかりに高校進学を断念した少年が、大富豪の老人と身体を交換した。ところが、老人の余命は数ヶ月だという。若い身体を得た老人は、おいしい食事に感激し、思いきり野球のプレーを楽しみ、幸せをかみしめる。何十年もたってから気づいたかつての光輝く青春の日々。しかし、父親の再就職先が決まり、高校進学がかなうことを知った”老人”は・・・。 一日一日を一生懸命生きることの大切さ、素晴らしさを描いた秀作。

○「恋人製造法」

憧れのクラスメートの女の子(麻理)にどうしても声がかけられない少年・内男は、ひょんなことで助けた宇宙人からインスタント・クローニング装置を授けられる。彼女の髪の毛から自分だけのコピー人間をつくるが、できたての彼女は知能・運動機能ともにまったくの白紙、つまり赤ん坊同然だった。友達がほしかったのに、できたのは親子のような関係。しかし、内男は家の自分の部屋の中で彼女を一生懸命育てる。彼女の成長は早く、それが内男の生きがいにもなる。だが、彼女をこのまま外に出さずに育て続けることはできない。宇宙人からの指摘で、それが彼女のためにならないことにも気づいた内男は、遂に一大決心をする。愛するがゆえについた嘘、そして別れ。それは少年が成長した証でもあった。