生かされて

乳癌闘病記、エッセイ、詩、童話、小説を通して生かされている喜びを綴っていきます。 by土筆文香(つくしふみか)

50周年記念に(その2)

2006-08-16 17:17:40 | 日記
19歳の娘の目からみると、50歳というのは「すごい」年なのでしょう。誕生日に交わした娘との会話を再現します。

「おめでとう。50歳なんて、すごいね。誕生日、嬉しい?」

「嬉しいよ。だって半世紀も生かされているのだもの」

「お母さん、昔と比べてどう? 充実している?」

「昔っていうのはどれくらい前のこと? わたしの感覚だと昔といったら子供のころを思い浮かべるけれど……」

「10年くらい前のことだよ」

「というと、あなたが小4のころね。育成会のことや学校の役員の仕事で忙しかったし、あなたたちに手がかかって自分の時間は少なかったわ」

「いまは、自由な時間がいっぱいあっていいね。充実しているでしょう」

「そう。とても充実している。わかる?」

「わかるよ。生き生きしているもの」

「自由な時間の多少とは関係なく、10年前とはずいぶん心境が違っているの」

「どういうふうに?」

「40歳の誕生日のときは、すごく憂鬱だったの。30代ならまだ若いという感じだけど、40すぎるとオバサンっていう気がして……」

「1歳でも若く見せようと、無駄な努力してたもんね」

「アハハハ……たしかに無駄だったね。努力のかいなく、年より老けてみられることが多かったし……。年より若くみえる人はたくさんいるけれど、どんな人でもひとつずつ年を重ねていくのだから、神さまは公平よね」

「いまはどうして50歳になっても喜んでいるの?」

「乳癌になって、命の重さを実感したからかな。病気で、生きたくても生きられない人が大勢いる中で50歳まで生かしていただいていることに感謝の気持ちでいっぱいなの」

「50年って長いよね」

「あっという間だったよ。年を重ねるごとに日が経つのが早く感じられるの。あなたも50歳になったら実感するでしょう」

「50歳なんてずっと先だよ」

「あなたは若いからそう思えるでしょうけど、80歳まで生かされたとしても、あっという間と感じると思う。人生って案外短いものよ」

「そうかなあ……」

「限られた時間を生きているから、使命を果たしていかなければと思うの」

「使命?」

「神さまのこと、イエスさまのしてくださったことを伝えるという使命よ」

「それはクリスチャンになったときから思っていたことでしょう?」

「そうでもないの……。洗礼を受けたころは、神さまのことがよくわかっていなかったからね」

「じゃあ今は?」

「生活のすべての時間を捧げたい、キリストを証していきたいと思っているの」

「献身(伝道者としてすべてを捧げるという意味)するの?」

「そうじゃなくて、『あなたがたは、食べるのにも、飲むのにも、何をするにも、ただ神の栄光を現すためにしなさい』というみ言葉があるでしょう。日常生活の中でそうしたいの。あと、何年生きられるかわからないけど、生かされている間はね」  



60歳の誕生日にも娘とこんな会話ができたらいいなあと思いました。


               おわり

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