震度0(朝日新聞社)
★★★★’(~★★★★):75点(~80点)
未読なのに 横山秀夫新作・名作の予感 と書いた期待の最新作。
雑誌連載時に読んでいなかったので、新聞広告を見たときに題材と言い、これは”傑作誕生か!”と予感させたのだが、期待が大きかっただけに期待度対比で辛目の採点となってしまった。警察の内部抗争を描く横山らしい作品なのだが、あまりにも保身や組織防衛に汲々とする人物が多くて、読んでいる最中に若干興ざめしてしまった。県警幹部ともあろう者が皆こんな考え方しかしていないのか、できないのか。あまりにも幼稚な言動はちょっと誇張が過ぎたのでは?横山さん。ラスト近く、失踪事件の真相が明らかになるあたりはさすが横山と思わせるものがあっただけに、これらの人物像の設定・描き方が残念だった。
横山秀夫の熱心なファンであれば、本作は「クライマーズ・ハイ」と「半落ち」をミックスしたような小説だと感じるだろう。しかし、似ているだけで読後の余韻は全く異なったものであった(私は「半落ち」を世間ほど高くは評価していないが)。阪神淡路大震災と同時並行で物語は進んでいくが、大震災を取り上げた意図・必然性もよく分からなかった。まさか題名のためではないだろうが。「クライマーズ・ハイ」の日航ジャンボ墜落事故は、それが作品を貫く太い幹となっていて物語と決して切り離せないものだったのだが・・・。
比較的感情移入して読めた人物は、準キャリアの警備部長・堀川と地元ノンキャリアで刑事部長の藤巻。藤巻も保身や組織防衛(主には刑事部の)とは決して無縁ではないのだが、キャリアの冬木と真正面から対決するなど気骨ありで印象的だった。ラスト、人の命を救おうとした2人の姿には救われた気がしたが、果たしてN県警は「激震」から立ち直れるのか。
気に入ったシーン(藤巻の視点で描かれたもの):
瀧川は礼も残さず飛び出していった。刑事の背中だった。
曲がった道も真っ直ぐ走るような・・・。
午後には三沢徹の出頭があるというのに。
せっかくこのようないい味を出しているのに。この路線で書いてほしかったなあ。
お気に入り作家の殿堂入りはまたも保留です。
参考ブログ:
♪ウサギ・絵・花・本・写真・・・♪
多字騒論
黒猫の隠れ処
じゃじゃままのブックレビュー
奥さまは149cm(2007-12-1追加)
読まれたんですね。
TBありがとうございました。 こちらからもさせていただきました。
同じのが2ありましたので一つ消させていただきました。 悪しからず。
う~~ん、あんまり~だったのですね。
それまでに好きだった作品や、自分の思い入れと比べてしまいますからね~
私は好きでした。 「半落ち」はイマイチでしたが。
私のブログに返事を書きました。以下、それを引いておきます。
>さっそくブログ拝見しました。たしかに同じような感想ですね(笑)
>きっと横山ファンの誰もが思うことなんでしょう。
>私は『クライマーズハイ』が一番好きです。
>ひろ00さんのブログにもありましたが、『半落ち』は少し話題が先行しすぎたのかもしれません。
>横山氏は多作ですから、「当たり外れ」が多くても我慢するしかないんでしょう。
>いちファンとして、これからも傑作を辛抱強く待ちたいと思います。
さらに書き加えますと、私もヒラの刑事たちの描写には心が魅かれました。
「落城」なんて異名を持つ刑事の質問法と観察眼には驚きました。
警察のお世話にはなりたくないと強く思いました(笑)
読了直後はネガティブな気持ちが強かったのですが、もう一度冷静に読んでみるかと思って、本日終盤部分を再読しました。
あまり詳しくは書けませんが、不破夫妻の苦しみ、特に妻・静江の悲しみと苦しみには胸をうたれました。
かつて息子を失った堀川夫妻の苦しみにもしんみり。
藤巻夫妻の電話での会話も味わいがありましたね。
堀川と藤巻、この2人が激震に見舞われたN県警を真に救うことになるのだろうか。
”震源0再考”として別エントリーで書こうかな。
Sonicさんのブログ記事を読んで、いやー、よく似た感想だなとビックリしました。部下の刑事や鑑識官たちはなかなか凄腕でしたね。
同じ横山ファンとして傑作を辛抱強く待ちましょう!
期待していたんですが、感動はありませんでした。
しかし面白かった。
これは紛れも無く横山作品ですね。
組織と個人の葛藤を書かせたら右に出るものはいませんよね。
何でも、横山さんは7年先まで仕事が入っているとか。そんな多忙の中でじっくり書いて欲しいです。
次回作にさらに期待しましょう。
申し訳ありません、削除しておいてください。
初めての横山作品だったんですが・・・。
面白かったけど今ひとつというところでした。
>初めての横山作品だったんですが・・・。
>面白かったけど今ひとつというところでした。
それは正しい評価だと思いますよ(^_^)。
題材自体は悪くはなかったのですが・・・。
私の絶対のオススメは「クライマーズ・ハイ」と「第三の時効」。次いで「陰の季節」と「動機」です。ちょっとハードな内容で人によって好き嫌いがあるため、ぐれえすさんにフィットするかどうかは分かりませんが。
人間観察という意味でも非常に興味深かった作品でした。間宮は最初から好きじゃなかったし、椎野もそう。
地味な堀川とアクの強そうな藤巻の存在に救われました。
はじめまして!
TB&コメントありがとうございます。
堀川と藤巻は良かったですね。
彼らがいなかったら、県警を舞台にした喜劇に堕するおそれがあったと思います。まあ、それだけ登場人物に対して怒ったり、ホッとしたりしていたのですが・・・。
>「人間観察という意味でも非常に興味深かった作品」
なるほど!
同感です。