大学4年生が臨時免許で教壇に立つ

 福岡県教育委員会が、同県みやこ町の町立中学校で、臨時教員免許を持つ(責任の所在を明確にするために記すが、福岡県教委が発行した臨時免許状である)大学4年生2名が非常勤講師として勤務していることを9日に明らかにしたとの報道(朝日新聞)。福岡県教委によると教員不足を補うため措置であり、2名は県内の私立大4年の男子とのこと。県教委が2人にそれぞれ数学と技術の臨時免許を出しているようだ。

 中学校二種の普通教員免許状は短期大学卒業を基礎資格として、教育職員免許法に定められた単位(約40単位)を修得し(単位ではないが介護等体験も必要)各都道府県教育委員会に申請すれば取得することが出来る。また、短期大学を卒業していなくても、4年制大学において2年以上在学、62単位以上を取得し、さらに免許に必要な科目を修得していれば二種の普通免許状の取得が可能である。

 このことを考えれば、大学4年生の年齢で教壇に立っていても不思議では無いのだが、問題は普通免許状取得に必要なすべての単位を習得していないはずの学生に臨時免許状を発給した教育委員会の対応にある。件の学生らはおそらく、教員免許取得に必要な科目の一部を現在履修中であり、果たして臨時免許状を付与することが相応しいのかと云う疑問が残るのである。

 もうひとつの問題は「受け持つ授業数は週5コマずつのため、大学側が学業に影響はないと判断した」ことである。勿論教委側もそれを妥当と判断していることになる。受け持つ授業は週5コマであっても教師として教壇に立つためには授業案作成・教材研究の時間が当然必要である。授業の中で小テスト、中間試験・期末試験等の作問と採点もあるはずだ。通勤のために費やされる時間もある。

 臨時免許を持って教壇に立つに相応しいと大学が推薦したのだとすれば、彼らは当然のこととして教員志望の学生だろうから、今月下旬から8月にかけて実施される教員採用試験の受験勉強もあるはずだ。そこまで考えての推薦であり臨時任用であったのか。学生の将来を考えず県教委からの依頼に応えることで教委との良好な関係を維持しようとした大学の身勝手かつ短絡的な対応、自らの教員不足を解決するための県教委のお手盛り的便法ではないのか。

 もしもこの2名が福岡県の教員採用試験を受験して、不合格であったらどうする。本来の教員採用試験に受かりもしない学生を教壇に立たせた福岡県教委の責任は重い。また採用試験のための十分な準備の時間を奪う要因をつくった、推薦した大学の責任も軽かろうはずはない。数年前までは団塊の世代の大量退職に伴う補充の為にある程度の数の採用があったけれど、それは小学校教員の話し。中高の教員採用は教科を問わずどの時代もどの都道府県においても厳しい選抜となっているのが現実なのである。

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