『Solid State Surviver』 Yellow Magic Orchestra ☆☆☆☆
イエロー・マジック・オーケストラのパブリック・イメージを決定づけたセカンド・アルバム。『テクノポリス』や『ライディーン』など超有名曲が収録されている。特にファンでもないがYMOは知ってるよという人がYMOに持っているイメージは、このアルバムによって形成されたものがほとんどだと思われる。バカ売れしたアルバムだが、実は私はこのアルバムをそれほど頻繁には聴かない。良く聴くのはファーストの『Yellow Magic Orchestra』、後期の『BGM』『テクノデリック』あたりである。
ファースト・アルバム『Yellow Magic Orchestra』にはフュージョン色があるが、このセカンドではそれはなくなり、ロック・ポップス色が強まったと良く言われる。まあそれが功を奏して万人受けし、バカ売れしたのだろう。明らかにメロディがより明快になっている。高橋幸宏が鼻歌で作ったという『ライディーン』もそうだし、坂本龍一はピンク・レディーを分析して『テクノポリス』を生み出し、単純なコード進行を使って『Behind The Mask』を作った。ビートルズの『Day Tripper』をカヴァーし、YMO自らデジタル・パンクと呼ぶ『Solid State Survivor』ではニューウェーヴやノイズ音楽への嗜好がはっきりと見て取れる。複雑なコード進行とメロディを奏でていたファーストとは明らかに違う。
アレンジも変わっている。顕著な違いはファーストにはあった坂本龍一のピアノがなくなり、全部電子音に置き換わっていることだ。ファーストではピコピコ・サウンドなどと言われながらも、『シムーン』『コズミック・サーフィン』『東風』などではジャズっぽいピアノがかなり入っていて、見えないところでアルバムの印象を決定づけていた。私はファーストの「フュージョン色」はこのピアノによるものが大きいと思っているが、セカンドではそれがきれいさっぱりなくなっている。
さて、YMOといえば『ライディーン』『テクノポリス』という人は多いと思うが、私はこの『テクノポリス』という曲がどうしても好きになれない。この曲が一曲目だというのが、私がこのアルバムをあまり聴かない理由だと思う。坂本龍一がYMOで書いた曲はどれもこれも好きなのに、一番有名と思われるこの曲が好きになれないのは自分でも不思議だ。ピンク・レディーの曲を分析して作ったといわれるが、この薄っぺらで変に気取ったメロディは何なんだ。とても坂本龍一とは思えない。トキオ、トキオ、とやたら連呼するヴォコーダーも嫌いだし、面白味というかYMOらしい茶目っ気のかけらもない凡庸なアレンジも嫌いである。その代わりピコピコ電子音はこれでもかと盛り込まれており、「はやりのテクノ」というイメージを最大限に利用しました、みたいに思えてしまう。YMOの曲はほとんどが今聴いても古びていないが、この曲だけは無残に古びて聴こえるのである。しかしこの曲はYMOファンの皆さんの間でもやはり人気があるらしい。昔からどうしてもそれが分からない。
逆に『ライディーン』は、最初に聴いた時はやっぱりYMOで一番好きな曲だった。とことんキャッチーだけどYMOらしいエキゾチズムと茶目っ気があるメロディがいいし、それを盛り上げるキラキラした華やかなアレンジもいい。やはり名曲だと思う。しかし最近は、あまりに聴きすぎて飽きたというところはある。
しかしこのアルバムのベストチューンは、なんといってもこの超有名曲二曲に挟まれてひっそりとたたずむ『Absolute Ego Dance』以外にはない。細野晴臣得意のトロピカル沖縄民謡風メロディが炸裂するこの曲は、なんとなく不安なAメロ、打って変わって極楽浄土なBメロ、そして「ハイヤ~」という沖縄民謡風合いの手がめまぐるしく入れ替わり、ヴォコーダーによる「うー、わーうー」というさりげないコーラスも愛らしく、もう最高である。このエキゾチズムと愛らしさ、ユーモア、とろけるような美しさ、そして躍動感、どれをとっても絶品で、YMO以外誰も作ることのできない曲だと思う。ファーストの『シムーン』もやはり素晴らしい曲だが、同じトロピカル路線ということでこの『アブソリュート・エゴ・ダンス』は『シムーン』の流れを汲む曲といえる。『アブソリュート・エゴ・ダンス』というタイトルも素晴らしい。この曲を聴くと、私の頭の中にはふっくらした、笑みをたたえた観音様が、くねくねと愛らしく体をくねらせながら踊っているという図が浮かんでくるのである。まさに桃源郷サウンド。
ちなみに私はYMOでは、細野晴臣氏の曲に好きな曲が多い。ファーストでも『シムーン』や『マッド・ピエロ』が好きだし、『BGM』でも『RAP PHENOMENA』や『MASS』が気に入っている。キャッチーな高橋幸宏、端正な坂本龍一の曲もいいが、細野楽曲のあのなんともいえないユーモア、アイロニーの精神がYMOには似合う気がする。
言うまでもないことだが、このブログのタイトルはわが愛する『Absolute Ego Dance』から拝借したものである。
イエロー・マジック・オーケストラのパブリック・イメージを決定づけたセカンド・アルバム。『テクノポリス』や『ライディーン』など超有名曲が収録されている。特にファンでもないがYMOは知ってるよという人がYMOに持っているイメージは、このアルバムによって形成されたものがほとんどだと思われる。バカ売れしたアルバムだが、実は私はこのアルバムをそれほど頻繁には聴かない。良く聴くのはファーストの『Yellow Magic Orchestra』、後期の『BGM』『テクノデリック』あたりである。
ファースト・アルバム『Yellow Magic Orchestra』にはフュージョン色があるが、このセカンドではそれはなくなり、ロック・ポップス色が強まったと良く言われる。まあそれが功を奏して万人受けし、バカ売れしたのだろう。明らかにメロディがより明快になっている。高橋幸宏が鼻歌で作ったという『ライディーン』もそうだし、坂本龍一はピンク・レディーを分析して『テクノポリス』を生み出し、単純なコード進行を使って『Behind The Mask』を作った。ビートルズの『Day Tripper』をカヴァーし、YMO自らデジタル・パンクと呼ぶ『Solid State Survivor』ではニューウェーヴやノイズ音楽への嗜好がはっきりと見て取れる。複雑なコード進行とメロディを奏でていたファーストとは明らかに違う。
アレンジも変わっている。顕著な違いはファーストにはあった坂本龍一のピアノがなくなり、全部電子音に置き換わっていることだ。ファーストではピコピコ・サウンドなどと言われながらも、『シムーン』『コズミック・サーフィン』『東風』などではジャズっぽいピアノがかなり入っていて、見えないところでアルバムの印象を決定づけていた。私はファーストの「フュージョン色」はこのピアノによるものが大きいと思っているが、セカンドではそれがきれいさっぱりなくなっている。
さて、YMOといえば『ライディーン』『テクノポリス』という人は多いと思うが、私はこの『テクノポリス』という曲がどうしても好きになれない。この曲が一曲目だというのが、私がこのアルバムをあまり聴かない理由だと思う。坂本龍一がYMOで書いた曲はどれもこれも好きなのに、一番有名と思われるこの曲が好きになれないのは自分でも不思議だ。ピンク・レディーの曲を分析して作ったといわれるが、この薄っぺらで変に気取ったメロディは何なんだ。とても坂本龍一とは思えない。トキオ、トキオ、とやたら連呼するヴォコーダーも嫌いだし、面白味というかYMOらしい茶目っ気のかけらもない凡庸なアレンジも嫌いである。その代わりピコピコ電子音はこれでもかと盛り込まれており、「はやりのテクノ」というイメージを最大限に利用しました、みたいに思えてしまう。YMOの曲はほとんどが今聴いても古びていないが、この曲だけは無残に古びて聴こえるのである。しかしこの曲はYMOファンの皆さんの間でもやはり人気があるらしい。昔からどうしてもそれが分からない。
逆に『ライディーン』は、最初に聴いた時はやっぱりYMOで一番好きな曲だった。とことんキャッチーだけどYMOらしいエキゾチズムと茶目っ気があるメロディがいいし、それを盛り上げるキラキラした華やかなアレンジもいい。やはり名曲だと思う。しかし最近は、あまりに聴きすぎて飽きたというところはある。
しかしこのアルバムのベストチューンは、なんといってもこの超有名曲二曲に挟まれてひっそりとたたずむ『Absolute Ego Dance』以外にはない。細野晴臣得意のトロピカル沖縄民謡風メロディが炸裂するこの曲は、なんとなく不安なAメロ、打って変わって極楽浄土なBメロ、そして「ハイヤ~」という沖縄民謡風合いの手がめまぐるしく入れ替わり、ヴォコーダーによる「うー、わーうー」というさりげないコーラスも愛らしく、もう最高である。このエキゾチズムと愛らしさ、ユーモア、とろけるような美しさ、そして躍動感、どれをとっても絶品で、YMO以外誰も作ることのできない曲だと思う。ファーストの『シムーン』もやはり素晴らしい曲だが、同じトロピカル路線ということでこの『アブソリュート・エゴ・ダンス』は『シムーン』の流れを汲む曲といえる。『アブソリュート・エゴ・ダンス』というタイトルも素晴らしい。この曲を聴くと、私の頭の中にはふっくらした、笑みをたたえた観音様が、くねくねと愛らしく体をくねらせながら踊っているという図が浮かんでくるのである。まさに桃源郷サウンド。
ちなみに私はYMOでは、細野晴臣氏の曲に好きな曲が多い。ファーストでも『シムーン』や『マッド・ピエロ』が好きだし、『BGM』でも『RAP PHENOMENA』や『MASS』が気に入っている。キャッチーな高橋幸宏、端正な坂本龍一の曲もいいが、細野楽曲のあのなんともいえないユーモア、アイロニーの精神がYMOには似合う気がする。
言うまでもないことだが、このブログのタイトルはわが愛する『Absolute Ego Dance』から拝借したものである。
長年のYMOファンとして、とても参考になりました。
ありがとうございました!
年を取ると,BGMやTechnodelicがいいんですよね,やっぱり。
細野さんの曲は聞けば聞くほど味が出る,というのは世のYMOファンの親父はみんな,感じているところでしょうね。
(私は,茶目っ気あふれるWantedの演奏も好きだったりします)
ほんと,考えてみると,YMOってぜいたくなバンドだったと思います。ガキの頃は気づかず,ただただ聞き入っていたけど。