アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

Godzilla

2014-06-01 23:10:19 | 映画
『Godzilla』 Gareth Edwards監督   ☆☆☆★

 ハリウッド版ゴジラを観てきた。日本ではまだ公開されていないようなので、物語の細かい点やキモとなる部分には触れない、つまりこれから観る人の興味を殺ぐようなことはなるべく書かないつもりだが、全般的な感想として、たとえば話の設定やゴジラそのものがどうだったかは書かせてもらうので、一切予備知識が欲しくない人は読まないで下さい。

 さて、私自身一切予備知識なしに観たので、当然のことながらエメリッヒ版「ゴジラ」と同じように、ゴジラが人間の脅威となる話だと思っていた。予告編を観るとゴジラ以外の怪獣が映っているので、他にもモンスターが出ることは知っていたが、それはあくまでゴジラの前菜、イントロダクション程度だと思っていたのである。だからこれを観た私の一番の驚きは、本作のゴジラは色々と暴れはするけれども、最終的には人類の味方、という点である。そしてなんと、ゴジラの他に出てくる怪獣ムートーは前菜ではなくゴジラの敵であり、対決相手だった。

 要するにこのハリウッド版ゴジラは、昭和のゴジラ・シリーズから連綿と続く『ゴジラ対XXX』という怪獣バトルものの系譜だったのである。『ゴジラ対ムートー』なのである。なんということだ、そうと知っていればまた違う見方をしたのに。最初ムートーが出現した時はそこまで重要なキャラと思わず、どうせすぐ死ぬザコが出てきたぐらいの感じでやり過ごしてしまった。

 そしてそして、私的にもっとも重要な関心事だったのが、ゴジラは放射能火炎を吐くのか、という一点。これは日本のゴジラ・ファンはみんな気になるところだと思う。エメリッヒ版ではもちろんなかった。あれはただの巨大イグアナなので、もちろんそんなものはない。が、ハリウッド的には巨大生物が口から放射能を吐くなんてリアリズムに欠けるということで、今回もやっぱりになしにされてしまったんじゃないかと思っていた。

 ところが、今回のハリウッド版ゴジラは放射能火炎を吐く! これには大興奮。なかなか出ないのでやはりないんだなと思って諦めていたところ、ゴジラの尾びれ背びれが白く発光を始め、そしてゴジラの口からまぎれもないあの放射能火炎が!

 感無量である。エメリッヒ版ゴジラはゴジラじゃなかったが、これは間違いなくゴジラだ。太っているとはいえゴジラだ。私が子供の頃に胸をときめかせたあのゴジラが、ついにハリウッド映画のスクリーンに姿を現したのである。日本公開は7月らしいが、今から日本のゴジラ・ファン達の狂喜乱舞の声が聞こえてくるようだ。

 さて、そういうわけでエメリッヒ版とは比べ物にならないオリジナル・ゴジラへの忠実度に感激した本作だが、ストーリーやバトルの見せ方などには色々と注文がある。まず、ストーリーはどう贔屓目に見ても凡庸だ。特に前半、芹沢教授のフィリピンでの発見、日本のメルトダウンから家族の葛藤、14年後の事件に繋がるという展開はどこをとっても既視感ありありで、新鮮さに欠ける。まあこれも日本のゴジラ・シリーズへのリスペクトなのかも知れないが、日本のゴジラ・シリーズにだって傑作は少ないのだから、そこまで配慮しなくてもいいと思う。大体、ムートー出現のきっかけが間抜け過ぎる。芹沢教授、もうちょっとしっかりして欲しい。

 それから、脚本家によれば『ジョーズ』を参考にしてゴジラをなかなか出さないようにしたそうで、それはいいのだが、一旦出したらそこはそれなりに盛り上げてもらいたい。ところが最初ゴジラが出てくる場面では、ゴジラが一声吠えたら場面が変わってしまう。そしてゴジラとムートーのバトルがテレビ画面にちょっと映るだけ。あそこは最初の見せ場なんだからもっと興奮させて欲しかった。じらすのはのはいいが、じらし過ぎは逆にテンションを下げてしまうのである。

 で、サンフランシスコでの怪獣バトルがクライマックスだが、やはりゴジラも雌雄二体のムートーも、巨大生物のリアリズムへのこだわりのせいだと思うが、戦い方そのものがあんまり面白くない。それから、もちろんCGがすごいので臨場感と迫力は充分だが、戦いの見せ方も実はそれほど面白くない。この点については金子監督の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』や『ガメラ』シリーズの方が明らかに上だと思う。待ちに待った放射能火炎の場面は興奮するが、威力がさほど伝わってこないし、ビジュアルそのものも金子ゴジラの方が迫力があった。

 それともう一つの不満は、敵怪獣であるムートーの造形である。西洋人がデザインするモンスターはなんでいつもあんな感じなんだろうか。クモとカニを足したみたいで、悪くはないが、『クローバーフィールド』や『パシフィック・リム』に出て来たモンスターと似たりよったりで、あんまりインパクトがない。これもやはり円谷プロの方が上だ。ただし、雌雄二体の形状を変え、オスには翼があって空を飛べるという設定は良かった。

 ついでに言うと、本編開始前のクレジットはオリジナル・ゴジラへのリスペクトと神話的な不気味さを醸し出しているという意味で、なかなか良かった。

 というわけで、まあまあだった今回のハリウッド版ゴジラだが、続編を作るならやはりバトルシーンの設計、そして見せ方について金子ゴジラを参考にして欲しい。あのアイデアをハリウッドの技術で映像化したら、それこそ史上最高のゴジラ映画も夢ではない。それから敵方のモンスターの魅力に欠けている点については、もうキングギドラを出すしかないでしょう。ゴジラが人間の味方、というところまでやったんだからもうためらうことはない。

 次はハリウッド版『ゴジラ対キングギドラ』でお願いします。



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