Triority(トライオリティ)

四十にして惑う、それがトリニータ。

最適解を探す旅は続く(16節神戸戦)

2019-06-23 20:40:46 | マッチレポート19'
ちょっと予想外なほどにトピックス満載の試合となった。何かもう満載すぎてイニエスタが居ぬエスタだったこととかもうどうでもよくなったわ。長谷川のスパイクがちゃんとしてれば勝ててたんじゃないかと思うし、個人的には比較的ポジティブにこの試合を捉えてる。


まずは失点について。庄司がまだ大分のサッカーに馴染み切っていないこと(主に攻撃面で)はルヴァンカップで十分に分かっていた。それでも智輝不在時のポジション争いに勝ったのはスタンダードなCBとしての高いポテンシャルを買われてだと思う。実際にウェリントンやジョーときっちりやり合ってきている。しかしこの試合ではその心配された繋ぎの部分で決定的なミスをしてしまい先制点を許すこととなった。ただ庄司はその後もメンタル面で落ちることなく、記憶にある限りで2回は相手のプレッシャーラインを超える縦方向へのパスを成功させている。

2失点目についても確かに失点の直接的な原因は高木のトラップが大きくなったことだけど、ポイントはその前の島川から高木へのバックパスだと思ってる。あのシーンは小塚がDF2枚を引きつけながら下がってきて前を向けている島川にリターンした時点で我々としては狙いが「ハマって」いた。右斜め方向で阿道がフリーになっており、そこに付けられていたらまず間違いなくビッグチャンスになっていたシーンだったが、島川の選択は体を窮屈に曲げてまでGKへのバックパスだった。

この後、庄司が45分、島川が54分といずれも早い時間にそっくりそのままポジションを入れ替えられてしまったわけで、繋ぎの部分で問題があると判断された可能性は明らかに高い。ただ個人的にはその部分についてはあまり大きな問題だと感じていなくて、庄司も島川も片野坂さんのサッカーをやり始めてわずか半年。例えば1試合5得点とか、5連勝とか、J1昇格とかこのサッカーでの明確な成功体験がない中でかつ高いプレッシャーに晒されて視野が広く保てないことなんてそんなに大きな問題ではない。その点についてはむしろそういう起用をした片野坂さんに責任があるのであって、失敗をしたとしても日々ブラッシュアップしていくだけだよ。2年くらい前からこういうサッカーは試合が始まってしまえば一番大事なのは「勇気」だとずっと言い続けてきた。でもそれもそろそろ特段言うことでもなくなってきたかなと思うくらいに成熟してきたわけだけど、改めてその部分がフォーカスされくるのかなと思った試合だった。2人には下だけは向いてほしくない。


ちなみに2失点目が決まった直後に怜さんがダッシュで島川のところに駆け寄り、もちろん聞こえたわけじゃないけど、まず間違いなく「阿道が空いてたよ」と直前のプレーを振り返ってアドバイスを出していた。良い意味で自分の仕事だけを淡々とかつ爆速でこなすようなイメージの怜さんがこんな行動するのは珍しいなと思ったんだけど、片野坂サッカー4年目の怜さんと、半年の島川では見えている世界が違って当然。繰り返しになるけど、こんな失点全然問題じゃない。失敗したからこそよりチャレンジングな姿勢を貫いてほしい。そういう姿を後押ししたい。







試合が始まるまではこの試合のポイントは前田の神戸凱旋になると思ってた。自分が育った神戸ではなかなか出場機会を掴めずに17年に大分に移籍。移籍当初はその状況が変わることがなかったけど、持ち前の高い戦術理解力で中盤の核となっていった。18年もシーズン中盤まではベンチにすら入れない日々が続くも「これでダメなら最後」の覚悟で臨んだ愛媛戦で片野坂さんの信頼を勝ち取ってからはずっと大分の中盤に欠かせない人材にまで成長し、そして現在に至っている。自分も長いこと転勤族をしているので、かつての職場に自分の成長した姿を見せられることの喜びや嬉しさがよく分かるし、実際に昨日の前田も普段より気持ちが入っていたように感じた。



しかしより輝いたのは同じ凱旋ではあるもののここまでリーグ戦には全く絡めていなかった小林成豪だったわけで、これには本当に驚いた。でも成豪は準備が出来ていた。それはゴール裏に一気に火をつけた投入直後のドリブルに表れていた。


これが!!


こうで!!


こうだ!!

多分大分サポーターの多くが「シャドーの成豪が見たい」と思っていたはずで、自分もその1人だった。去年の山形での活躍を見ていれば普通にその思いは持つはずで、そんな期待に反するようにワイドでしか使われないことに釈然としない思いはあったし、成豪が本来持っている力を考えれば夏の移籍は不可避だと思っていた。




試合後のチームメートの祝福の仕方を見てもここまでの苦労が少なくなかったことはすぐに分かったし、インタビューではこの不遇の期間のメンタルコンディションにも言及していて、それを聞くと本当によく耐えて耐えてチャンスを待ち続けてくれたなと改めて思う。小塚にも、阿道にも、ごっちゃんにも、さんぺーにもない魅力が成豪にはある。それをこの試合では一度じゃなく見せてくれた。次週やってくる阿道不在という現在の大分が抱える最大の危機に対して、何の前触れもなくやってきた「小林成豪」という躍動感あふれるアタッカーがもしかすると最適解になるのだろうか。楽しみが一つ増えたことだけは間違いない。







何とかもぎ取った勝ち点にあまり水を差したくないんだけど、一応触れておきます。気持ちは分かる。気持ちは分かるけど、試合中の「スペース・トルネード・オガワ」はダメ、ゼッタイ!本気で痛がる成豪の姿に手首の骨でも折れたのかと、同点ゴールの興奮が一瞬で覚めてしまったよ。前田さん、猛省ね。やるならキレイに投げ切ろう(そういうことじゃない)。







そしてこの試合を語る上でもう一つ外せないトピックが、刀根亮輔の大分でのJ1デビューでしょう。本当にこのタイミングを待っていたかのように、合同新聞が大分FCによる企業再生ファンドからの全株買い戻しの見通しを報じたまさにその日に刀根亮輔が大分のユニフォームを着てJ1のピッチに立つ日がやってきたのは何だか偶然だけでは片付けられないような気がしている。プロ入りが発表された時はJ1クラブだったけど、入団してみたら借金しか残っていないJ2クラブだったという最悪としか言いようのないタイミングでプロになった刀根がわずか2年でこのクラブを離れることが決まった時はこんな未来は予想すら出来なかったわけで、大分復帰が決まった時も嬉しかったし、昨季右CBのレギュラーに定着したことも嬉しかったけど、このJ1デビューはこの10年の道のりを考えると涙なしでは語れないね。庄司に教え込むかのように落ち着き払ったパス回しを見せたかと思えば、ユースの後輩には負けてらんねーぞとばかりにオーバラップも見せた。本当に嬉しかった刀根亮輔の復帰。まだまだここから。溜め込んだうっぷんを晴らすのはここからだよ。やったれ、刀根亮輔!!





イニエスタは居ぬエスタだったわけだけど、ビジャのプレーは見ることが出来た。高木が何とかかき出したループを筆頭に繊細なプレーが印象的だった。自分は本当に年がら年中国内外を問わずサッカーを観てるんだけど、不思議とスペインのサッカーを観てこなかった。スペインのサッカーのレベルがどうとかいう問題ではなく、Jリーグ、国内の育成年代、プレミアリーグを観ていると単純に観る時間がないというだけのことなんだけど、そんな感じなので世間一般で言うほどイニエスタとかビジャに思い入れはないんだよね。この試合でも単純に三田がいいプレーを連発していたので、イニエスタの存在とか全く気にしてなかったなというレベルの感想しか残らなかったな。



神戸もガンバと同じで13年シーズンが入れ替わりだったので、本当に久しぶりだなぁと懐かしくなった。08年はナビスコ制覇直前なのに負けちゃった記憶がしっかりと残ってたんだけど、09年は全く記憶に残ってなかったから記録を見返してみたら結果的にホベが大分ラストマッチになっちゃった試合だったね。だから多分記憶から消し去りたかったのかもしれないね。チケットの半券が残ってるからスタジアムに行ってるはずなのに本当に全く記憶にない。その09年以来のノエビアスタジアム(当時はホームズスタジアム)だからちょうど10年ぶり。ここも本当にいいスタジアムだね。


ということでリーグ戦の勝ちなしはこれで5試合に。1ヶ月以上勝ち点3から遠ざかっているわけだけど、試合の度に違う課題が出てきて、片野坂さんの最適解を探す悩ましい旅はまだまだ続くよという感じですな。でもその道のりはそんなに暗いものでもないと思ってる。期待しつつ一緒に進んでいきたい。
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