ひろの東本西走!?

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母恋旅烏(荻原浩)

2005-10-04 12:51:00 | 本と雑誌

hahakoi-1母恋旅烏(小学館文庫)
☆☆☆★:70点

~出版社/著者からの内容紹介(by Amazon)~
レンタル家族、始めました。一家5人で頑張ります!?
 花菱清太郎が家族全員を巻き込んで始めたのは、レンタル家族派遣業。元大衆演劇役者という経歴と経験を武器に意気揚々と張り切ったものの、浮草稼業に楽はなし。失敗につく失敗に、借金がかさみ火の車。やがて住む家すらも失い、かつての義理で旅まわりの大衆演劇の一座に加わることとなったが。はてさて、一家6人の運命やいかに!?

前半のレンタル家族派遣業の部分も面白かったが、まあこれは”想定範囲内(by ホリエモン)”の面白さ。その中では、ひとり暮らしのおばあさん宅を亡くなった息子一家として家族全員で訪ねる「1.うちの家族のこと」が良かった。

要求がシビアで、軽ーくあしらわれる父さん。「あかん、このばあさん、遊び慣れとる」と戦々恐々。しかし、母さんが「お母さま、ご病気のほうはいかがですか?」と問いかけると、おばあさんはうれしそうにしゃべりはじめる。「どうもこうもないよ、あなた。あちこちもう大変だよ・・・」

いったんは飛び出した大衆演劇の一座に加わる(戻る)後半が非常に面白く、感動的でもある。とくに舞台のシーンが素晴らしい。舞台で拍手と歓声を浴びる喜びを知ってしまうともうやめられない。たとえ場末の小屋や地方のヘルスセンターに行っても、過去の栄光を夢見て頑張っちゃう。おひねりやご祝儀を頂ければ万々歳。寡黙な新入りの桂木が、な、なんと○○○の人(出身者)だったとは!父と娘の涙の共演(もちろん、ひねりあり)は、さんざん泣かせて・・・。

超楽観主義というか、世間の感覚とひとりだけずれている父さん。父さんと母さんは絶妙なコンビかと思われたのだが、終盤、思いもよらぬ展開に。家族の中でただ一人母さんのことだけは、末の息子の寛二から見た姿しか描かれず、母さんの心情は分からない。その描き方が秀逸だった。

荻原浩作品では「なかよし小鳩組」の方が若干インパクトが強かったかな?

◎参考ブログ:そらさんの”日だまりで読書”