カメラの命は操作性

 カメラにおいてもっとも大切な要素は、撮影者の意図を正確かつ美しく表現するための、素早く確実な操作が出来ることです。

 カメラは写真を撮る道具として合目的的に進化してきた。その最終進化系がデジタル一眼レフカメラ(DSLR)である。比較的軽量コンパクトなノンレフレックス(ミラーレス)カメラは、正確なフレーミングとピント合わせのために必須な光学系ファインダー(注)と、確実なホールドのために必要な右手用のグリップを捨てた。

 更に小型のコンパクトタイプカメラは携帯性と低廉を最重要視した結果、表現力を拡張するためのレンズの交換機能を捨て、イメージセンサーの小型化に伴うレンズの短焦点化により「ボケ」表現の可能性を放棄し、小型化したためにボディーに装備できるボタンの数が減り、例えば露出補正やISO感度の変更のためには幾度もボタンを押さなければ目的の操作が出来ないと云った、不便性が「強化」された。

 携帯電話にカメラが搭載されて久しいが、もともと電話機としてデザインされた機械にカメラを内臓したわけだから、カメラとしての機能と操作性が良かろうはずがなかった。しかし、この分野の技術革新は素早かった。最新のスマートフォンで撮った写真は驚くほど美しかったりもする。しかしながら、瞬時にカメラを起動させ、最も見て欲しいところにごく短時間でピントを合わせ、最良の瞬間を固定するには至っていない。

 当然のことである。そのために特化してデザインされた機械ではないのだからだ。云い方を変えれば、一瞬を争わず、最良の光源による十分な光量のある場所で、慎重にピント合わせとフレーミングで出来るならば、美しくかつ説得力のある写真を撮ることが出来る可能性があるのはご存知の通りだ。

 さて、本論。なぜこんなことを長々と書いたかと云えば、iPhoneをモニターと各種設定のためのタッチパネルとして使用するカメラが登場したからである。これまでにも「レンズスタイルカメラ」などと銘打ったカメラユニットが登場してはいるけれど、郷秋<Gauche>に云わせればまったく中途半端な製品で、iPhoneとの親和性を考えるならば、このDxO ONEこそが本命であるとは云える。

http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20150622_708152.html
iOS端末用カメラユニット「DxO ONE」(iOS 8以降に対応)79,900円。

 簡単に云えば、モニターと操作のためのボタン等を(ほとんど)持たず、32mm相当F1.8と比較的明るい固定焦点レンズを搭載した1インチサイズのイメージセンサーを持つカメラの「ような」もの。云い替えるならば、デジタルカメラとして必要な機能の半分しか持っていないカメラユニットである。このユニットはiPhoneのLightning端子に差し込んではじめてカメラとして機能する。

 カメラとして十分な操作性を備えていないiPhoneに、更に小さな箱が外付けされるのだから、iPhone単体で撮影するよりも更に操作性が悪化することは間違いない。郷秋<Gauche>は最初に、「カメラにおいてもっとも大切な要素は、撮影者の意図を正確かつ美しく表現するために、素早く確実な操作が出来ることである」と書いた。これに従えば、iPhone+DxO ONEはカメラとしての最も大切な機能を最初から備えていない、不完全なカメラ擬きであると云う事になる。

 ガジェット愛好家以外にはまったくお勧めしません。79,900円あれば真っ当なDSLRを手に入れることができます。DSLRで写真が写る仕組みを学び、美しい写真を撮るためのコツを修得すれうことができれば、ノンレフレックスでもコンパクトでも撮影の意図を正確かつ美しく表現した写真を撮ることが出来るようになります。「弘法筆を選ばず」と云いますが、「弘法に非ずんば筆を選ぶべし」(©郷秋<Gauche>)です。選ぶべきはDSLRです。写真の腕を上げたければDSLRであり、他の選択肢はありません。

注:EVFを否定するものではない。光学ファインダーを凌駕するEVFが登場するのなら、大きくかつ致命的な振動を伴うレフレックス機構は無いに越したことはない。もしそのようなカメラがNikonから登場したなら、郷秋<Gauche>は躊躇なくDSLRから乗り換える。


 と云う訳で今日の一枚は、カメラではないiPhoneに内臓されたカメラ機能で撮影した、郷秋<Gauche>が愛用するカメラ、Nikon D800。

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