ひろの東本西走!?

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窓から読みとく近代建築(酒井一光)

2006-05-31 00:01:41 | 本と雑誌

Madokara1_1 窓から読みとく近代建築(学芸出版社)
★★★★☆’:85点

大阪歴史博物館学芸員の酒井一光さんの著書「窓から読みとく近代建築」を読了しました。小説やら新書やら3~4冊を同時に読んでいたので時間がかかってしまいましたが、豊富な写真と共にかなりの文章量がある力作で私には読み応え・手応え十分でした。

窓を切り口にこれだけ詳細に記載された本を読んだのは初めてでした。内容は難しすぎず・平易過ぎず、文章も硬過ぎず・柔らか過ぎずで、とてもいい塩梅だったと思います。
私は大学は建築系ではなかったので建築の教科書的な本を読んだことがなく、これまでは写真集的な本や写真の多い単行本などを好んで読んでいたのですが、この本は一般の読者にとっても、知識を得ることと楽しむことの両方ができる内容になっていると思いました。
これからは、今まで以上に窓のことを考えながら探訪したいですね。

最初、写真を中心にサーッと通読(通見?)、次に、なじみのある近畿の建物について触れられたページを中心に読み、最後に、特に興味を持った部分を中心に精読しました。全ページを精読したとは言い切れないのですが(スミマセン)、一応読破ですね。

その他の感想あれやこれや:

口絵の写真は説明文が付いていることもあってやや小ぶりでした。余白を広くとって見やすいのですが、個人的には、ドドーンと大判写真でも良かったかなという気も。

各ページの上部には写真と共に脚注がズラーッと記載されていました。いちいち後ろを見なくても良いので確認するのには便利でしたが、最初、本文をサーッと通読しようとしたときに、どうしても脚注に目がいってしまい、なかなかスピードが上がりませんでした。
これは単に私の読み方の問題ですね(^_^;

近畿、特に京阪神、中でも大阪の建物が多数紹介されていたこと、大阪にゆかりの深い安井武雄・村野藤吾(ご両人とも建築界の巨人ですが・・・)が大きく取り上げられていたことが大変嬉しく、親近感を持って読みました。

南海ビルディング(高島屋本館)は大物の割には取り上げられることが比較的少なく、「一棟の建物におけるテラコッタ使用量としては日本一といわれる」などは初めて知りました。メリヤス会館、石原ビルなどが取り上げられていたのもユニークでした。

付録の窓事典にも写真が満載で、きちんと建物名が書かれていたのも好ましく思いました。当然といえば当然のような気もしますが、親切・丁寧と感じましたね。

【少ーし疑問&注文です】

本文の一番最後で「商船三井築港ビル」が紹介されたのだから、もう10m左にも寄って「天満屋」も大きく取り上げて頂きたかったなあ・・・なんてことも思いました。付録の窓事典にはちらっと出てきているのですから。何か理由があったのかな?


”ラビリンス”野田

2006-05-30 00:06:13 | まち歩き

最近、大阪まち歩きの際に参考にさせて頂いている”ぷにょさん(まちかど逍遙)”が”野田スパニッシュ!”ほかで書かれていた野田(大阪市福島区)を探訪しました。自宅から自転車で約15分という近さなのですが、それ故にというか、灯台もと暗しというか全く知識が欠落していて初の詳細探訪でした。外周部は何度も通っているのにね。恥ずかしー。

そして一歩足を踏み入れたその街並みは、古くからの建物が数多く残る異次元のような世界でした。これは凄い・・・。一帯は主に住宅街・商店街で小規模な建物が殆どなのですが、蔵も多数残っており、銅板貼り・タイル貼り(スクラッチタイルほか)外壁などの和風テイストの建物が次から次へと目の前に現れます。私は少し目にしただけですが、路地の石畳や小さな鳥居なども風情あり。

多くはぷにょさんの後追いなのですが、今回は洋風テイストの建物の写真を並べてみました。私もどうやら”ラビリンス”野田の魅力にはまってしまったみたいです。まだまだお宝がありそうな雰囲気ムンムンでした。

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暗殺の年輪(藤沢周平)

2006-05-29 22:00:00 | 15:は行の作家

暗殺の年輪(文藝春秋)
★★★★’:75点

藤沢周平の作品では初期の短編集。3編目の「ただ一撃」はその素晴らしさに唸ったのだが、トータルでは上記のような採点とした。風景描写や情景描写、男女の機微の描き方は藤沢周平ならではの味わい。既にこの頃から凄い力量だったことを改めて知った。
***************** Amazonより *****************

(出版社/著者からの内容紹介)
藩の権力争いの陰で、末端の平侍を翻弄する苛酷な宿命。武家の非情な掟の世界を、端正緻密な文体で描いて久々の本格時代小説の登場と評された世評高い直木賞作品

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○   黒い繩(なわ)
○’ 暗殺の年輪   ----第69回直木賞受賞作
◎  ただ一撃
△  溟(くら)い海 ----第38回オール讀物新人賞受賞作
○  囮

直木賞受賞作の「暗殺の年輪」は良かったのだが、お家騒動ものでは後年の傑作群に比べるとやや落ちるかな?といった印象だった。

「ただ一撃」は短編としてはベスト5級の素晴らしさ。舅(刈谷範兵衛)と嫁(三緒)の関係が絶妙。範兵衛のだらしないところを明るくたしなめたりする嫁。このままユーモラスな展開が続くのかなと思っていたら・・・。後半、かつて仕官のきっかけとなった剣の腕をみこまれ、難敵との試合の切り札として抜擢される範兵衛。すっかり鈍ってしまった野生を取り戻すべく山に入り、天狗が出たとも噂される。試合の前日、狼のごとき眼の光を宿して戻ってくる範兵衛だが、ある悲劇をも生んでしまう。ラストの8ページが予想だにしなかった展開で胸をうたれた。傑作である。

「溟(くら)い海」は絵師・葛飾北斎が主役。藤沢がこのような題材を取り上げていたとは知らなかった。ちょっと意外な感じ。あまり藤沢節を感じずピンとこなかったのだが、他人に決して見せるはずのない広重の暗い表情と、それを見てしまった北斎が印象的。

「黒い繩」と「囮」は似た味わいを持つ。罪を犯した男、その男を追う別の男、それにまつわる女のいじらしさと悲しさが鋭く描かれた秀作。「黒い繩(なわ)」はラストの一行が秀逸。


昼休み、京都駅周辺ミニ探訪

2006-05-25 22:12:00 | まち歩き

昼休みに会社の自転車を借りての近代建築探訪第2弾です。前回は「鈴木組」でしたが、今回はぷにょさん(ブログ”まちかど逍遙”)情報に基づいて”JR京都駅に着く直前にあるという渋物件”を探しに出かけました。

普段は京阪・近鉄を使って通勤しているため電車内から渋物件を探すわけにもいかず、探せば分かるやろとエイヤーで自転車にまたがって出発。ですが、鈴木組のすぐ近所にはなく、「あれー、どこやろ?鈴木組以外に良さ気な建物があったかなあ・・・。京都駅にもう少し近いところまで線路沿いに行けたのかなあ・・・」などと思いながら、うねうねっとしたルートを行くこと数分。おっ?ひょっとして、これか?と目についたのが写真の建物です。ぷにょさん、これですか?

このあたりは結構傾斜地になっています。近所にある数軒の建物の土台というか基部の擁壁にレンガが使われており、まずはこれがなかなか魅力的。さてこの建物、構造は木造?鉄骨造?外壁は擬石調のモルタル仕上げ部とあずき色のタイル仕上げ部からなっています。形的には比較的シンプルですが、縦長の窓がかっこいい。実は軒先周りの装飾が鈴木組とよく似ており、ひょっとすると設計・施工は同じかもしれません(鈴木組?)。北側の擁壁部にはかつて出入り口(くぐり戸)があったようで、結局、2階建て+半地下があったのかな?違うか・・・。ちと不思議な構造でした。

雰囲気的に現在は使われていない感じがしましたが、玄関脇には「六大新報」という小さな看板(プレート)がかかっていました。六大新報は真言宗の専門誌のようですが、出版社の事務所なのでしょうか(事務所だったのでしょうか)。

それにしても、線路脇にこのような建物があったとは!ぷにょさん情報に感謝!です。

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リチャード・ストルツマン「VISIONS」

2006-05-23 23:59:00 | アート・文化

Visions1_2西高校吹奏楽部・春コンサート で、”いずさん”からのコメントへのレスで書いた私のお宝CDの1つ、世界的なクラリネット奏者リチャード・ストルツマンの「VISIONS」です。

****** 内容(「CDジャーナル」データベースより) ******

クラシックだろうがジャズだろうが現代音楽だろうが、ストルツマンは何の抵抗もなく人懐こい音楽にしてしまう。最近の話題作を含め新旧の映画音楽をとりまぜたこのCDもだからリリカルにあるがまま、イメージを損なうことなく実に自然に楽しんでいる。

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○1.果たされない約束の予感(ピアノ・レッスン)
○2.歌劇「ジャンニ・スキッキ」~私のお父さん〈プッチーニ〉(眺めのいい部屋)
○3.道
○4.黒いオルフェ
  5.恋におちた時(めぐり逢えたら)
  6.雨に唄えば
○7.愛に包まれて(最後の誘惑)
○8.愛を感じて(ライオン・キング)
  9.クラリネット協奏曲イ長調K.622~第2楽章〈モーツァルト〉(愛と哀しみの果て)
   10.愛のテーマ~冷酷な選択(ソフィーの選択)
  11.サムホェア(ウェスト・サイド物語)
  12.愛のテーマ(スパルタカス)
○13.デボラのテーマ~やぶにらみの歌(ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ)
○14.コーリング・ユー(バグダッド・カフェ)
○15.シンドラーのリストのテーマ
  16.フィラデルフィア

全16曲、いずれも素晴らしいのですが、特に私のオススメは○をつけた9曲です。このCDでは、ややほの暗い感じの曲が絶品でした。一時期、このCDばかり聴いていたことがあります。毎晩、このCDを聴いて寝ていたような気も。

そして、このCDのプログラムをベースに催されたコンサートをザ・シンフォニーホールで聴いたのですが、これまでに行ったコンサートの中でもベスト級の感動度でした。コンサートの始まりでは、ホール最後尾のドアから「アメージング・グレイス」を奏でながらストルツマン氏が登場。洒落ていました。

その後の約2時間は至福のひとときでした。また、やはり世界的なギタリスト・渡辺香津美さんとのセッションもノリノリで最高でした。

終演後は、楽屋裏でかなり長い時間待った後、着替えて出てこられたストルツマンさんや渡辺さんのサインを頂きました。マネージャーの方は「ストルツマンさんは大層お疲れです。」と声を張り上げられておられましたが(^_^;、当のご本人は取り巻いたファンにニコニコと笑顔をふりまきながら気さくにサインをされていました。で、持参したCDジャケットにサインしてもらったのが左上の写真です。CDがお宝なのですが、ジャケットがそれ以上にお宝なのです。