崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

春一番と神風

2009年02月13日 05時53分45秒 | エッセイ
 春一番の予告が出ている。それは季節の変化を風で表現する日本人の意識構造ともいえる。日本の歴史、特に戦争中には神風特攻隊などといわれたこともある。「神風」に守られるという地域ともいえる朝鮮海峡の近くに住んでから風に敏感になった。選挙などには「追風」、「逆風」という言葉が使われる。韓国では春一番とはいわず、ボンバラム(春風)という。それは柔らかなイメージがある。春の風が恋心を刺激する。特に山菜を採りに出た処女がボンバラムに恋人を作るのは歌や文学のテーマにもなる。危ないのは壮年のバラム(風)の浮気である。韓国語では浮気をバラムピウギ(風を出す)という。
 神楽などで巫女が両手に扇子と鈴を持っていることは周知のとおりである。20世紀初めころシベリアと朝鮮半島のシャーマンを調査した鳥居龍三が朝鮮のシャーマンが扇子を持って儀礼をする場面に関心をもって日本の巫女と比較した文がある。それは巫女が扇子で神「風」を調整することの象徴であろう。もうすぐ紅白の衣裳の巫女が春一番を調整して幸せの風を運んで来ようとしている。