崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

留学から通学へ

2009年10月28日 05時50分38秒 | エッセイ
私は日本に留学した者であり、留学生を多く指導した経験をもっている。かつての日本などは先進の文明を学ぶために西欧に留学し、また韓国は日本や西欧に留学する人が多かった。これらの留学生は、自国に戻ってから政治・経済の近代化に大きく貢献したのは事実である。一方では朝鮮、インド、ベトナム、カンボジア等の旧植民地諸国では、宗主国へ留学して帰国した人たちが独立運動を起こしたのも顕著であった。
 現在留学の傾向は変わった。自国の入試競争から漏れた学生や語学研修的な留学が増えている。語学留学の場合、アメリカ、イギリスを中心にした英語留学(その他の国にカナダ、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリア、フィジーなど)や、中国、台湾での中国語習得などを目的としたものが一般的となっている。韓国では英語教育が優先的であり、英語圏に広く留学生が行っているが、中国への留学生も多い。また韓国の大学にもアジアから留学生が多い。韓国も少子化現象があり、アジアからの留学生を多く受け入れて、私立の大学に数百人、千人を超える大学も珍しくない。グローバル化が進むなかで留学は相互交通的、多元的な時代に入っている。
私が在職している東亜大学には留学生は極めて少ない。遅れながら今姉妹校の提携などを進め、留学生を受け入れる体制にしている。韓国とは隣接しており地理的に東京や北海道などに比べて韓国南部からの方が近い。私は留学生から「通学生」への変化を予兆している。東アジア共同体を考える上で大学の役割も大きいことを認識すべきであると思う。