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ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

映画「阪急電車」

2011-05-11 23:15:00 | 10:あ行の作家

Hankyuudensyamovie1 映画「阪急電車」
★★★★:80点

ゴールデンウィークに少し早い母の日のプレゼントも兼ねて母と妻と3人で映画「阪急電車」を見に行きました(&ランチも)。

原作を読んだ際になかなか良いと評価し(そのときの記事はこちら)、今回映画を見ての感想は、3人とも「あー、良かったー&面白かったー」でした。私と妻は原作を読んでいて母は未読でしたが、どちらもが楽しめたようです。原作を知っている人にとっては、映画はかなり原作に忠実な作りとなっていて、安心してあのムードに浸ることができたのでは?

まずは物語の舞台が、原作が(特に京阪神の人にとっては)魅力的で、映画はそれにうまくリアリティを持たせたと思います。下記は原作を読んだ際の感想の一部です。

   阪急今津線(但し、宝塚~西宮北口間)を舞台に、その駅・車内を中心に
   繰り広げられる人間模様(特に恋模様----真面目で純朴で不器用な恋)。
   今津線は沿線に名門校のキャンパスなども多く、実際にはどこに行くにも
   便利な線なのですが、どことなくひなびた感じもあるのが、うまく使われて
   いました。

   宝塚から西宮北口へ。その途中に様々なちょっとした出来事があり、西宮
   北口からの折り返し(ただし数ヶ月後)で物語の後半が綴られる。そして、
   複数のカップルや人物が少しずつクロスし・・・うまい構成です。この構成が
   絶妙で、お洒落で上質なオムニバス映画や2時間ドラマを見ているといった
   趣でした。

原作を読んだときから”映画やドラマ”的と感じていたようで、元々が映像化向きの作品と言えます。

女優さんがみんな素晴らしかったですね。
出てくる言葉は割ときつめだが正義感と優しい心を持つ戸田恵梨香は熱演で、美脚には目をひかれました(笑)。中谷美紀は討ち入りを果たした後の着替えてスッキリした表情やクラスメートにいじめられている女の子(この子も良かったです)に言った「美人はいつも損をするのよ」的なセリフが良かったです。独特な雰囲気を持つ谷村美月は若手女優さんではイチ押しなのですが(「ボックス!」「海炭市叙景」でも素晴らしかったです)、勝地涼との田舎出身(?)同士の垢抜けない、不器用な恋が実に微笑ましかったです。宮本信子は上品でピシッとしたお婆ちゃんが見事で、女子高生(有村架純)は若い輝きといった感じでした。久々に見た南果歩はまずまずかな?漢字は知らないけれど人のいいサラリーマンを演じていた玉山鉄二も良い味を出していましたね。

今津線沿線はそう詳しくは知らないのですが、関西学院・神戸女学院・小林聖心女子学院などのキャンパスや周辺の町の佇まいはとても気に入っています。この映画を見たら、全ての駅で降りて界隈をじっくりと歩いてみたくなりました。

◎参考ブログ

   苗坊さんの”苗坊の徒然日記”


0マイル ゼロマイル(稲葉なおと)

2011-02-01 22:15:08 | 10:あ行の作家

Zeromile1_30マイル ゼロマイル(稲葉なおと)
小学館文庫
★★★★☆’:80~85点

2年前に単行本で読んだ作品の文庫化です。
美子さんから情報を頂いて早速購入し、通勤時間などを利用して1.5日で一気に読了。やはり面白かったです。表紙も美しいですね。美子さん、情報をありがとうございました。

ちなみに以前の感想はこちら

ストーリーそのものはほぼ覚えていたため、あっという驚きなどはありませんでしたが、単行本で読んだときの記憶が鮮やかによみがえってくると共に、再読ではしみじみとした味わいがありました。「苦くて深い相棒物語」という重松清さんの解説も絶品!

******************************** Amazonより ********************************

父と子のふたり旅が紡ぐ新感覚ロードノベル

かつて新進気鋭の写真家として脚光を浴びた吉川士朗は、出張中に身重の妻が緊急手術をしたことが原因で、長期の旅行を伴う撮影をやめてしまった。日々の仕事に埋没していた折、旧知の編集長から米国フロリダを旅する紀行写真の企画を持ちかけられる。これは「最後のチャンス」かもしれない……。そんな思いを抱きながら、病弱の妻を日本に残して、小学2年生の息子・登士を「助手」として連れていくことになった。

「世界でいちばん美しい道」を息子と一緒に見にいきたい----。マイアミ国際空港から米本土最南端「0(ゼロ)マイルの街」キーウエストを目指してドライブする「ふたり旅」。ホテル内を無断で撮影しようとして警備員に拘束されたり、夜の繁華街で息子が行方不明になったりと、トラブルの連続で思うように仕事ができない士朗は、つい息子にきつくあたってしまう。しかし、些細なことでケンカをしながらも、旅先で様々な人たちとの出会いを経て、「助手」から「相棒」へと、親子の距離も少しずつ変わっていく。そして「世界でいちばん美しい道」の果てで、士朗たちが出会ったのは……!?

父と息子の交流を描いた感涙必至の紀行小説、待望の文庫化。

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巻末に単行本に新たに加筆・改稿したものの文庫化とありましたが、具体的にどの部分かはよく分からずでした。メインのエピソードそのものは増えていないような気もするので、終章の最後の方でしょうか?士朗と登士の会話など?

今回の再読で印象に残った箇所です。
(桃色ヘアのおばさんとの会話のシーン)

   「あなたはもうすでに何人も会ってるでしょ」
   「会ってる?」「誰に?」
   「天使よ」
   「・・・・・・・・」
   「旅するひとは必ずひとりの天使に出会える」
         :
   「私が、もしかしてこのひとがっ、て感じた相手は、そうでなければあり得ない
    と思うほどの感激を私に与えてくれたから。まるであらかじめ台本があった
    んじゃないの、っていうくらいのね。あなたにもあるでしょ。旅先で会った
    見ず知らずのひとに、忘れられないくらい感動的なハプニングや思い出を
    プレゼントされた経験が」

士朗と登士が二人旅で出会った天使は果たして誰だったのだろう。
  ザ・ブレイカーズのビル(総支配人)やスーザン?
  ハリー、アサミ、アイリーンの親子(娘)
  桃色ヘアのおばさん自身
  老警官 ・・・
出会った人同士がお互いに相手にとっての天使だったのかもしれない。

0マイル標示のあった場所が、士朗や読者が想像していたような桟橋の先端といったドラマチックな場所や特別な場所ではなく、何の変哲もないごく普通のありふれた場所だったのは、意外であった一方で味わい深いとも思いました。

重松清さんの解説より

   息子と二人きりの旅・・・・。
   息子を持つ父親であれば、おそらく誰もが胸躍らせるシチュエーションである。
        :
   だが、現実には、世の父親たちの多くが「いつかは俺も・・・・」とほろ酔い
   かげんで繰り返しつつ、結局その「いつか」を逃してしまう。
   だからこそ、ひとは父親と息子の二人旅の物語を求めるのではないか。

うーーーむ、我が家は息子が二人なのですが、4月からは高1と中1になります。少し前までは夏に海水浴や家族旅行を、冬にはスキーなどを楽しみましたが、最近は息子達も部活などで忙しく、父親との旅どころか家族旅行のスケジューリングも困難になってきております(汗)。もう少し小さいときでも父親と息子たちという男同士の旅はしなかったですね。3人で六甲山や箕面の紅葉見物に出かけたりはしましたが、これは旅とはいえないしなあ。

やはり、日常生活から離れた旅らしい旅でこそ、様々な出来事があったりして本書のような感じにもなるのですかねえ。息子達をちらりと見やると・・・・今夜もまた、私や妻に怒られながらもゲーム三昧です。ほぼ毎日、ゲーム、ゲーム、ゲーム・・・・。あ~ぁ。。。かくして、息子たちとの旅の機会を逃してしまうのかな。。。

◎参考ブログ:
  
   えんたかさん(遠藤さん)のブログ


シリコンバレーから将棋を観る 羽生善治と現代(梅田望夫)

2009-10-14 23:31:02 | 10:あ行の作家

Umedahabu_2 シリコンバレーから将棋を観る 羽生善治と現代(中央公論新社)
★★★★☆:90点

ウェブ界の稀代の書き手・伝道師として「ウェブ進化論」などの素晴らしい著作があり、私も絶対の信頼を置く梅田望夫氏待望の近著は題材が「将棋」でした。前著でも羽生名人のことが書かれたりしていましたが、あらまー!「将棋」が題材とは!

恥ずかしながら羽生さんの名前は知っていても将棋のことは殆ど知らず&分からず(小学生の頃に駒の動きをちょこっと教えてもらったくらいで、未だかつてきちんと一局を指したことも見たこともなく、今となっては駒の動きすらよく覚えていません・・・)のため、理解できないかもと恐れを抱いて、とりあえず図書館で借りたのですが・・・何とまあ抜群に面白く、ほぼ一気読みで読了しました。さすがは梅田望夫さんです。

「指さない将棋ファン」宣言がありましたが、将棋ファン以前である私でも将棋の素晴らしさ、奥深さ、凄さ、美しさ、タイトル戦の緊迫した空気と想像を絶するギリギリの戦い、棋士たちのもの凄さ(天才たちの絶え間ない研究・研鑽と努力の日々)、高潔さ、人間的な魅力などがひしひしと伝わってきました。細かい指し手のことは分からなくても十分楽しめる傑作で、そのこと自体が凄いです。梅田望夫さんはタイトル戦のリアルタイム観戦記(byネット)と合わせて、また凄い仕事をやってのけたもんだ!

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「本物の情熱」と「際立った個性」が新しい時代を創っていく

有限の盤上で無限に進化する世界から、我々は何を学び得るか。
トップ棋士と共に真理を探究した一年間の記録!

好きなものがありますか? 極めたいことは何ですか?
――ベストセラー『ウェブ進化論』の著者が「思考(アイディア)の触媒」として見つめ続けてきたものは、将棋における進化の物語だった。
天才の中の天才が集う現代将棋の世界は「社会現象を先取りした実験場」でもある。
羽生善治、佐藤康光、深浦康市、渡辺明ら、超一流プロ棋士との深い対話を軸に、来るべき時代を生き抜く「知のすがた」を探る。

たとえルールがわからなくても、「観る」面白さを知っている、すべての人に。
「私が本当に書きたかったのは、この本でした」――梅田望夫

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野球ファンやクラシック音楽ファンは自分にはできないことについても感想を述べたり語ったりできるのに、なぜ将棋ファンは「上手くないので(強くないので)」とか「最近は指さないので」といった理由で好きなように語れないのかという疑問からスタートし、見事にその壁をうち破った梅田氏の面目躍如といった感じですね。羽生善治4冠、佐藤康光棋聖、深浦康市王位、渡辺明竜王とガップリ四つに組んでの観戦記と対話・対談がとにもかくにも素晴らしいです。超一流の棋士たちには熱い想いと冷めた&冴えた頭脳が同居しているのでしょうか?もちろん、梅田氏ならではのコンピュータやネットについての洞察も怠りなく、書名にふさわしい内容になっていると思います。

そして、羽生善治のもの凄さ。「盤上に自由がなかった」現代将棋に風穴をあけ、あらゆる戦型に精通したオールラウンドプレイヤーを指向する羽生。この人は将棋の天才であると共に、知情意をそなえた知の巨人でもありますね。既に「ウェブ進化論」で、羽生が語った学習の「高速道路論」とその先にある大渋滞、「けものみち」なども紹介されていたが、羽生は若き日に完成させた(?)「羽生の頭脳」で「情報(IT)革命」の思想を先取りしていた!----”その段階で持っている知識はすべてオープンにする”という「知のオープン化」と「勝つこと」の両立----七冠制覇!「知のオープン化」が成し遂げる凄さは私にも何となく実感できます。現代では、もはや「知」はそれを閉ざしていては「知」ではないということか。「Win-Win」などの考え方とも関係しますね。

竜王戦の第一局で放った渡辺明の心臓をえぐるような一手。「将棋観が根底から覆された・・・」(渡辺)。しかし、渡辺も3連敗の後に巻き返し、遂にタイトル戦では初めての3連敗後の4連勝で初の永世竜王の座を獲得する。その第七局では140手の伝説的な名局を羽生と共に作り出したという。また、渡辺も若くして自分の考えなどをブログ等を通じて伝える、発信するということを行っている。彼が羽生の後継者となるのか・・・。

えー、この本は(この本も)素晴らしいと感じた箇所や印象に残った箇所が非常に多く、以下、それらを少し抜き出してみますと(梅田氏の言葉でないものも含まれています)、

・10年に一度の割合で天才が生まれるという将棋界
   加藤一二三、米長邦雄と中原誠、谷川浩司、羽生善治。そして、渡辺明。
・「均衡の美」、終局後の感想戦が「至福の時間」
・人生における「機会の窓」(Windows of opportunity)を生かせるかどうか
・人は、人にこそ、魅せられる
・先駆者・升田幸三の孤独
・量が質に転化する瞬間があるはず----ウェブでは量の制約がない!
・棋士は勝負師と芸術家と研究者の三つの側面を併せ持つ(谷川浩司)
・「超一流」=「才能」X「対象への深い愛情ゆえの没頭」X「際だった個性」

などなど。

よし、遅まきながらちょっと将棋を勉強するか!

◎参考ブログ:

   Tetsuro Muranagaさんの”村永: Tetsuro Muranaga’s View”
   ----支離滅裂な私の感想とは大違いで、もっと高所から語っておられます。


阪急電車(有川浩)

2009-09-18 22:23:21 | 10:あ行の作家

Hankyuudensya1 阪急電車(幻冬舎)
★★★★’:75点

とても読みやすい本で1日で読了しました。なかなか良かったです。阪急今津線(但し、宝塚~西宮北口間)を舞台に、その駅・車内を中心に繰り広げられる人間模様(特に恋模様----真面目で純朴で不器用な恋)。今津線は沿線に名門校のキャンパスなども多く、実際にはどこに行くにも便利な線なのですが、どことなくひなびた感じもあるのが、うまく使われていました。

宝塚から西宮北口へ。その途中に様々なちょっとした出来事があり、西宮北口からの折り返し(ただし数ヶ月後)で物語の後半が綴られる。そして、複数のカップルや人物が少しずつクロスし・・・うまい構成です。この構成が絶妙で、お洒落で上質なオムニバス映画や2時間ドラマを見ているといった趣でした。

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恋の始まり、別れの兆し、そして途中下車……関西のローカル線を舞台に繰り広げられる、片道わずか15分の胸キュン物語。大ベストセ ラー『図書館戦争』シリーズの著者による傑作の連作集。

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よく言われていますが、関西のオバちゃんの図々しさが(きちんと?)描かれ、大阪弁・関西弁の面白さも実によく表現されていました。特に女子高生が彼氏のことを話すシーンには大笑い。以下は正しく本の通りではないし、本当はもっと面白いのですが、

  「タグって何?」とか、
  「漢字が読まれへんって言うねん。大学も出た社会人がやで」

  「糸の横に月って書いてある・・・」
  「絹や絹!」
  「しかもちっちゃい口が抜けてるやん!」

  「ナンパ。しかも塚口」
  「うわビミョー」

恋人を寝取られた翔子の討ち入り話。花嫁が凍りつくような純白のドレスにプロが施したメークアップで披露宴に乗り込む。哀しくも痛快!

私は評判をよんだ「図書館戦争」はピンとこなかったのですが、この本はドンピシャでした。まあ、地元に近いところが舞台ということもありますしね。

ハートウォーミングな世界。これを生ぬるいと感じるか心地よいと感じるか、それは人それぞれでしょう。でも、この本を読むと、恐らく誰もがちょっぴり元気になって勇気が出ることでしょうし、時々こういう世界にひたるのも良いものです。

細部についてはよく覚えていないこともあり(汗)、参考ブログに挙げさせて頂いた皆さんの感想も参考にしてください。

◎参考ブログ:

   エビノートさんの”まったり読書日記”
   苗坊さんの”苗坊の徒然日記”
   juneさんの”本のある生活”
   板栗香さんの”マロンカフェ~のんびり読書~”


猫を抱いて象と泳ぐ(小川洋子)

2009-05-30 23:32:26 | 10:あ行の作家

Nekowo1 猫を抱いて象と泳ぐ(文藝春秋)
★★★★’:75点

「博士の愛した数式」(映画の感想のみブログにアップ済み)で数学と数式の奥深さ、美しさを鮮やかに描いた小川洋子さん。その彼女がまたもや何とも不思議な物語を紡ぎだしてくれた。
私などにはとても考えつかないような物語・設定で、その想像力・イマジネーションに驚嘆。やっぱり作家は凄い!それにしてもチェスを題材にした小説のタイトルが「猫を抱いて象と泳ぐ」とは!これにもビックリだった。

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伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒンの密やかな奇跡。触れ合うことも、語り合うことさえできないのに…大切な人にそっと囁きかけたくなる物語です。

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チェス文学というジャンルもあるそうだが、この小説はチェスの世界を描きながらも恐らくはこれまでのチェス文学とは全く異なっているのだろう。リトル・アリョーヒンを主人公としたチェスの世界(宇宙)は静かで密やかで、温かさともの悲しさが同居している。しかし、数式の美しさと同様にチェスの美しさ、とくに棋譜の美しさが遺憾なく表現されていると感じた。

彼が最も憧れたロシアのグランドマスターにして”盤上の詩人”と呼ばれたアレクサンドル・アリョーヒン。その手を指した人物のすべてが投影されているというチェスの棋譜。”リトル・アリョーヒン”の存在を記すほとんど唯一の証拠となった国際マスターS氏との歴史的な対局と「ビショップの奇跡」。老婆令嬢との素晴らしい戦い。後年、更に老いてすっかりチェスのことを忘れてしまった彼女にリトル・アリョーヒンがチェスを教えるシーンは感動的だった。もちろん、チェスと共に素晴らしいのが心のふれ合い、心の奥底でのつながりだった。リトル・アリョーヒンと祖父・祖母・弟、チェスのマスター、少女・ミイラ、老婆令嬢、婦長・・・。

私はチェスも将棋も囲碁も指さないのであるが、チェスの1つ1つの駒を擬人化しての性格や役割が丁寧に描かれており、その魅力や奥深さも感覚としては良く分かった。取った駒を使える将棋とは異なって、チェスの場合は決着がつくまでの手数はかなり少ないのかな?27手でチェックとか出てきましたが。海底チェス倶楽部での人形”リトル・アリョーヒン”としての戦い。横で佇む肩に鳩を乗せた少女・ミイラ。人間チェスとそこで起こった出来事。不思議な不思議な世界でした。

また、この小説がとくに不思議な味わいを醸しだしているのは、身体が大きくなることへの恐怖が描かれていることだろう。屋上から降りることができなくなった象、壁の間に挟まれて動けなくなった少女、家がわりのバスの中から外へ出ることができなくなったチェスのマスター、チェス盤の下にもぐりこんでしかチェスがさせない主人公のリトル・アリョーヒン。。。私にはこれに秘められた意味合いはよく理解できなかったのであるが。

ミイラから届いた「e4」とだけ書かれた手紙。
あまりにも突然の終幕。
ロープウェイのゴンドラのすれ違いのシーンが哀切だった。エピローグ良し!

将棋・棋士を描いた小説としては過去に、難病と闘いながら29年の短い生涯を生き抜いた天才棋士・村山聖を描いた「聖の青春」(大崎善生)が素晴らしかったのですが、全く味わいが異なるもののチェスを題材にしたとても不思議で印象深い小説が誕生した。

◎参考ブログ:

   そらさんの”日だまりで読書”
   苗坊さんの”苗坊の徒然日記”(2009-6-28追加)
   エビノートさんの”まったり読書日記”(2009-12-28追加)