カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

短歌メモから。

2020-12-03 16:17:52 | Weblog

短歌メモから。
 
大きなる犬が飼ひ主引つ張つてケーキ屋の前過ぎてゆく夕べ
 
飼ひ主の眼はケースの中のエクレアのうへ 顔はケーキ屋へ向けたまま行く
 
この人に食べさせてはならぬと思つとります。はい、ワン、ワン、ワン
 
飼ひ主がよたよた過ぎたるその後(のち)のしばらくして道に薄暮は来たり

雪の畑(はた)に地蔵はローマ帽被りてをり暴君ネロも愛用せしとふ

ケーキ屋の裏の林で鴉鳴くを合図として辺りは闇に包まる

ローマ帽の地蔵はケーキ屋の灯り見てをり 自転車の巡査ぎこぎこ過ぎて

駅ホームに最終列車やつて来て足早に改札出てゆくスーツのひとり

駅前通りの暗闇のなかをスーツは目指す ケーキ屋の明るき誕生日(バースデー)ケーキ

「有難うございました」スーツを見送るケーキ屋の灯りしづかに絞られてゆく

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