西尾治子 のブログ Blog Haruko Nishio:ジョルジュ・サンド George Sand

日本G・サンド研究会・仏文学/女性文学/ジェンダー研究
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P.ヴィヤルドとツルゲーネフ

2014年01月07日 | サンド・ビオグラフィ



フロベールは、オペラ歌手のポーリーヌ・ヴィヤルドのことを最初は奇妙な人間だと思っていたが、後には彼女の崇高な音楽を敬愛した。
フロベールはまた、祖国を捨ててまでポーリーヌを追い求めたロシア作家ツルゲーネフに「柔らかい西洋梨」とあだ名をつけていた。

画像はツルゲーネフ(1818-1883)です。
ロシア中部の地主貴族の次男として1818年に誕生。15歳でモスクワ大学教育学部に入学。翌年、ペテルブルク大学の哲学部に編入。1838年から1841年までベルリン大学で哲学や古典語を学んだ。文芸批評家ベリンスキーの知己を得たツルゲーネフは、1843年に内務省に職を得るが翌年に辞職。
1843年、叙事詩『パラーシャ』を発表。
夫と子供をもつオペラ歌手、ポーリーヌ・ガルシア=ヴィアルドに一目惚れし、彼女を追ってパリに移り住んだのは、この年1843年のことであった。

父親と子の世代の相克を描いた『父と子』(1862年)は、19世紀のロシア小説の最高傑作の一つに挙げられる。
しかし、その2年前の作品『初恋』には、すでに父と息子のテーマが残酷な形で描かれている。『初恋』は、主人公のウラジミールが16歳の頃の自分の初恋を回想して書いた手記という形をとっている。ウラジミールは、初恋の相手のジナイーダの本当の気持ちが理解できない。彼女は突然彼に冷たくするかと思えば、時としてむやみに優しかったりするのだ。ある日、ウラジミールは、父親が彼女の部屋から出て行く姿を見てしまう。
この小説を読んだのは随分以前のことなので、詳細はよく思い出せない。
一般に、ツルゲーネフは美しい詩的な文章を書くと言われるが、読後感は強烈だった。全編が何とも言えない緊張感と張りつめたピュアな空気のようなものに包まれている。一本の弦がピンと張られていて、そこから果てしなく美しい音色の言葉が紡ぎ出されてきて、ピュアな空気と融合し、さらに美しい音色が現出する、そんな印象を受けたことを覚えている。声域が女性とは思われぬほど広く、ヨーロッパの人々や社交界はその声に酔いしれたと言われるポーリーヌ・ヴィヤルド。
ツルゲーネフがこのコントラルトの歌姫に魅了され一生の大半を歌姫に捧げたのは、彼女の中に自らの文学作品の創作に通底する天才的側面を見たからではなかったか。

ポーリーヌ・ヴィヤルド作曲 オペラ:「サンドリオン(シンデレラ姫)」(1904)



http://www.youtube.com/watch?v=CH4Trp0gHDs
http://www.youtube.com/watch?v=CH4Trp0gHDs

Viardot - Havanaise; Cecilia Bartoli
http://www.youtube.com/watch?v=YfLi6I4hMgg

Pauline García Viardot - Hai luli - Cecilia Bartoli
http://www.youtube.com/watch?v=GTl-LjVYGZs


Je suis triste, je m'inquiète,
Je ne sais plus que devenir!
Lunes bon ami devait venir,
  ......
Haí Lulí
A quoi bon vivre sans ami





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