毛糸帽は露西亜紅茶(ロシアンティ)の気香るもの 頭皮(あたま)さむし道場にて抜かれたるわが頭髪(かみ)思(も)へば
警察道場から医務室へと運ばれ来たり 相手の掌(て)の中のごつそりわが頭髪(かみ)
〈頭髪(かみ)抜き〉は反則技ぞ 医務官もわれも知らざりき頭髪(かみ)もどす術(すべ)を
わが禿頭(とくとう)を何故同僚(ひと)らは笑ふのか 事件後只管(ひたすら)、山川草木に身を浸してみたし
〈禿頭(とくとう)傷心休暇。〉と書きてのち申請書をトイレ中の部長の机に置き帰る
〈狐火〉てふ海端の駅に降りたち一分の間にみたざる〈人形〉とあひたり
村人は誰もがそのこと知つてをり〈昼の狐火〉〈人形〉の事件
《幾つもの〈狐火〉浮かぶ森の昼 そは近寄り来たり海端の崖より》
片時も毛糸帽離せぬ身となりぬ モーニング珈琲は宿屋主人の心尽くしの
雨戸のむかう薄霧の庭ながめつつゆつくりすする朝の珈琲
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