ひろの東本西走!?

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ルパンの消息(横山秀夫)

2005-06-27 23:10:00 | 17:や行の作家

rupanルパンの消息(カッパノベルス)
★★★★’:75点

サントリーミステリー大賞(1991年)佳作となった横山秀夫の“幻の処女作”。
約15年前の作品を改稿したとのことですが、後年の傑作群と比較すると、やはり全体の深み・味わい・ムードといった点に乏しいでしょうか。人物の描き込みにもそれが当てはまります。
3億円事件も重要なファクターなのですが、ちょっと扱い方が変則的で散漫になったような気も。
但し、これがなかったら薄っぺらな事件(各種設定にもかなり無理あり)とも言えるのですが。

しかし、終盤の謎解きとドンデン返しは見事でした。いったんこれで解決かと思わせておいて・・・。鑑識のヤナさんのひとことで事件が再び動き出す。そしてとっくに時効になった3億円事件にもあっと驚く新展開が・・・。
このあたりはなかなかの追い込みで、さすがは横山秀夫と思わせるものあり。もう少し緊迫感とムードが伴っていたら、より一層盛り上がったと思います。
秋間幸子については、全く考えも予想もせず完敗。お見事。

以下、参考ブログにあげた”ゆきうさぎさん”とは異なった観点で刑事たちを中心に感想を書いてみると、

班長の溝呂木は、「第三の時効」の3人の凄腕班長(朽木、楠見、村瀬)の強烈なキャラクターに比べると全然物足りなかったです。しかし、事件が煮詰まってくると小部屋に一人こもって誰も寄せ付けず誰の意見も聞かず、一人で考えて考えて考え抜くという「六角堂」のエピソードは良かったです。部下のコントロールはさすが。

上野で巣鴨で、重要な2人を見つけた谷川(溝呂木班の末席刑事)と新田(所轄の新米刑事)。「ルパン」「ルパン三世」といったひねりもあっただけに、ここはもうちょっとじっくりと描いてほしかったところ。
大抜擢で鮎美の取り調べをまかされた谷川。それまで二人の被疑者の取り調べ競争にカリカリきていた寺尾。谷川の補佐役に回された寺尾の焦り・やっかみが秀逸でした。「ウタうな!」

事件が(一応)解決した後、同じ溝呂木班の主任刑事でありライバルでもある寺尾と大友の会話も味がありました。
  「寺尾-」「ん?」「何か食いに出るか」
         :
  「大友-」「なんだ?」「病院に行ってみるか」
         :
  「いや、ラーメン屋だ」
このシーンは「第三の時効」の第4話(密室の抜け穴)での東出と石上の会話を思い出させてくれました。東出と石上の方がもっとライバル心むき出しでしたが。

刑事訴訟法225条(その他の理由による時効の停止)は結構有名かもしれませんが、これも「第三の時効」で再び取り上げられています。

傑作と信じてやまない「第三の時効」につながるエピソードが幾つかあったとして、これは高く評価しましょう(^_^)。
また、横山の持ち味である警察内部のドロドロした部分もきちんと描かれていました。

ああ、また長文かつまとまりなし。
感想文ではなく、書評らしい文章を書けるのはいつの日か。。。

参考ブログ:ゆきうさぎさんの♪ウサギ・絵・花・本・ケータイ写真・・・♪
        本の虫さんの”本の虫” (5/10追加)


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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ひろさん、おはようございます。 (ゆきうさぎ)
2005-06-28 09:00:22
ひろさん、おはようございます。
私のつたない感想が参考ブログ!?
ありがたいような、恥ずかしいような...
トラバもありがとうございます。
75点ですか。まあ、この後すごい短編を書かれた方ですからね。
>寺尾の焦り・やっかみが秀逸
そうでしたね。どうも好きじゃない刑事で、と思ってたら
先を越されるし・・・最後は良かったですが。
チャーシューメンを食べに行くシーンがすきでした。
ホワッとしてて。
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コメントありがとうございます。 (ひろ009)
2005-06-28 12:43:56
コメントありがとうございます。

高水準作といえる80点をつけるかどうか迷ったのですが、75点にしました。
私にとって横山氏は、殿堂入り直前で足踏みをしている作家ですので期待度・要求水準が高く、採点はどうしても厳しめになります。若いころの作品なので基準を少し下げようかなとも思いましたが、ここは厳しくいきました。一読者がえらそうなことは言えませんが(^_^;

最初読み出したときはあまり”らしさ”を感じなかったのですが、終盤は唸りました。
良い意味で軽さ・明るさもありましたね。
これは良いと思いました。


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ひろ009さん、はじめまして♪ (トラキチ)
2005-07-30 09:49:09
ひろ009さん、はじめまして♪
マイベスを主催させていただいております、トラキチです。
ご投票ありがとうございました。

どんどん作家を追加して行きたく思いますので、これからもよろしくお願いします。
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トラキチさん、はじめまして。 (ひろ009)
2005-07-30 17:49:07
トラキチさん、はじめまして。
TB&コメントありがとうございます。

マイベスト、楽しい企画ですね。
横山秀夫では「クライマーズハイ」「第三の時効」「陰の季節」に投票しましたが、最新作の「震度0」(ただし未読)もここへ食い込んできそうな気がします。

他の作家さんでも投票したいと思いますので、よろしくお願い致します。



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こんにちは。 (八朔)
2005-10-17 21:49:13
こんにちは。
TBさせていただいた八朔と言います。
充実した内容ですね。私のお茶を濁す程度の感想とは大違いです~。
横山作品で私が読んだのは、「半落ち」、「クライマーズ・ハイ」とこのルパン、あとは短編(タイトルを憶えていない)くらいなのですが、一番気に入っているのは「クライマーズ・ハイ」です。
こちらの記事を読んで、「第三の時効」すごく読みたくなってしまいましたー!

他の記事もゆっくり読ませて頂きますね。
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八朔さん、はじめまして。 (ひろ009)
2005-10-17 23:31:05
八朔さん、はじめまして。
TB&コメントありがとうございます!

>充実した内容ですね。私のお茶を濁す程度の感想とは大違いです~。

  とんでもありません。ただ長いだけでございます。
  本当は言いたいことを短めの文章でスパッと表現できれば良いのですが(^_^;

「クライマーズ・ハイ」は凄かったですね。自信を持って横山さんのベストだと言うことができます。そして「第三の時効」。これまた凄いんですよ。ぜひぜひお読みください!
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改めてTBありがとうございます。 (ゆきうさぎのCoo)
2005-10-24 10:24:55
改めてTBありがとうございます。
で、よく解らないんですが、読み直しではないですよね?
書き直したのかな?
頭の中に???????がいっぱい。
大阪なのにロッテを応援してたのね~
ロッテは監督と選手が一丸となって、ファンサービスに徹して、強くなったのかな?
野球はトンチンカン一球、一級?、一休かも...
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☆ゆきうさぎのCooさんへ (ひろ009)
2005-10-24 12:27:58
☆ゆきうさぎのCooさんへ

”ゆきうさぎのCoo”、可愛らしくってイイ感じでしょ?

>読み直しではないですよね?書き直したのかな?

  すんません。カテゴリ整理をして改めて保存したのですが、
  TBも再送しちゃったようです。

>大阪なのにロッテを応援してたのね~

  元アンチタイガースです(家族では私だけ・・・by だいたひかる)。
  今シーズン、だいぶタイガース選手の顔と名前が一致して多少
   トラキチにはなったのですが。

  ロッテは応援ぶりに注目はしていました。
  チームを応援しだしたのはパ・リーグのプレーオフからです。
  これは凄いチームとビックリしたもので。
  日本シリーズ1・2戦を見てすっかりロッテ野球の虜になりました。

  ですが、このままでは全くつまらない日本シリーズになりかねないので、
  第3戦はタイガースを応援しまっせ!
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こちらからTBさせていただいたのに、参考ブログ... (本の虫)
2006-05-13 12:53:09
こちらからTBさせていただいたのに、参考ブログにあげていただいて光栄です。
今では横山秀夫は好きな作家のひとりですが、実は、最初に手に取った「半落ち」を読んだときは、何となく中途半端に感じたものです。しかし、いろいろな作品を読み進むに従って、一人一人の登場人物をていねいに作り上げていく姿勢が好きになりました。
この作品で3億円事件をからめたのは、確かに無理があるかもしれません。でも、登場人物の魅力に高得点をあげたいと思いました。
余談ですが、ひろ009さんは「クライマーズ・ハイ」をどのように受け止めていますか。横山作品の中で、記者経験を全面に出した唯一の作品ですが、主人公の判断がことごとく裏目に出る結末に、やるせない気持ちにさせられるのは私だけでしょうか?
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☆本の虫さんへ (ひろ009)
2006-05-13 18:01:49
☆本の虫さんへ

ようこそ!
こちらこそ丁寧にコメントして頂き、ありがとうございます。

私にとって横山さんは大のお気に入り作家さんなのですが、「殿堂」入り直前でちょっと足踏みをされている方なのです。まあ、私が足踏みをさせているのですが・・・。

「クライマーズ・ハイ」を読んだのはずっと以前で、そのためもあってブログで感想は書いていませんが、横山さんのベスト2!の1つと評価しています。長編のベストが「クライマーズ・ハイ」、短編のベストが「第三の時効」です。

「クライマーズ・ハイ」は、あの熱気、男気、記者魂などが素晴らしく(嫌な人間も多いですが)、ギリギリの判断などの緊迫感も最高です。物語の核となる日航機墜落事故もきちんと描かれていたと思います。

>主人公の判断がことごとく裏目に出る結末に、やるせない気持ちに・・・

うーん、そうでしたっけ。

特命全権デスクをまかされた悠木は必死で考えて行動し(部下に指示を出し)何とか己の信念を貫こうとするが、ありとあらゆる局面で悩み、上の判断に怒り、自分の判断ミスを後悔し・・・といった点が非常に印象的だったように覚えています。
そうか、”やるせない気持ち”確かにありましたね。

時間があれば、この作品についても感想を書きたいと思います。またお越しくださいね。

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