アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

妖星ゴラス

2007-03-08 21:19:07 | 映画
『妖星ゴラス』 本多猪四郎監督   ☆☆☆

 日本版DVDを購入して鑑賞。本多猪四郎監督自身もお気に入りだったらしい作品だが、私の感想は今ひとつだった。

 ストーリーはこんな感じ。重力が地球の6千倍という彗星ゴラスが発見される。このままではゴラスは地球に衝突し、地球は滅亡する。地球が助かる方法は二つ、ゴラスを破壊するか、地球がゴラスの軌道から逃げるか。観測の結果ゴラス破壊は到底無理と分かる。世界各国が一致団結して、南極にロケット推進設備を付けて地球の軌道をずらすという、恐るべき「南極計画」が実行される。計画は成功し、地球はじりじりと動き始めるが、ゴラスも次第に質量を増しているという事実が判明する。ゴラスは刻一刻と地球に接近する。果たして地球は助かるのか?

 とにかく、巨大隕石を避けるためにロケット噴射口を作って地球を動かしてしまうという、壮大というかアホらしいというか、果てしなく荒唐無稽なアイデアをマジメに映画化した作品である。

 確かに特撮はかなり良い。力入っているし、緻密で美しい。細部まで職人芸が貫かれている。どんどん近づいてくるゴラスの映像は迫力がある。音楽もいい。『ゴジラ』の伊福部さんじゃなくて石井歓という人だが、観測船がゴラスに向っていくシーンの音楽など緊迫感にあふれている。いい役者も志村喬をはじめたくさん出ている。

 じゃ何が駄目だったかというと、どうもエピソード一つ一つがバラバラで、ちゃんとかみ合っていないというか、全体で盛り上がっていかないようなところがある。これは群像劇で、あちこちで色んな人たちががんばる話なのだが、話のスケールが大きすぎてそれぞれの掘り下げが浅くなってしまっているようだ。

 例えば最初の方、小沢栄太郎演じる政治家が出てきて、命がけで、というか命と引きかえにゴラスの観測結果を送ってきた隼号をズケズケ批判するシーンがあって、こういう政治家と科学者の対立が描かれるのかと思ったら、この政治家その後ほとんど出てこない。さらなる対策を求める科学者と「国連もない袖はふれない」と拒む科学者が対立するシーンがあってどうなるかと思っていると、その話はそれきり出てこない。水野久美に想いを寄せるパイロット久保明はゴラスを見て恐怖から記憶喪失になり、水野久美に預けられるが、二人の関係は特に進展しないまま、久保明はテレビでゴラスを見て記憶を取り戻す。田沢博士と白川由美の恋愛もものすごく中途半端だ。

 まあ盛りだくさん過ぎて掘り下げるには時間が足りなくなってしまったのだろう。それから最後の、人類が一致団結するってスバラシイことだ、こうやって人類は未来を切り拓いていくんだ、という妙にお題目くさい締めもあんまり気に入らない。ポジティヴなのはいいが、後ろの方から万歳三唱が聞こえてきそうだ。

 しかし荒唐無稽なアイデアに説得力をもたせるための凝ったディテールとか、この時代独特の味のある特撮はなかなかいける。アクの強い役が多い水野久美が、この映画では非常にチャーミングなのもいい感じだ。それにしてもこの時代の俳優さんは、田沢博士を演じる池部良をはじめみんな大人だなあ。最近は40過ぎても青年風の役者が多いので、妙に新鮮だった。
 
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